『涙』は人を弱くする。







『涙』は心を弱くする。

















私には必要のないモノ。



私は・・・・・泣かない。





















































































「任務終了。帰るぞ。」

部隊長の上忍が一言呟いた。

と、同時に任務に当たっていた忍びたちが一斉に走り始める。

当然、私も。

今日の任務は暗殺。

いたって簡単な任務。











私にとっては。













任務に同行した忍びは部隊長と私以外は上忍になりたての者ばかり。

暗殺の経験を積ませるための任務。

場慣らし・・・とでも言うのか。

そんな忍びたちの模範となるために、私の同行は決まった。









暗殺・・・ともなれば、戦闘になる。

向かってくる者は、みな敵。

敵は、殺す。

やっぱり初めて人を殺めるというのは戸惑いが生じるのか。

覚悟はしてても最後の一手が中々決められずにいる者が多かった。










当然、そのフォローも私の役目。

返り血を浴びながらも、仲間たちを守る。
















「ったく、めんどくせぇなぁ・・・・・。」

隣を走っていた男がぼそっと呟いた。

名前は・・・・・。

「奈良 シカマル・・・・。」

「んぁ?」

私に呼ばれた男はチラッと私を見た。

「何がめんどくさい?」

「そんなの・・・・全部に決まってるだろーが。」

全部?

里に帰ることが?

「俺はめんどくさがり屋なもんでね。」

シカマルがニヤッと笑った。

意味が分からない。

「あんた・・・・。」

 。」

「あ、そうそう。」

最初の顔合わせのときに自己紹介しただろうが。

なぜ覚えていないんだ・・・。

「あんた、なんで無表情なんだ?」

「・・・・は?」

唐突な質問。

「どんなに疲れててもピンチの時でも、表情がねぇんだよ。」

「・・・・・・・・。」

初めて言われた、そんなこと。

と、言うか・・・。

あの戦闘の中、よく観察しているな・・・。











ちょっと驚いた。










「人を観察しているヒマがあったなら、任務に集中してほしいね。」

「あいにく、俺は観察が好きでね。」















確か、この男・・・。

危機に陥ることはなかった。

だけど、絶対に最後の一手を決めなかった。











「怖いのか?」

「は?」

「人を殺すのが。」

「ちげぇよ。めんどくせぇだけだ。」

「じゃあ、なんで上忍になった?

 上忍になれば当然任務の回数も危険度も上がる。」

「なぜかなっちまったんだよなぁ・・・。」

シカマルは空を見上げている。











なんなんだ?こいつ・・・。











上忍をなんだと思ってるんだ?









私はなりたくて、なりたくて・・・・。











頑張ってきたのに。











「こら、そこ。まだ火の国に入ってないんだ。

 気を抜くな。」

先頭を走っていた部隊長に怒られた。

「すいません。」

「へいへい・・・・。」

返事をする私とシカマル。

だけど、その態度は正反対。













私はシカマルにいい印象は持てなかった。



































だけど、さすがに同じ里に住んでいるワケで・・・。

「・・・よぉ。」

「どうも・・・・。」

ばったり里の街中で会っちゃったり・・・する。

しばらく任務続きだった私にとっては久々の休暇。

任務を忘れたい・・・と思って私服なんだけど・・・・失敗した。

「へぇ・・・・。」

シカマルが私の全身を眺めている。

「・・・・なんか文句あるのか?」

「なんで文句なんつーめんどくせぇこと、言わなきゃいけねぇんだよ。」

「じゃあ、なんだよ。」

「いや・・・・?そういう格好してればそれなりに女に見えるんだな。」









やっぱり、失敗した。









久々の休暇で浮かれてたのか。

ちょっと・・・・おしゃれなんかしちゃってスカートをはいている自分を後悔する。









私は踵を返して歩き始める。

「どこ行くんだぁ?」

シカマルが後ろから声をかけてきた。

「・・・・着替えてくる。」

「なんで?」

「どうせ私には似合わない服だったからな。」

「誰もそんなこと言ってねぇだろ。」

なぜか・・・・シカマルが私の後ろをついてくる。











うざい。









屋根の上に飛び上がり、その勢いのまま走る。

「・・・ったく、めんどくせぇ・・・。」

そう小さく呟いたのが聞こえた。

私もめんどくさい。

シカマルの相手をするのが。

あのやる気のなさにイライラする。









男だろ?







