大切なモノは失ってから気付く。



自分にとってどれほど大切で必要だったのか。



もう戻ってはこないと分かっているのに。



それでも俺はお前を求める。



そんな俺は・・・・愚かなのかな。























黄泉がえり





















今日、俺はある場所へ向かっていた。

そこに1度も行ったことはない。

だけど・・・。

















約束だから。



















大切な人との。










































「カカシ?どーしたの?」

「へ?」

上を向けばがいた。

「ぼーっとしちゃって・・・そんな状態で任務とか来ても大丈夫なの?」

「あぁ・・・最近疲れてるからねぇ。」

今、俺は暗部の待機室にいた。

「そういうだって・・・・さっきお腹が鳴ったの聞こえたよ。」

「ぐっ・・・・!!!」

が顔を赤くして自分のお腹を押さえる。

「またダイエット?」

「うっさいなぁ!!」

図星・・・ね。

「カカシはいいよなぁ。いっくら食べても体に付かなくて。」

はすぐ付くよね。」

「そうそう!・・・って、なんであんたに言われなくちゃいけないのさ!!」

真っ赤な顔をして拳を振り上げ突進してくる

からかうように適当に避ける。

俺としてはあれのどこが太っているのか、謎。

「あーもぉ!!折角任務でもこなして体動かそうって思ってたのに!!」

「そりゃ残念。今日は全く依頼がないみたいね。」

「つまんない・・・・。」

がソファに倒れた。

まったく、この子は・・・。

って本当に楽しいことが好きなのね。」

「うん、大好き。」

「任務、楽しい?」

一瞬、きょとん・・・とする

だけど・・・。

「めっちゃ楽しい。だってこの里を守るための任務だもん。

 それが、どんな内容だったとしても・・・ね。」

今まで見たこともない無邪気な笑顔で応えた。





















俺と同じ暗部で。









俺より2つ下で。







そのくせ、生意気で。







強気で。







オテンバで。







でも、泣き虫だったりする。















一番、近くにいる存在。


























よく任務が一緒になることが多いから話すようになった。



自然と一緒にいる時間が長かった。



家に帰っても誰も迎えてくれない。



だったら・・・。



お互いに両親がいないから・・・・か。



が温もりを求めるように・・・。



俺たちは一緒にいた。











でも、それは友達として・・・だ。



俺との間に・・・・。



色っぽい話は全くなかった。




































一緒にいるのが当然すぎてたんだ。



全然気付かなかった。



という存在にどれたけ支えられていたか・・・。



どれだけ・・・・守られていたのか・・・。



































任務を終了させ、火影様に報告に行く。

「ご苦労じゃったな。」

「いえ・・・。」

「少し疲れたか?最近ずっと任務が続いているからのぉ・・・。」

そうなんだよねぇ。

急に依頼がバタバタと舞い込んできた。

おかげで、俺もも・・・いや、他の暗部たちも任務続きだ。

「大丈夫です。他の忍びも頑張っていますし・・・。」

と、ここまで言うと、火影様がくっくっくっ・・・と笑っている。

「『』も同じ事を言っていたかのぉ。」

「『』が?」

』・・・。

それはのことだ。

の仮面をつけている。

だから、『』。

俺は『狐』と呼ばれている。

「里の為に動いてくれるのはうれしいんじゃだ、お主たちも里の住人。

 しっかり体を休めることも必要じゃて。」

「はい、ありがとうございます。

 でも、それは落ち着いてから・・・で。」

「分かった。では、次の任務を言い渡す・・・。」

火影様の声が厳しくなる。








































