足りない
時間が
勇気が
希望が
全てが足りない
タイムリミット
「あれ、今日はお休み?」
上忍待機所の扉を開けた私に最初に声をかけたのはカカシさんだった。
「はい。昨日まで任務だったんですけどね。」
「折角の休みなのにこんな所に来ちゃうの?」
「それってイヤミですか?」
にっこり微笑み、カカシさんの近くに座る。
「なんでそうなるのよ。」
驚くカカシさん。
「は生まれてからずっと彼氏無しなのよ。」
紅さんがお茶を差し出してくれた。
「へぇ。それはびっくりだね。ちゃんなら・・・・。」
「私、そういうのダメなんですよ。」
カカシさんの言葉に苦笑する。
「なんとなく・・・・相手の考えてることが分かるんです。」
「分かるって?」
「一緒にいると、自分のことどう思ってるのか・・・とか。
この人は今何を考えてる・・・・とか。」
「いるのよね、そういう子。
洞察力と観察力が良くて頭の回転が早い子。」
大変よね・・・と紅さんが微笑む。
「いつも相手の考えを先読みして行動してると相手の男の人は気味悪がって・・・。」
「気の回るいい子・・・だと、俺は思うんだけどね。」
カカシさんの言葉に微笑みしか返せない。
最初はみんなそう言ってくれる。
私も好きになってもらいたくて、頑張って・・・。
だけど、途中で相手が私のことをどう思ってるのか分かってくる。
そうなると、それ以上頑張れない。
都合のいい女。
あるいは
気味悪い女。
そのどちらかになっちゃう。
「そういう子と俺は付き合いたいけどねぇ。」
「だったらなってあげなさいよ。」
「「は?」」
紅さんの言葉に私とカカシさん、二人で言う。
「の初めての彼氏。」
「ちょっ・・・・!!!紅さん!!」
私はアタフタと立ち上がる。
「だって、はカカシのこと憧れてたんでしょ?」
「過去形・・・ですか。」
ポツリと呟くカカシさん。
「え!いや!今も憧れてます!」
「だったらいいじゃない。カカシならうまくリードしてくれるわよ。」
「そういう問題じゃなくて!!」
3人しかいない待機所に私の大声が響いてる。
「私は全然うれしいことではありますが!
カカシさんが迷惑しますって!
女泣かせで有名なカカシさんですよ!
私なんかではお役に立てません!!」
「・・・・・ひどい言われようね・・・・・。」
ハッと気付けば紅さんはくすくす笑い、カカシさんは頭をポリポリしてる。
今、私は何を口走った・・・・?
「ま、付き合うかともかくとして・・・・。」
カカシさんが頭から手を離した。
「ちゃんは少し練習したほうがいいんじゃない?」
「・・・練習・・・・?」
「そう。男は思っていることを全部してもらっても、それは自分の不甲斐なさを思い知らされるだけだから。
ある程度まで・・・っていう線を見極めればいいんだよ。」
「・・・・そうなんですか?」
そこまでは考えてなかった。
「だから、俺でよければ練習に付き合いますよ?」
カカシさんがにっこり微笑む。
「え・・・・いいんですか?」
「俺は構わないよ。期限は・・・3ヵ月!その代わり、ビシバシ行くからね。」
「は、はい!」
私は勢いよく、カカシさんに頭を下げた。
そんな私を紅さんは微笑んでみていてくれた。
と、言うわけで・・・・。
奇妙な形から、私はカカシさんと付き合うことになった。
「手始めに明日、1日デートね。」
そう言われた私は朝から困っている。
どの服を着ていこう・・・。
私はいたってシンプルな動きやすいものしか持っていない。
だけど・・・。
カカシさんのまわりにいる女性はみんな・・・・こう・・・・色っぽい。
・・・・・チラッ・・・とクローゼットの奥を見る。
昔、好きな男の趣味で1つだけ買った服。
それが・・・・唯一の私の勝負服(?)。
意を決してそれに手を伸ばす・・・。
「どーしたの。」
待ち合わせ場所に1時間遅刻してきたカカシさんは私を見て最初に言った。
本日の私は露出度の高いキャミソールと超がつきそうなミニスカート。
対するカカシさんはT−シャツの上にもう1枚シャツを羽織ってる。
「・・・・いや・・・・なんとなくカカシさんの好みに合わせようと・・・。」
スースーする足をバッグで隠す。
「・・・・俺の好みって・・・・。」
「だって、カカシさんのまわりにいる女性ってみんなこんな感じなので・・・。」
「あのね。」
ため息をつくカカシさん。
「それは別に俺の好みじゃないよ。」
「へ?」
「相手が勝手に寄ってくるだけ。あえて言うならそういう格好は好きじゃない。」
「・・・・・。」
途端に恥ずかしくなって俯く。
顔が赤くなる。
恥ずかしすぎて・・・・涙が出そう。
「はい。」
カカシさんの声に顔を上げると・・・上から何かが降ってくる。
「それ、貸してあげる。」
「・・・・え?」
頭から被ってるものを見ると、それはさっきまでカカシさんが羽織ってたシャツ。
「そんな格好じゃ動けないでしょ。」
「でも・・・・。」
「いいから着なさい。」
ピシャッと言われ、渋々袖に腕を通す。
一緒に歩きたくないから?