とは、言いたくない。

でも、







忍びだろ?







とは、言いたい。

なんであそこまでダラダラできるのか・・・。

あんな男と付き合っていける女が、果たしているのだろうか?







否、いないに決まってる。











だいぶ走った私はそっと後ろを振り向いた。

よし、振り切った。

シカマルが追ってこないのを確認して、屋根の上から飛び降りようとする。

「パンツ、見えるぞ。」

「・・・・・!!!」

私が着地しようとした場所には・・・・シカマルがいた。









ぶつかる・・・・!!!







空中での移動は無理。

もう、そのまま落ちるしかない。

シカマルもいきなり飛び降りた私に驚いている。







きっとシカマルはどいてくれる。

そこに待つのは地面。

だけど、体勢を崩した私。

ああ・・・・上忍ともあろう私が地面にご挨拶だなんて・・・。







諦めて受身を取ろうとした。











だけど・・・。









「あっぶねーなぁ・・・・。」









シカマルが抱きとめてくれた。

「なぜ・・・避けなかった?」

「なんでって・・・・めんどくせぇけど、上から人が落ちてきたら助けちまうだろぉが。」

「てっきり避けると思ってた。」

「あんた、俺にいい印象持ってねぇみたいだしな。」

シカマルに言われてバツが悪い。

「つーか、あんたさぁ・・・。」

私を地面に降ろしながにシカマルが呟く。

 。何度言えば覚えるんだ?」

いまだ私の名前も覚えられないのか?

「・・・さぁ・・・・スカートはいたまま屋根の上とか走るなよ・・・。

 パンツ、まる見えだったぜ。」

「見せようが見せまいが、私の自由だ!!」

顔が一気に赤くなるのが分かる。

そんな私を見て・・・・シカマルが笑っている。

「一応恥じらいっつーもんはあるみてぇだな。」

「は?」

「前に言っただろ?は無表情だって。」

「今は任務じゃない。」

「ついでに言うと、その口調もやめろ。」

「は?」

「その男みてぇなしゃべり方。あんた、女なんだから。」

「・・・・お前には関係ないだろ。」

私は・・・・俯いた。

「女なんだし、スカートもはくんだから、もっと女っぽい話し方すりゃあ・・・。」

「シカマルには関係ない!!」

私の声は・・・シカマルの声を消し去った。

「・・・ま、いいけどよ・・・。じゃな。」

シカマルは私に背を向けて歩き始めた。









なんなんだ?この気持ち・・・・。







いつもなら触れられなくない話になれば、私は無言になる。







だけど・・・。







なぜか、シカマルにだけは・・・。







そして、今私の胸に残っているこのじれったい感じ。







奈良 シカマル。







あいつはとても危険な感じがする。







あいつに関わるのは止めよう。







イライラする。







イライラ。







イライラ・・・。


































































関わらないと決めたのに・・・。









決めたはずなのに・・・。









「よぉ。」

なぜかシカマルが、いた。

「今日の任務はこのメンバーだ。」

またもや新人上忍の場慣らしの任務。

前回の新人上忍とは違うけど。

以前の部隊長と私、そして、シカマル。

このメンバーは同じだった。

「なんで・・・・いる?」

「さぁな、チーム編成を決めた奴に聞いてくれ。」

にや・・・と笑うシカマル。

本来なら、場慣らしのための任務では滅多なことがないと同じ指導上忍とは組めない。

なぜなら、その上忍によって任務のこなし方・・・つまりは暗殺の仕方が変わってくる。

一人の上忍とずっと一緒だと、その方法しか学べない。

状況に応じた暗殺方法を学ぶため、いろんな指導上忍と組まされる。









ハズなのに・・・。







なぜか、ここにシカマルがいる。

なんで・・・だ?