多忙な日々が落ち着いたのはそれから2ヵ月後だった。





















その頃からだ。









の様子がおかしくなったのは・・・。






















−−−ガシャァァァァァン−−−

「どうしたっ!!」

の部屋のソファで読書をしていた俺は飛び起き、キッチンを覗く。

「ご、ごめぇん。手がすべっちゃった。」

が床の上に無残な姿となったカップを拾っている。

「危ないからあっち行ってていいよ。すぐコーヒー入れるから。」

明るい声の

「・・・・昨日も・・・・割ったよね?」

「そ、そうだったね。お気に入りのカップ、なくなっちゃったぁ。」

明るい声。

・・・・明るすぎる・・・声。

「・・・・何かあった?」

「・・・・大丈夫。心配しないで。」

にっこり微笑むだけど・・・。

その笑顔は・・・・どこか影があった。

































考えれば。



あのとき、すぐに病院に連れていけばよかったんだ。
























夜中。

寝ている俺の部屋に何者かが侵入してきた。

いい度胸だ。

ソイツはそっと俺に近寄り、手を伸ばしてきた。

「誰だっ!!」

枕の下に常備していたクナイを手に取り、相手を捕まえクナイを首筋に当てる。

「やっ。」

「へ・・・?」

だった。

「こんばんわ。」

「こんばんわって・・・。今、何時だと思ってるの?」

ため息を付きながら、を解放する。

「いやぁ、さすがカカシだよね。」

「当たり前でしょ。忍びなんだから。」

「私、1回寝たら朝まで起きないんだよね。」

呆れてる俺と対照的に明るい

「で、どーしたの?こんな夜中に。めずらしい・・・。」

コーヒーを入れるため、キッチンに向かう。

「・・・・カカシに会いに来たの。」

が小さく呟く。

「いつだって会えるでしょ?ま、任務があれば無理だけどさ。」

「今、会いたかったの。」

「あのねぇ。」

2度目のため息をついて、の前に座った。

「俺たちは友達として長いけど、それでも男と女なのよ。

 だから俺はの家に遅くまでいないでしょ?」

「・・・・・うん・・・。」

「だから、コーヒーを飲んで帰りなさい。」

の頭をぽんぽん・・・とやり、またキッチンへ向かう。

「・・・・お願いが・・・あるの。」

「ん?」

ヤカンに水を入れて火にかける。

















「・・・・抱いて。」















の声は小さくて。

それでもはっきりと聞こえた。













「なんて言った?」

声のトーンが下がる。

「・・・・・抱いて。」

今まで俯いていたが顔を上げた。

「・・・・自分で何を言っているか、分かってる?」

「・・・・分かってる。」

「俺とって・・・・付き合ってたんだっけ?」

「・・・・・・・。」

「友達・・・じゃなかったっけ?」

「・・・・・友達・・・。」

「じゃ、なんで?」

「・・・・・・・・。」

















何も言わない















3度目のため息をつく。















「理由、言ってくれなきゃ無理でしょ。」

「・・・・・それは・・・・言えない・・・・・。」

「ま、理由教えてくれたとしても、抱かないけどね。」

「・・・・・・。」

「俺とお前、友達だし。

 抱いたせいで気まずくなるのイヤだし・・・・。」

「・・・・・・。」

「このままでも・・・十分気まずいんだけど・・・ね。」


















今、この部屋に異様な空気が流れてる。

いつもはがいれば明るくて楽しい空気が流れるのに・・・。


















「お願い。何も聞かずに・・・・抱いて。」

懇願する

「ダメだ。絶対に抱かない。性欲の発散だったら別の男に頼んで。」

拒否する俺。

















「・・・・・そっか・・・・分かった。」

が立ち上がった。

「夜中にごめん・・・。」

玄関まで歩いていく。

「・・・・・・送ってく。」

「・・・・いい。」

「・・・・女一人じゃ危ない。」

「・・・・私、忍びだし。」

「・・・・でも・・・。」

「いいから!!!」