一緒にいたくないから?
だから貸してくれたの・・・?
シャツを着ながら色々考える。
「目の毒・・・でしょ。」
ぽつっと呟くカカシさん。
「そういう格好は二人でいるときにしてほしいもんであって・・・・。
他の男には見せたくないものなのよ。」
カカシさんは微笑み、頭をぽんぽんと叩いてくれた。
「・・・・ありがと・・・。」
私も・・・・・自然に笑うことが出来た。
「次回はちゃんの好みの服を着てきてね?」
「はい・・・・!」
次回・・・・。
その言葉がうれしかった。
「じゃ、どこに行こうかな・・・。」
「どこでもいいですよ。」
「んー・・・里の中には知り合いが居過ぎるから・・・・短冊街まで行く?」
「はい。」
私たちは歩き始めた。
ふと、カカシさんの手が不自然に動いていない。
これって・・・。
そっと手を伸ばしてみる。
ぎゅっと握られる。
それが・・・・また嬉しかった。
私たちは1日遊んだ。
賑わいのある短冊街は遊びの宝庫で。
1つの遊びが終わると、すぐに次の遊びが目に飛び込んでくる。
そして日が暮れ、夕方になる。
「そろそろ帰ろう。」
「え?まだ時間ありますよ?」
「ダーメ。これからは大人の時間でしょ。」
カカシさんはつないだままの手を引く。
「俺たちは練習なんだから・・・そこまで行くわけにはいかないでしょ。」
「・・・そっか・・・・。」
妙に納得。
カカシさんの言わんとしていることが分かった。
でも・・・・少し淋しい気がするのは・・・・。
私がカカシさんに憧れてるから・・・・?
「家まで送ってあげるから教えて?」
「あ、それはいいですよ。自分で帰れます。」
「そぉ?」
「はい。そこまで付き合わせるわけにはいきません。」
「そっか。」
微笑むカカシさんに私も微笑む。
里に戻ってきて、私たちはそれぞれの家に帰った。
それからと言うもの・・・。
お互いの休みが合えば1日中遊んだ。
気付けば、カカシさんは私を呼び捨てするようになった。
気付けば、自然と手をつなぐようになった。
でも・・・・。
それ以上の進展は・・・・ない。
何回か・・・・キス・・・・されそうな・・・・してもいいような時もあった。
だけど・・・。
カカシさんはしなかった。
「はい、終わり。この続きは本番でね。」
そう言って私の頭をポンポンと叩く。
恋愛の練習。
期限は3ヵ月。
そういう約束のとも、今の私たちがある。
だから、そういう関係になれないのは・・・・分かってる。
そういう関係であることを後悔していることに気付いた時には・・・。
期限が・・・・あと1週間・・・・だった。
カカシさんと一緒にいて楽しかった。
気が楽だった。
気負わなくていいことがこんなにも楽だという事に気付かされた。
だから、私も素な自分が出ていた。
こんなに自分を出せたのは初めて。
これが付き合うってことなんだ。
相手に合わせるばかりじゃだめ。
それを教わった。
あと1週間。
それなのに容赦なく任務は転がりこんでくる。
1日が過ぎ。
1日が過ぎ。
1日が・・・・。
気付けば・・・・・。
あと2日・・・・。
今日の任務を終わらせて帰る途中なんとなく待機所に立ち寄る。
「あ、。」
紅さんが私を発見して歩いてくる。
「ちょうどよかった。」
「どうしたんです?」
「さっきカカシからこれを預かったの。あなたに届けてほしいって。」
差し出された白い封筒。
「ありがとうございます。」
お礼を言って私は待機所を出た。
家に戻った私はお風呂に入ってさっぱりして、それから封筒を開けた。
『へ
明日は任務となってしまった。
明後日、1時に門で待つ。
カカシ』
自分でもはっきり分かるぐらいの落胆。
もう・・・・残りは2日しかないのに・・・。
私は・・・・どうしたら・・・・いい?
