が膨れる。
いつもならこの顔に弱い俺はいう事を聞くだろう。
でも、今取るわけにはいかねぇ。
きっと結んでた跡がついててもう修復不可能になっちまう。
こればっかりはゆずれねぇ。
「絶対見てやるんだから!」
「絶対見せねぇよ。」
ケケケ・・・と笑って見せた。
まだ俺とが付き合う前の話。
放課後のアカデミーに宿題を取りに教室へ向かってた。
「は誰が好き?」
突然聞こえたいのの声。
「えー・・・別にいないなぁ。」
続いて聞こえるの声。
「私はねぇ、サスケ君!」
いの。声でけぇよ。
「あのサラサラな髪に触れてみたぁい♪」
「あぁ、確かにサラサラだよね。」
「でしょ!はどんな男の子がいいの?
やっぱサスケ君みたいな感じの子?」
「んー・・・特には・・・。」
「サスケ君はダメよ!私の彼氏候補なんだから!」
「分かってるって。でも・・・・。」
「でも・・・?」
「サスケ君の髪って本当にサラサラだよね。羨ましい。」
「そぉよねぇ。やっぱ男でも髪にぐらい、気を使ってほしいわよねぇ。」
・・・・。
俺はかぁちゃんに無理やり結ばれてる自分の髪に触れた。
サラサラ・・・とは正反対のゴワゴワ。
・・・ちょっと悔しかった。
別に好きでこんな髪に生まれたわけじゃない。
俺としてはかぁちゃんの髪質に生まれたかった。
まぁ、それは今更な話だけどよ・・・。
「私はどっちでもいいけどなぁ。」
が笑った。
「どちらかというと、私は優しい人がいいな。
体質なんてどうすることもできないことだけど、性格は作っていくものだもん。」
の言葉は俺にとって救いだった。
になら解いている頭を見せてもいいと思う。
だけど、と会うまでその頭でいるのは辛い。
だから、見せられない。
「シカマル?」
映画が終わって茶を飲みながらぼーとしてた俺をが呼んだ。
「どーしたの?」
「・・・別に・・・。」
「そお?」
微笑みながら目の前のジュースを飲む。
になら・・・・・。
俺は覚悟を決めた。
「あのよ・・・。」
「ん?」
「お前、夜ってヒマか?」
「ヒマだよ。家族は旅行に行ったし。」
「・・・じゃあよ、今晩の晩飯・・・・作ってくれねぇ?」
「へ?別にいいけど・・・・なんで?」
が不思議そうに聞いてくる。
「実は今夜、両親がいなくてよ・・・。」
「あ、そっか。わかった。いいよ。」
がなんの疑問もなく席を立とうとする。
「ま!待て!」
「へ?」
「今はまずい!俺が先に家に戻って片付けるから!」
「ついでに片付けてあげるよ?」
「そこまでしなくていい!んー・・・夜7時に来てくれ!」
「7時?分かった。」
「よし!じゃな!」
「あっ!シカマル・・・・!!」
俺はを置いて店を出た。
急いで家に戻ってきた俺は居間でゴロゴロしてる親父を踏みつける。
「ぶほっ・・・・!!」
「親父!頼みがあんだ!」
「シカマル・・・人を踏んづけておいて頼みごとは無理だろ。」
「聞いてくれよ!」
今の俺には両親を家から追い出すことしか考えていない。
「なんだよ・・・・シカマルが頼みごとなんざぁ珍しいじゃねーか。」
「実はよ・・・・。」
俺はこれからが家にくること。
コンプレックスの髪のこと。
それを隠していない状態をに見せること。
そのために両親がいない状態を作らなきゃならないこと。
全部を親父に話した。
「・・・・・・。」
「頼むよ!かぁちゃんに内緒でなんとか二人でどっかいっててくれよ!」
「・・・・シカマル。」
親父が腕を組む。
「コンプレックスっつーもんは人から隠したいもんだ。
それをちゃんに見せていいのか?嫌われるかもしんねーぞ?」
「・・・・そしたらそれまでだ。
だけどよ、には見せたいんだよ。」
「いいのか?」
「・・・・なら・・・。」
俺は拳を強く握り締めた。