また私のイライラが始まった。































そのイライラは任務が始まっても止まらなかった。














ターゲットを暗殺し、速やか撤退。

・・・のはずが、新人上忍のミスで敵方にばれた。

!二手に分かれるぞ!!シカマルと行け!!」

「あなたは?!」

「もう一人を連れて逃げる!!」

「了解!!」

部隊長に指示され、シカマルを振り返る。

シカマルも今の指示を聞いていて、小さく頷く。

一直線に固まって逃げていた小隊の中から、私とシカマルがはぐれる。

当然、追ってきている敵方の忍びも二手に分かれる。











二人だと動きやすい。











意思の疎通も図りやすい。











さっきより幾分速度を上げて逃げる。











所々にシカマルの提案で罠を仕掛けた。

シカマルの仕掛ける罠は巧妙で発見しにくい。

短時間で作ったとは思えないほど、威力も大きそうだ。











3時間、ずっと走り続けた。









「ここまで来れば一安心・・・か?」

さすがに二人して肩で息をしている。

「あぁ・・・罠にもはまってくれりぁ時間も稼げるしな。」

シカマルが近くの木に背を預けて腰を下ろした。

私も腰を降ろす。

「シカマル・・・。」

「なんだよ・・・。」

「一つ、聞きたい。」

「めんどくせぇな・・・。」

シカマルがため息をついた。

それが・・・私のイライラを増幅させる。

「なぜ、一手を決めない?」

「・・・・・。」

「お前が一手を決めてくれればその分、後の戦闘が楽になる。」

そう・・・。

今回の任務でも、シカマルは最後の一手を決めなかった。

そのせいで敵が減ることはない。

「この先、上忍としてやっていく気があるなら覚悟を決めろ。」

「覚悟・・・ねぇ・・・。」

シカマルが呆れたよう笑った。

「何がおかしい?」

「じゃあよ、聞くけど・・・。

 覚悟、覚悟って言うが、それってどういう覚悟なんだ?」

「それは・・・・。」

「人を殺す覚悟?見知らぬ人を殺す覚悟?自分の手を血に染める覚悟?」

「・・・・全部だ。」

「それだけ?」

「・・・・・・。」

言葉に詰まる。

だって・・・・私は今までの暗殺任務になんの疑問も持たなかった。

暗殺だけじゃなく、戦闘で人を殺めることにも。

それが全て。

任務の全て。

任務を遂行させることの全て。

「それだけだったら・・・・俺は覚悟なんかできねぇ。

 めんどくせぇ・・・・。」

「じゃあ、他に何がある?」

「それは・・・・。」











シカマルが言いかけたとき・・・。











私とシカマルは飛び跳ね、私たちがいた場所にクナイが数本刺さった。









「もう追いつかれちまったのかよ!!」

シカマルが舌打ちをした。

「諦めろ!!戦え!!」

咄嗟に言った私。

クナイの飛んできた方角を見ると、5、6人の忍びがいた。

私はクナイを投げ、手裏剣を投げ、体術と忍術を駆使する。

そのサポートにシカマルが回った。









体力がまだ回復していない。









ここは一刻も早く、片付けるべき。









急所のみを狙う。















!!危ねぇぇ!!」

シカマルの声が聞こえたとき・・・。

私の足に衝撃を感じた。

「・・・ぐっ・・・・!!」

突然の衝撃・・・・襲ってくる痛みに耐え、目の前の敵にトドメを指す。

私は地面に着地する。

「大丈夫か!!」

「私のことはいい!!自分のことだけを考えろ!!」

足を見れば、クナイが突き刺さっている。

それに手をのばし、一気に引き抜く。

痛み、倍増。

「・・・・残り・・・・1人なのに・・・。」

見れば、シカマルと最後の一人が対峙してる。

サポートしてあげたいが、チャクラの使いすぎと体力の限界で思うように動けない。

「シカマル・・・逃げろ・・・!!」

今の私はしばらく動けない。

戦えるのはシカマルしかいない。

だけど、今までのシカマルを見ていれば一手が決められないことは分かっていた。

私の体力が回復するまでには時間がかかるし、そこまでシカマルが耐えられるとは考えがたい。

このままでは全滅。

「いいから逃げろ!!」

「女を残して逃げられっかよっ!!」

「私のことはいいから!!このままじゃ全滅だ!!」

「うるせぇぇ!!」

聞く耳を持たないシカマル。

このままじゃ・・・。

最後の力を振り絞って、フラフラと立ち上がる。

「・・・か・・・影真似を使え!」

敵の動きを止めてくれればこんな私でもクナイが投げられる。

「そんなチャクラ、残ってねぇんだよ!!」

・・・・・なんてこった。

じゃあ、どうすればいい?