が俺の言葉を遮った。

「・・・・ごめん。心配してくれてありがと。」

「・・・・ちゃんと・・・・帰る・・・よな?」

「・・・・カカシには・・・・関係ない・・・でしょ?」

「お前・・・・っ!!!」

「カカシが言ったんじゃん。別の男に頼めって。」

「・・・・・・。」

「私、最近ずっと任務で男日照りだったから飢えてたんだよねぇ。

 だから、手短なカカシで済まそうとしてたんだ。

 ごめんね。嫌な思いさせちゃって。」

がいつものように笑った。

「じゃ、これから飲み屋にでも行って適当な男、捜してくるよ。

 だから、カカシは来ないでね。邪魔だから。」

笑顔のまま・・・・玄関から出て行った。













さっきの・・・・自分の言葉を後悔する。

が性欲の為だけに好きでもない男に抱かれるような女じゃないのに。

十分知ってたはずなのに・・・・。









俺は、を傷つけた・・・・。





























沸騰した二人分のお湯がピーピー鳴っている。











































どうして気付いてあげられなかったんだろう。


どうして抱いてあげなかったんだろう。


があんなこと言うなんて、よっぽどのことだったのに。







































それから、俺たちは一緒にいなくなった。

まぁ、任務が・・・ってのもあるけれど。

休暇が一緒になっても・・・。

お互いの家に行くことはなくなった。
























「カカシっ!!」

任務終了の報告を終わらせて家に向かう途中。

暗部の仲間が俺の前に姿を現した。

「どーした?」

コイツはと最近チームを組んでいる。

に何かあったのか?。

が入院した。すぐに病院へ行け。」

「入院?」

「詳しい話は後だ。急ぐぞ。」

仲間が姿を消した。

「・・・・・?」

一瞬躊躇したものの、俺も病院へ向かった。













案内された病室のドアを開ける。

「カカシ・・・。」

いきなり現れた俺に驚きと戸惑いを見せる。

「入院って・・・・?」

まだ気まずさが残っていた俺は椅子に座らず、壁に寄りかかる。

「うん・・・・大したことじゃないんだけどね。」

「大したことがあるから・・・入院してんでしょ?」

「うーん・・・・。」

苦笑いをする

「ま、生きてるんなら、いいや。じゃ・・・。」

俺は体を浮かせて部屋を出た。

しばらくドアの前から動かなかった。







無事だった。







こんなにも安堵している自分がおかしかった。

が無事で、安心して、今にも腰を抜かしそうになってる。









だったら・・・・。

と普通に接すればいいのに・・・。





でも、何も言わない・・・。

「女」として俺に「男」を求めた・・・。


どう接すればいいのか・・・。


分からなくなって・・・・。



壁を感じ始めた俺は・・・。











踏み出すことができなかった。






























1ヶ月が過ぎた。

が退院したという噂はまだ聞かない。

まだ入院しているのか?

なんとなく・・・病院へ向かう。



「そんな・・・!!」



ふいにどこからか悲鳴に近い小声が聞こえる。

どうやら真剣な会話をしているみたい。

んー・・・あの曲がり角のところからだ。

そこを曲がらないとの病院に行けない。

立ち止まって会話が終わるのを待とう。





「そんなことって・・・・・。」



「・・・前に依頼が殺到して忙しかったときがあっただろ・・・?」



「あぁ・・・あったな・・・。」



「・・・別の奴がやるはずだったSランク任務を引き受けて・・・。」


「Sランク!」



「・・・・俺も止めたんだが・・・・。」



「頑固だからなぁ・・・あいつ・・・・。あんなに・・・・頑張ってたのに・・・・。」



「そう言うな・・・。だって・・・・ショックなはずだ・・・。」



















心臓が止まるかと思った。









今、の名前を言わなかったか?