そして、きてしまった。
最終日。
私はいつものように門に向かった。
「・・・・あれ。」
「やっ。」
「めずらしい・・・・。」
「そぉ?たまにはね。」
めずらしく、カカシさんが私より先に来ていた。
「今日はどこか行きたい場所、ある?」
「んー・・・・特には。」
「じゃ、俺のセレクトでいい?」
「はい。」
そして、歩き始める。
そっと手をのばして・・・・手を握る。
触れられるのも・・・・これで最後。
いつもより・・・・力強く握った。
カカシさんの向かった場所は海。
誰もいない海。
「まだ海には来てなかったからね。」
にっこり微笑むカカシさん。
「・・・・・うん。」
穏やかな風に髪を遊ばせながら頷く。
「どうしたの?今日は元気ないね。」
「そうですか?」
「そうでしょ。」
「そうですか・・・・。」
カカシさんにも分かるぐらい私は落胆してる。
そして、焦ってる。
それも隠し切れないぐらいに・・・。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
言葉はない。
だけど、一緒にいてくれるだけで十分。
カカシさんの気配だけで、私は幸せになれる。
「何か買ってくるよ。」
「あ、じゃあ、私も・・・・。」
「は待ってて。」
やんわりと断られ、私はまた海を見つめる。
海の音が・・・・・淋しい。
誰もいない海が淋しい。
人がいないだけで・・・・こんなにも淋しげに見えるんだ。
「・・・・カカシさん・・・・・。」
カカシさんがそばにいないだけで・・・・・こんなにも淋しいんだ、私。
「・・・・今更・・・・好きです・・・なんて・・・・・言えない・・・。」
海から視線を外して俯く。
「今、呼んだ?」
振り返ると、カカシさんが戻ってきていた。
「な、なんでもない!」
「そぉ?」
不思議そうなカカシさんに何回も頷いてみせる。
「はい、これ。」
「あ、すいません。」
渡された暖かいコップ。
「覚えてくれてたんですね。」
「ま、男としては当然。」
コップの中は暖かいココア。
前に1度だけココアが好き・・・と言っただけなのに・・・。
私たちは砂浜に転がっていたボートに並んで座った。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
でも、会話は・・・・ない。
会話はなくても気配だけで幸せ。
ううん。
違うよ。
気配を感じていたくて。
会話することを忘れてる。
言いたい事がいっぱいありすぎて。
会話にすることができない。
「・・・・今日で・・・・最後だね。」
「・・・・・はい。」
「はもうちゃんと恋愛できるよ。」
「そうですか?」
「相手に合わすことばかりじゃなく、自己主張していいってこと、知ったから。」
「それは・・・・カカシさんだからできたんだと思います。」
「俺のリードがよかったのかな?」
「はい。」
波が何度も押し寄せる。
「じゃあ・・・・。」
カカシさんが立ち上がった。
「今日は『お別れ』の練習・・・・しよっか。」
コップを握る手に力が入る。
朝から予感してたんだよね・・・・。
「・・・・。」
「短い間だったけど・・・・・楽しかった。」
「・・・・・・。」
「こんなに自分を出せて・・・・こんなにはしゃげて・・・。
次に会うのが待ち遠しかったほど・・・・。
楽しくて・・・・楽しくて・・・・。」
泣いてはだめ。
泣いたら・・・・。
気持ちがばれる。
カカシさんは練習として私に付き合ってくれてたんだ。
だから、本気になっちゃだめだったのに。
「・・・・さよなら。カカシさん。」
極上の笑顔。
私の中で、もうこれ以上はないってぐらいの笑顔。
「さよなら・・・・。」
そう言って、カカシさんは私に背を向けた。
歩き始めるカカシさん。
行かないで。
カカシさんが1歩進む度に・・・・胸が痛む。
置いて行かないで。
振り返らないカカシさん。
私を・・・・一人に・・・・しないで。
「・・・・・っカカシさん!」
私は大声で叫んでいた。
振り返ったカカシさんに向かって走り出す。
そのままカカシさんに抱きつく。
「・・・?」
「イヤです!」
カカシさんの言葉を遮る。
「私、カカシさんと別れたくないです!」
「・・・・?」
「カカシさんにとって私は対象外かもしれないけど・・・。
私はこの3ヵ月の間にカカシさんのことが好きになっちゃったんです!