せめて・・・シカマルだけでも・・・。











私はクナイを持って一直線に走っていた。









当然、敵も気付いた。









格好の獲物・・・とでも言うような目で私を見る。









ターゲットをシカマルから私に移した。





































今のうちに逃げろ、シカマル。





































相手のクナイが異様に黒く見え、目を閉じる。























































だけど・・・・。
























私にクナイは届かなかった。





















目を開ければ・・・。




















崩れ落ちる敵の忍び。





















その後ろには・・・・。




















辛そうなシカマル。

























「シカマ・・・・。」

「女に守られちゃカッコ悪ぃからな・・・・。」

シカマルの持つクナイが血に染まっていた。








































シカマルに支えられながら場所を移した。

「足、見せてみろ。」

「・・・・いい。」

「いいから見せろ。」

怒った風のシカマルが強引に私を座らせ足を自分の前に出させた。

「こりゃひでぇな・・・・。」

そう呟きながら、ポーチから布を出して足にきつく巻く。

「里まで持てばいい。大丈夫だ。」

巻かれた場所から少しずつだが血がにじんでいる。

「・・・・・おめでとう。」

「なんだよ、いきなり。」

私の唐突の言葉にシカマルが眉を寄せる。

「やっと一人前の上忍になれたじゃないか。」

「・・・・・。」

さっきの・・・・辛そうな顔になる。

「どうしてそんな顔をする?」

「・・・・俺は・・・。」

シカマルが私の前に座った。

「できるだけ人は・・・殺したくねぇ。」

「まだそんなことを言っているのか?」

「そりゃやらなきゃならねぇときはやる。

 だけどよ・・・・それ以上は・・・・。」

「さっきの状況を体験して、まだそんなことが言えるのか?」

「・・・・もしかしたら、あの忍びに・・・・。

 大切な人が待っているかもしんねぇだろ。」

「・・・・・・。」

「家族とか・・・・恋人とか・・・・。

 あいつが死んだせいで・・・・残された者たちが悲しむ・・・。

 俺は悲しむ人間は・・・・最小限に留めたい。」

「理想論だな。」

「分かってるよ。だけど・・・。

 最後の一手は本当の意味での最後の一手にしたい。」

「だったら、あのとき逃げればよかっただろう?」

「・・・・・・。」

「使い物にならなくなった私を置いていけば、シカマルぐらいなら簡単に逃げられたはずだ。」

私の言葉に・・・・シカマルが顔を反らした。

「壊滅を避けたい状況で理想論振りかざしているのなら、あのとき・・・。」

「できっかよ・・・・。」

「女だぁ男だぁ言っているのか?

 言っておくが、忍びである以上男女のいうものは・・・・。」

「そうじゃねぇよ!!」

言葉を遮られた。

「じゃあ説明してみろよ。」

「・・・・・・。」

「私にだって忍びとしてのプライドがある。

 何を最優先にするべきかの判断だってできる。」

「・・・・・・・。」

「新人で場馴れのために一緒にいる忍びに守られるほうが私は恥ずか・・・・。」

























続きが言えない。























なぜ?



