「おいっ!!」

俺は二人の前に飛び出した。

そこにいたのは・・・・前に俺を呼びにきた奴と、もう一人だった。

と仲のよかった・・・・暗部の仲間。

「今の・・・・どういうことだ?」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

・・・のことなのか?」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「説明してくれ!!」

そばにあった壁に拳をぶつける。

「・・・・誰もいないところへ・・・。二人で話がしたい。」

暗部の一人・・・俺を呼んだ奴・・・が呟いた。

















は・・・・・もうじき死ぬ。」

場所を病院の屋上へ移し、最初の言葉だった。

「・・・・・・・どういうことだ?」

なるべく冷静に聞こうと、自分を落ち着かせる。

「・・・・・あの忙しかった時期・・・。

 任務をこなしている最中、は病気をうつされたらしい。」

「・・・・・・・。」

「単独任務で・・・・。

 敵につかまり、あるウィルスを注射されたらしい。」

「・・・・捉まった・・・ってことか?」

「あぁ・・・まぁ、なんとか任務は遂行し、里に戻ってこれたけどな・・・。

 だけど、体の中にあるウィルスは・・・・。」

「医療忍術でなんとかできなかったのか?」

「・・・・気付くのが遅かった。

 初期症状で発見できればなんとか助かったらしいが・・・。」

「初期症状ってどんな?」

「・・・・眩暈と手先の痺れ・・・さらに吐き気、頭痛。

 次第に体に力が入らなくなり、そのまま衰弱して・・・・。」

















眩暈と手先の痺れ。















「どうした?」

「・・・前に前兆があったんだ・・・・・・・俺が気付いていれば・・・・。」

「・・・・?」

「・・・が食器を割ったんだ。

 しかも、二日も続けて・・・・。」

「・・・・初期症状か・・・。」

「あのとき・・・・病院に連れていけば・・・・・!!」

「・・・・は頑固だからなぁ・・・。」

ソイツはくすくす笑っている。

「・・・・に・・・・会ってやってくれ・・・・。」

「・・・・・。」

「お前とケンカしてからずっと元気がないんだ。」

頼むな・・・と片手を挙げて、ソイツは歩き出した。

「最後に教えてくれ。」

ソイツの背中に叫ぶ。

「誰の任務を・・・・引き受けたんだ?」

「・・・・・。」

「知ったところでソイツをどうこうしようなんて思っていない。

 ただ・・・・単純に知りたいだけだ。」

そう、単純に。

暗部にまわってくる任務に危険はつき物。

それを承知で引き受けるぐらいだから、よっぽど大切な相手だったんだろう。

だったら、今からでもそいつを呼んで・・・。

「・・・・お前だよ。」

「・・・・・え・・・・。」

「お前に回されるはずだった任務だったんだ。」



















俺・・・・・・・・?



































の病室のドアを開けようとする。

だけど・・・。

躊躇う。







何を・・・・話せばいい・・・?