「・・・よっこらせっと・・・・。」
親父が立ち上がって部屋を出て行く。
「お、親父!まだ話が・・・・!」
「おーい、ちょっくら出かけるぞぉ。」
親父が庭で雑草を引っこ抜いてたかぁちゃんを呼ぶ。
「・・・親父・・・・。」
驚いてる俺に親父が微笑んだ。
「しっかりな。」
「・・・・任せろよ。」
へっ・・・と笑って見せた。
「出かけるってどこへ?」
「まぁ久々に二人ででかけよぉや。」
「あら、めずらしい。」
「たまには・・・な。」
まんざらでもねぇかぁちゃんは出かける準備をしに部屋にあがる。
「と、いうことだから、夕飯は・・・。」
「あぁ、勝手に何か食うから。」
「お願いね。」
かぁちゃんが笑って洗面所に手を洗いに行った。
もうすぐ7時。
準備は万端だ。
いつでもいいぜ、。
ピンポーン・・・。
「お邪魔しまぁ・・・・。」
「よぉ・・・。」
玄関を開けたが固まっている。
視線は俺から離れない。
「・・・んなに見んなよ・・・・。」
俺は頭・・・・髪を解いている頭をガシガシかいた。
「どどどどどどど、どーしたの!!!」
「べ、べつに・・・風呂に入っただけだって・・・・。」
本当は結んだ跡がばっちり残ってる頭がイヤで風呂に入った。
この状態なら結んだ跡も寝癖もついていない。
「うっわー・・・・人って髪型1つで随分変わるんだね。」
「・・・・うっせーよ。」
を中に促してリビングに通す。
「・・・・見たいって言ってただろ・・・・。」
ポソッと呟く。
一瞬きょとん・・・としていただったが、次第に笑顔に変わる。
「夕飯、頑張るね。」
そう言って、台所に姿を消した。
の作ってくれた夕飯を食べ終えた俺たち。
「ちょっと触らせて?」
が座っている俺の後ろに立ち膝で立った。
「へぇ・・・シカマルってこういう髪質なんだぁ。朝とか大変でしょ。」
「まぁな・・・。」
「だから結んでるんだね。」
「・・・悪かったな。」
の細い指が俺の髪を触っている。
こういう風に人に触られるのはかぁちゃん以外で初めてかもしれない。
目を閉じてこの感覚を味わう。
「・・・・ありがと。」
「んあ?」
「コンプレックスだったんでしょ?」
「何で知って・・・。」
「シカマルを見てたら分かるよ。」
がくすくす笑っている。
「どんなに濡れても頭だけは自然乾燥させてたり・・・・。」
「よく見てんなぁ・・・。」
感心するぜ。
「私にだってコンプレックスの1つや2つ、あるもん。
だから・・・・カミングアウトするときってすごく勇気いるの分かるよ。」
確かに・・・・に暴露するだけでこんなに手間隙かかったんだ。
みんなに言うとなったら・・・。
めんどくせぇ・・・。
「本当のシカマル、教えてくれてありがと。」
「・・・・別に・・・。」
自然と顔が赤くなる。
「シカマル。」
が後ろから抱きついてきた。
「好きだよ。」
「・・・・あぁ。」
前に回されたの腕にそっと触れた。
俺はこの温もりを手放さない。
手放したくない。
手放すぐらいなら・・・。
コンプレックスの1つや2つ、暴露しても全然かまわねぇ。
「ところでよ。」
「ん?」
「のコンプレックスってなんだ?」
「・・・・・言わない。」
「俺も教えたんだからいいじゃねーか。」
「・・・・誰にも言わない?」
「言わねーよ。」
「・・・・・・・・。」
「早く言えって。」
「・・・・・胸が・・・小さい・・・・こと。」
「・・・・ほぉ♪」
「絶対見せないからね。」
「・・・・・絶対?」
「絶対。」
「ずっと?」
「・・・・・いつかね・・・・。」
「・・・・・♪」
『10のお題』の『コンプレックス』、いかがだったでしょうか?
私にも人には言えないコンプレックスの1つや2つ・・・・ブツブツ・・・。
シカマルの髪を降ろしたところ、見てみたい・・・♪