それは・・・・。























口を塞がれている。



















シカマルの口によって。











































「少し黙れ。」

唇を離したシカマル。

「お・・・お前・・・・!!」

突然のキスに私は頭が真っ白だ。

咄嗟にシカマルに拳を振り上げる。

「おっと・・・。」

私の拳を簡単に掴む。

「じゃあ聞くけどよ・・・・。」

シカマルの顔がまた近づく。

「なんで最近イライラしてたんだ?」

「え・・・・・。」

「最近・・・いや・・・初めて顔を合わせてからずっと・・・。

 あんた、イライラしてただろ。」

ばれてる。

「なんでだ?」

「それは・・・・!!」

「それは・・・?」

「・・・・お前が・・・やる気がないからだ!!」

「いーや、違うね・・・・。」

さらに顔が近づく。

その距離、5センチ。

「あんたは俺に名前を覚えてもらえなかったからイライラしてるんだろ?」

「・・・・!!!!!!」

途端に顔が赤くなる。

「ビンゴ。」

そう言ったシカマルは・・・・また唇を重ねた。

足掻く私の腕を簡単にねじ伏せて・・・・。

「俺の洞察力をなめんなよ・・・。」

体を離したシカマルはそっと私を抱き寄せた。

ちゃんと・・・・怪我した足に負担がかからないように。

「俺は最小限しか一手は決めない。

 だがよ・・・・俺にだって大切な人を守る権利があるんだ・・・・。」

大切な・・・・・人・・・・。

「あんたが・・・・がフラフラしながらクナイ持って突進してきたときは・・・・。

 マジ、全身凍りついたぜ・・・・。」

シカマルの頭が私の肩に乗っかった。




































「・・・・何・・・・してんだよ・・・・。」

「・・・・・うるさい・・・。」

「人が一大決心して告白してるっつーのに・・・・その顔はねぇだろ・・・。」

シカマルが私の顔を見て呆れている。

今の私の顔。

眉は八の字。

口はへの字。

鼻の穴が大きくなっている。

「なんでそんな顔すんだよ・・・・。」

「・・・・見るな・・・。」

「なんで?」

「・・・・・我慢・・・・してるから・・・・。」

私は今、泣くのを我慢している。

シカマルの言葉がうれしくて・・・・。

うれしすぎて・・・・。

泣きそうになった。

「なんで我慢なんかすんだよ。泣けばいいだろ。」

「・・・・でも・・・・・。」

私は目をギュッとつぶる。

「見られたくないなら・・・・こうしててやるよ。」

そう言って・・・・また私を抱きしめてくれた。




















その優しさがうれしくて。













私は声を殺して・・・・泣いた。































「何年ぶりかな・・・・泣いたの・・・。」

泣くだけ泣いた私。

いまだにシカマルに抱かれたまま。

「上忍になったばかりの時・・・・。

 私もシカマルと同じ考え方をしてた・・・。

 最後の一手を振るうときは・・・・いつも泣いてた。

 だけど・・・・。

 同じチームとなった上忍に・・・。

 『女は泣いてばっかで足手まとい。そんなに泣くなら忍びを辞めろ。』って。

 私は忍びが大好きで・・・やっとなれて・・・・。

 それでもやっぱり人を殺めるってことにだけは慣れなかった。

 でも、泣くことがそんなに同じチームの迷惑になるのなら・・・・って。

 泣くことを我慢するようになった。

 我慢して・・・・我慢して・・・・。

 ずっと我慢してたら・・・・どうやって泣けばいいのか・・・分からなくなって・・・・。」





















ずっと胸の奥に封印してた『涙』。

どうやって扱っていいのか分からなくなってた。

そのうち、連鎖反応とでも言うのか。

私は感情を表現することが苦手になってきた。

そして、男の多い忍びの中で、私の言葉から女っぽい言葉遣いは消えてった。





















「・・・・その忍びってよぁ・・・・今のから見てどうだ?」

「・・・・今の私からじゃなくても・・・大したことない。」

「やっぱり・・・。」

シカマルがため息をついた。

「そいつ、に嫉妬してたんだろぉな。」

「嫉妬?」

「あぁ・・・忍びとして力の差はの方が上。

 だからに何かイチャモンつけたかったんだろ。」

「・・・そうなのか・・・?」

は鈍いからなぁ・・・・。」

なぜかシカマルがクスクス笑っている。

「ま、そんなめんどくせぇ奴のことはほっといて・・・・。」

シカマルが私を放して、立ち上がった。

のままでいいんじゃねぇの?」

「私は・・・・私のままで・・・。」

「笑いたいときに笑って、怒りたいときは怒る。

 泣きたいときは思う存分、泣けばいい。

 感情っつーのは人にどうこう言われるモンじゃねぇ。」

「・・・・そっか。」

「気にすんな。そろそろ里に戻るぞ。」

シカマルが、立てるか?、と手を差し出した。








一瞬、私は戸惑う。

今まで人に頼ってこなかった。

ここでシカマルの手を取ってしまったら。

私はシカマルに頼って行く。









「めんどくせぇけど・・・。

 俺はお前のためだったらいくらでも最後の一手、使うから安心しろ。」

照れたように呟くシカマル。








「ありがとう・・・・。」













私はシカマルの大きな手に自分の手を重ねた。























「もう・・・我慢しなくていいからよ。」

「え?」

「泣きたいときは・・・・泣け。

 めんどくせぇけど・・・そばにいてやるからよ。」

「・・・・うん。」






はい、シカマルの短編です。
上忍となったシカマル。
シカマルだったらきっと、簡単には人は殺めないだろぉな・・・と思って書きました。
いつまでもシカマルはシカマルのままでいてほしいです。