意を決してドアをノックする。

「・・・・・?」

返事がない。

静かにドアを開けてみる。

「・・・・・・?」

中に入り、ベッドの上のを見る。

「・・・・寝てるのか・・・。」

は目を閉じていた。

傍らの椅子に座り、じっと見つめた。

久しぶりの











痩せた。









あんなにダイエットってうるさかったのに・・・。









ちょっと会わないだけで、こんなにも・・・。









もう・・・・骨と皮だけみたいで・・・・。









それでも、の顔はいつもの凛とした顔をしていた。









「ん・・・・。」

が目を覚ました。

「あ、ごめん。起こした?」

「・・・・カカシ・・・・?」

まだ寝ぼけているは微笑んだ。

「・・・・大丈夫?」

「・・・・・・聞いた・・・のね?」

「・・・・・。」









は・・・・受け入れている。

これからの未来に・・・何が待っているのかを。









「失敗・・・しちゃった。」

へへ・・・っと笑うだけど・・・。

俺は・・・笑えないよ。

「・・・どうして・・・・・。」

「え?」

「どうして俺の任務を・・・・・。」

「あ、そこまで聞いたの?んもぉ、内緒にしてって言ったのに・・・・。」

が頬を膨らませる。

・・・・膨らまして・・・・やっと・・・前のの顔に戻る。

「・・・・もぉ、ぶっちゃけ言うけど・・・・。」

くすくす笑っている。

「私、あんたのこと、友達だなんて1回も見てなかったよ。」

「・・・・・!」

「ずっと好きだった。

 一緒にいられるだけで、それだけでよかった。

 あんたの為にできることはなんでもしたかった。

 ただ・・・それだけよ。」

真っ直ぐ自分に向けられたの目は昔のの目だった。

いつだったか、里が好き・・・と言っていた目。

「・・・・余計なことを・・・・。」

「うん、余計なことだけど・・・。

 少しでも・・・・私と一緒にいる時間を長くしてほしかったから。」

「・・・・・。」

「ごめんね・・・・・。」

「どうして・・・・謝る・・・・。」

「イヤ・・・だよね。

 これから・・・って奴に告白されても・・・・。」

「そんなこと・・・・言うなよ・・・。」

「自分の体だから・・・・私が一番分かってる。

 ・・・・カカシが私のこと・・・友達として見てるって分かってて・・・。

 あんなこと言って・・・ごめん。」



あの晩のことを思い出す。



「嫌われてもいいから・・・・・。

 軽蔑されてもいいから、最初で最後は・・・カカシに抱いてもらいたかったから・・・。

 私のワガママ・・・・なんだけどね。」

・・・・。」

「ごめんね・・・嫌な思い・・・させちゃって・・・。

 本当は・・・ずっと言わないつもりだっ・・・・。」

が・・・顔を背けた。













・・・・。













「死なせない。」

自然と口から零れていた。

「絶対に死なせない。」

「カカシ?」

「治療方法、絶対俺が見つけてやる。

 だから、死ぬことを受け入れるな。」

が死ぬことなんて・・・考えたくない。

「だから・・・は楽しいことを考えよう?」

「楽しい・・・こと?」

「ん、楽しいこと。」

の目から溢れている涙をそっと拭ってやる。

「元気になって・・・何をしよう・・とか・・・どこへ行こうとか・・・・。

 生き抜くことだけを考えて。」

「・・・・ん・・・・・・。」

小さく・・・・が頷く。

「明日も来るから。明日も、明後日も、明々後日も・・・・。」

「ん・・・。」

「一緒に頑張ろう。今までも一緒にいたんだから・・・さ。」







そう・・・・一緒にいた。



そして、気付かなかった。



の・・・思いに。









「じゃさ・・・退院したら行きたい場所があるんだけど・・・。」

「うん、行こう。」

「カカシと一緒に・・・。」

「うん、いいよ。」

「前に任務で行った所なんだけど・・・。

 水の国の山の中に大きな湖があるのね。

 朝になると霧が発生して、雲の上にいるみたいなの。」

「へぇ・・・知らなかったな。」

「そこに・・・・好きな人と行きたかったの・・・。」

の顔が赤くなる。

好きな人。

つまり、俺。

「あ、イヤだったらいいんだ。私だけでも行けるし。」

が慌てて取り繕う。

だけど・・・。

「うん・・・行こう。俺も・・・行きたい。」

微笑む。

「同情とか・・・・そんなことだったらいいよ?

 別に他にも楽しい場所ってあるんだし・・・。」

「自分から言い出しておいて何、言ってるの。」

いつものように頭をぽんぽん・・とする。

「頑張ろう?」

「・・・うん。」



























の現状に対する同情なのか。



それとも、いままでの気持ちに気付いてあげられなかった罪滅ぼしなのか。



自分でも分からないけど。



のためだったら。



なんでもしてあげたかった。



































それから俺は得意でもない医療忍術の資料を片っ端から読み漁った。

火影様に事情を説明し、休暇をもらえたのが幸いだ。

朝から面会時間まで読み漁り、面会時間と同時にに会いに行く。

なるべく長くのそばにいたい。

直面している恐怖と不安を取り除いてあげたい・・・。

面会時間が終わると、また明け方まで読み漁る。















そんな生活は・・・・2週間で終わった。

















いつものように面会時間ギリギリまでと過ごしていた。

そこへ、面会時間終了のアナウンスが流れる。

「じゃ、明日もまた来るから。」

椅子から立ち上がり、ドアへ向かう。

「カカシ。」

「ん?」

に呼ばれて振り返ると・・・・。

「明日から・・・来なくていいから。」

「え・・・・?」

突然の・・・拒否。


「って言うか・・・来ないで・・・。」

「なんで・・・!」

「・・・・・・・最後は・・・・見て欲しくない・・・。」

が微笑む。

「最後って・・・。」

「・・・うん・・・・もぅ・・・・分かるから。」

「そんなの、分からないでしょ・・・!!」

「うん・・・だけど・・・ごめん。

 それに、今の私って・・・・ほら・・・・なんていうか・・・・醜いじゃない?」

自分の腕の皮を引っ張ってみせる

・・・・あれからさらには痩せた。

もう・・・本当に・・・触れただけで折れてしまうそうな・・・。

昔のよう面影は・・・・正直、ない。

「女としては、こういう姿を好きな人に見て欲しくないわけさ。

 だから・・・・こないで・・・・。」

「・・・・・・・。」

「今までありがと・・・。」

の微笑みに・・・俺は病室を出るしかなかった。


















もう・・・なのか?