それなのにいきなり別れの言葉なんて・・・!」
気付けば私は泣いていて。
その涙を全部カカシさんの服に染込ませていた。
「私・・・・カカシさんが好きなんです・・・・・!」
ありったけの気持ちを込めて。
私は腕に力を入れた。
「・・・・。ちょっと・・・・離れて・・・。」
「イヤです!」
「でも、それじゃ・・・。」
「絶対にイヤ!」
私は余計にしがみつく。
「・・・・困ったねぇ・・・。」
カカシさんのため息が聞こえた。
このため息は・・・・。
呆れてたため息。
「あのね・・・。」
きっと、続く言葉は・・・・・。
「にちゃんと言わなきゃいけないことがあって・・・。」
私を傷つける。
「・・・・・なぁんちゃって♪」
ぱっとカカシさんから離れた。
「・・・・・へ?」
呆気に取られているカカシさん。
「別れるとき、どーしたも別れたくなかったらどうすればいいのかなぁって思って。
最後の練習として、やってみました。驚きました?」
私は笑ってみせた。
「どうです?私の迫真の演技!すごかったでしょ!
涙なんか流しちゃって。私って女優になれるかも!」
これでいい。
「今からでもオーディションでも受けてこよっかな!」
明日からはお互い、ただの上忍仲間に戻る。
「いきなり映画とかに抜擢されたりして!」
気まずい雰囲気は残しちゃだめ。
「私が出たら絶対見に来てくださいね!」
でないと・・・・カカシさん・・・・紅さんに申し訳がない。
「じゃ、そういうことで!明日から任務、頑張りましょうね!」
私は呆然としているカカシさんを残して、歩き始める。
「待ちなさいよ。」
振り返らない。
「こーら。どこ行くの。」
振り返れない。
「。」
今振り返ったら・・・・それこそ『練習』じゃなくなる。
零れそうな涙を我慢して・・・。
「待てって言ってるでしょ。」
後ろから強引に振り向かされた。
「なんで無視するの。」
目の前のカカシさんが怒ってる。
「なんで泣くまで我慢するの。」
「・・・・・・。」
「言いたいことがあるのに我慢するのはよくないことでしょ。」
「・・・・・・。」
「俺も話があるって言ったのに勝手に帰ろうとするし。」
「・・・・だって・・・・。」
「なに?」
「・・・・だって・・・・気まずくなるの・・・イヤなんだも・・・・。」
「なんで気まずくなるの?」
「折角練習として付き合ってくれたのに・・・・。
明日からまた顔を合わすのに・・・・。
私が告白なんかしちゃったら・・・・絶対気まずくなる・・・。」
「なんでよ。」
「なんでって・・・・。」
「俺、のこと最初から好きだよ。」
「・・・・・は?」
「いや、は?じゃなくて・・・・。」
「え・・・・だって・・・・。」
頭が混乱しそうだ。
いや、混乱してる。
「俺は最初からのこと好きなのよ。
だから、最初から練習なんてしてないわけよ。
でも、自分で3ヵ月って言っちゃったもんだから焦っちゃって・・・。
今日、ここで全部が終わった後に最初から始めようと思ったのよ。」
いやぁまいったねー、と笑ってる。
「・・・私も・・・・。」
「・・・・うん?」
「私も・・・カカシさんが好きで・・・。」
「・・・うん。」
「今日が最後だから・・・・どうしようって・・・・。
でも・・・練習として付き合ってくれてるって思ってたから・・・。」
「・・・ごめん。余計悩ませちゃったみたいだね。ごめんね。」
カカシさんが頭をぽんぽんと叩く。
「練習はさっきでおしまい。」
頭にあった手を私の頬に移動させる。
「今から・・・ちゃんと付き合おう?」
カカシさんの唇が降ってきた。
「これからはどんなに夜遅くになっても一緒にいられるね。」
「そーですね。」
「いっそのこと、今夜にでも家来る?」
「それは・・・・遠慮しときます。」
「あ、そ・・・。」
「紅さんになんて報告しよう・・・。」
「ま、なるようになるでしょ。」
『10のお題』のタイムリミットです。
うーん・・・ダメです。
なんか何がいいたいのか分からない内容となってしまいました。
ごめんなさい。