もうすぐ・・・は・・・・・。




あれだけ色々調べたのに・・・。





あんなに頑張ったのに・・・・。

















































それから数日もしないうつち






















は逝った。

































「眠るように・・・・逝ったらしい。」

「・・・そうか・・・・。」

のことを教えてくれた奴が俺を訪ねてきた。

「これを預かってきた。」

差し出されたのはピンクの封筒。

「お前宛だ。」

それだけ言うと、ソイツは帰った。









なんとなく、俺はの部屋にいた。

主のいなくなった部屋。

そこで渡された手紙を開ける。













『カカシへ。



     ありがとう。

 

           ごめん。





                 より。』











何が『ありがとう』なの?










何が『ごめん』なの?













それだけじゃ分からないよ。










分からないよ・・・・。










































あれから3年が過ぎた。

俺は水の国にいる。

「ったく・・・どの山なんですか・・・。」

見渡す限りの山をながめて呆れる。




いつか言っていたの行きたい場所。

と行こうと約束した場所。

そこを目指す。

そして、山に入って諦めかけていたとき・・・・・見つけた。

の言っていた場所に。

山々の中にかなり大きな湖。

真ん中にぽつん・・・と小さな島がうかんでる。

「後は・・・明け方まで待てば・・・いいんだな。」

腰を下ろし、その時を待つ。












夜になり、月と星が出て・・・。

闇が白み始めて・・・。










湖が霧に包まれる。













高度が高い位置にいるからか。

霧は水面近くを漂うだけ。










・・・・・来たよ・・・。」





ポケットから小さな袋を取り出し、中の物を取り出す。

葬儀の際、1つだけくすねたの小さな骨。









「こんなになっちゃって・・・・。」








くすっ・・・と微笑み、湖に投げた。





骨は弧を描き、ぽちゃん・・・と沈み、波紋が広がる。










ふいに視線を真ん中の小島に移すと・・・。






「・・・・・・え?」





誰かがいる。






遠くて分からないけど・・・・。








でも・・・・。







俺はなんの警戒もしないまま・・・・。







その小島に向かって走っていた。































「久しぶり。」

そこには・・・・がいた。

「・・・・・どうして・・・・・。」

この世にいないはずのが・・・・。

「うん、私もわかんない。ただ呼ばれた気がして・・・・。」

突然のことで言葉が見つからない。

だけど・・・・。

今までに伝えられなかった言葉。

それを伝えないと・・・。

「あれから・・・ずっと考えてた。」

「・・・ん?」

「俺にとって・・・・は本当に友達だったのか・・・・って。」

「・・・・うん。」

「考えて、考えて・・・・・。

 結局、分かったことは俺はがいないとダメだってこと。」

「・・・・・。」

「何があっても、どこに行こうと・・・・。

 のそばに帰るために・・・俺は頑張ってきた。

 俺にはが必要で、支えで・・・・。」

言葉が浮かばない。

頭が真っ白で・・・。

俺は膝をついた。











気付けば・・・・俺はの腕の中にいた。

「泣かないでよ・・・・。」

言われて・・・・初めて気付いた。

俺は・・・・・泣いていた。

どんなときも、泣くことなんかなかったのに。

「私・・・・どうしたらいいかわかんないよ。」

「・・・・ごめん・・・・。」

「カカシが私を必要としていてくれただけで・・・・満足だから。」

の腕に力が入るのを感じる。

それが・・・・余慶に泣けてきた。

余計に・・・胸が苦しくなる・・・・。

「あれからずっと後悔ばかりだったんだ!

 あのときもっと早くを病院に連れて行けばよかったとか!

 あのとき、言われるままにを抱けばよかったとか!

 のいない日常は俺にとっては何もない日常でしかないんだ!

 がいたから俺は笑っていられたんだ!

 なんで俺の前からいなくなるんだよ!!

 なんで・・・・なんでっ!!!!」

ずっと・・・・ずっと・・・・我慢していたモノが吐き出される。

を責めても、何も変わらないのに・・・・。

涙も今まで溜めていた分が全部流れる。

俺を抱きしめるの体にしがみついて・・・・。










もう絶対離したくない。































「楽しいことを考えよう。」

暫くして、が呟いた。

「これから何をしよう・・・とか、どこへ行こう・・・とか。

 楽しいことを考えると・・・・自然と楽しくなるよ。」

が微笑む。

それは前に俺が・・・・。

「カカシが教えてくれたんだよ?忘れちゃった?」

「・・・・・覚えてる。」

「私、あれからずっと楽しいことばっか考えてたの。

 私は元気になったら暗部から抜けて、上忍になって、下忍を育てるの。

 その下忍たちには色々な悩みを持つ子たちばっかなんだけど・・・。

 それを一緒に乗り越えて・・・・。

 忍びとしての素晴らしさを教えてあげたい。

 木の葉の里の偉大さを・・・・教えてあげたい。」

が俺の頭を優しく撫でた。

「・・・・その中に俺はいないんだ?」

「カカシは・・・・・・・。」

「俺は?」

「・・・・私の恋人として登場してたり・・・・する。」

顔を上げれば、の顔が赤くなっていた。

「それ、いいアイディアだね。」

「そう?」

くすくす笑う

「愛してる。」

自然に・・・・。

本当に自然に。

俺はを見つめて呟いていた。

自分でもびっくりする。

まさか・・・。

「カカシがそんなこと言うなんてびっくり。」

「うん、今俺もびっくりしてた。」

「なにそれ。」

「さぁ?自然と出てきちゃったんだからしょうがないでしょ。」

「そうなのかなぁ。」

「そうなの。」

二人で微笑む。

「本当に・・・・愛してる。」

「・・・うん。」

「この気持ちはずっと変わらない。」

「・・・・・。」

の夢は俺が叶えるよ。」

「・・・・・・。」

「だから・・・・ずっと見てて?」

「・・・・うん。」

「俺が悪さしないように・・・・。」

「・・・・・うん・・・。」

「・・・・俺が・・・・。」

「うん・・・・。」







の目に涙が溜まる。

そして・・・俺の目にも。









の頬に触れ、も俺の頬に触れる。









どちらからともなく・・・唇を重ねた。


















瞬間。















の体は光の粒となり・・・・・。






腕の中から・・・・。







消えた。










腕は光の粒を抱く。





愛しい人の姿を思い描いて。









のいた場所には。





確かに俺が投げたの骨が・・・・・。




転がっていた。













それを拾い、






抱きしめて、






キスをして、











再び、湖に投げた。

















がいなくなってから。

ずっと後悔の毎日だった。

だけど。

今から。

俺は楽しいことを考えるよ。

の分も。

いっぱい、いっぱい。

















1ヵ月後。

俺は暗部を抜けた。

その代わり、上忍となった。

元々チームワークを重視する俺に合格を出させる下忍たちはなかなか現れなかったけど。











ついに、現れたよ。







うずまき ナルト。





うちは サスケ。





はるの サクラ。






色々問題のある奴らばっかり。










さぁ、




一緒にこいつらに教えてあげよう。




忍びの素晴らしさを。





里の偉大さを。






一緒に、育てていこう。













はい、カカシ短編です。
これは4500Hih 海里様のリクエストです。
内容は「カカシがヒロインの腕の中で泣いちゃう」でした。
最初は「まっかせてぇ♪」なぁんて感じだったのですが、
いざ、作ろうとすると・・・。
「カカシが泣く?いつ泣くの?」
と、混乱してました。
で、思いついたのが、これ。
死ネタとなってしまいました。
海里様、ごめんなさい!




ついでに「10のお題」にも乗せちゃいました♪
 

BGMはお地球見の丘より。様からお借りしました。