忙しくて。
忙しくて。
思い返すヒマなんかなかった。
いや・・・。
ヒマをつくらなかった。
だけど。
あの公園のベンチを見かけるたびに。
俺の中にまだお前がいることを。
実感するんだ。
恋哀〜レンアイ〜
が帰らぬ人となり、が任務の為に里から姿を消した。
それはもう5年前の話。
あの1件を教訓にした俺は現在上忍。
おかげでめんどくせぇ・・・なんて言ってられない任務ばっか転がりこんでくる。
だが、今日はめずらしく休みだ。
最後の休みっていつだったっけかぁ?
と、言った俺の言葉にイルカのヤロウが休みをくれた。
別に休みをもらったからってやることなんてないんだけどよ。
かえってめんどくせぇ。
何をするか考えなくちゃならねぇじゃねぇかよ・・・。
1日の行動を考えるのは俺の性に合ってねぇ。
フラフラ散歩をすることに決めた。
里の中を歩いてればそのうち誰かに会うだろーし。
が・・・・。
こういうときに限って誰とも会わねぇ・・・。
さっきから3時間はフラフラしてるのに。
なんだよ、みんなして。
不意に視界にあの公園が写った。
「・・・・・・。」
なんとなく・・・・足が公園の中に進んでいく。
そして、ベンチの前で止まる。
「ふふっ・・・。何気に優しいシカマル少年なのでした♪」
が・・・・浮かんだ。
なぁ・・・。
俺たち、これからどうすればいいんだ?
いや・・・
本当は俺たちは一緒にいちゃいけないんだ・・・。
そんなこたぁ分かってる。
だけど・・・。
求めてしょうがないんだ・・・。
体が・・・・心が・・・。
を求めて・・・騒ぎ出すんだ・・・。
ここにはいないに語りかける。
求めて止まないこの気持ち。
5年前と何も変わらない思い。
「・・・お前が・・・・を・・・スキ・・・なのも・・・。
が・・・・お前を・・・・スキ・・・なのも・・・。」
俺を助けた直後のが浮かぶ。
なぁ、。
俺にどうしろっつーんだよ。
こんなの、ずりぃよ・・・。
自分の言いたいことばっか言いやがって・・・。
俺にも・・・なんか言わせろよ・・・。
あの瞬間、俺の思考は停止してしまった。
だから言いたいことは何も浮かばなかった。
だけど。
今は言いたいことが山ほどある。
だけど、それを聞いてくれる相手は・・・もういない。
気が付けばもう日が暮れていた。
空には今にも消えそうなほど細い月が姿を現している。
「・・・・そろそろ・・・・帰るか・・・。」
結局座ることのできなかったベンチに視線を落とし、目を閉じる。
そのまま体の向きを変えて、公園を出た。
俺の脚は・・・・家には向かわなかった。
昼間と同じように・・・フラフラ里の中を徘徊する。
どんどん夜が更けて、街灯が点灯して。
夕飯のいい匂いがして。
家の明かりが1つ・・・また1つ・・・消えて。
店も閉店し始めて。
気付けば・・・。
俺だけになっていた。
ずっと続くような闇。
まるで・・・俺のようだぜ・・・。
いずれ朝はくる。
だけど・・・。
俺の中のこの闇は・・・・。
朝を迎えることがあるんかなぁ・・・。
5年前に囚われたままの・・・・俺。
「かっこわりぃ・・・・・。」
空の細い月に微笑み、俺はやっと自宅に帰る気になった。
とぼとぼ歩く俺。
「・・・・・?」
あと少しで家・・・ってところで家の前に人影があることに気付いた。
警戒しながら近づくと・・・。
「久しぶり。」
だった。
幼さの消えた。
でも、雰囲気は5年前のままで。
俺は返事をすることも忘れていた。
「・・・・・シカマル?」
「・・・・・任務・・・・終わったのか?」
「うん。今日帰ってきたの。」
「・・・・お疲れさん。」
「ただいま。」
の笑顔は・・・・のままだった。
「・・・・元気・・・だった?」
「まぁ・・・・それなりに・・・な。」
「さっきチョウジ君に会ったけど・・・上忍になったんだって?」
「まぁな。気付いたら・・・って感じだけどな。」
「シカマルらしいや。」
他愛も無い会話。
だけど、俺にとっては・・・・。
求めて止まなかった瞬間。
「・・・・・シカマル・・・・・。」
「・・・・・なんだよ。」
「・・・・会いたかった・・・・。」
が・・・・俺の腕の中に飛び込んできた。
「・・・・・ずっと・・・・ずっと・・・・帰ってこれるのを・・・・待ってた・・・。」
ベストにしがみつくの腕に力が篭る。
「・・・・・俺も・・・・・。」
俺の腕は・・・・自然と・・・・・を抱きしめていた。
「・・・・・5年前のあの日から・・・・。」
思考の停止している俺は何も考えずに言葉が出る。
「もう・・・あんな思いはしたくなくて・・・。
ずっと任務ばっかやってたんだ・・・。
忙しくて。忙しくて。
思い返すヒマなんかなかった。
いや・・・。
ヒマをつくらなかった。
だけど。
あの公園のベンチを見かけるたびに。
俺の中にまだお前がいることを。
実感するんだ。」
「それは・・・・私も一緒・・・。
との想い出を大事に・・・大事に・・・って。
だけど、思い出すのは・・・・と私と・・・・シカマルが一緒にいたときのこと。
それが許せなくて・・・。
必死になって仕事・・・してた。
だけど・・・・だめだった。」
がふふ・・・と笑う。
「あぁ・・・・私はシカマルが好きなんだって実感するだけ。」
「・・・・・おぉ・・・。」
抱きしめる腕に力が入る。
「俺も・・・・お前が好き・・・だ。」
今度は過去形じゃない。
今、現在の素直な気持ち。
「・・・・もう・・・・私たちが一緒にいても・・・・は怒らないよね?」
「・・・・いや・・・・怒ってるかもな。」
「なんで?」
「・・・あのとき、は俺たちに一緒になってほしくて・・・・言ったんだ。
それなのに・・・・俺たちは・・・・。」
「・・・・じゃあ、報告・・・しに行こう?」
「どこへ?」
「の眠る場所へ。」
が俺の手を引く。
その手を俺はしっかりと握り締める。
。
俺、まだが好きなんだわ。
好きで、好きで、好きで。
気持ちの大きさにはお前に負けねぇぐらい・・・。
遠回りした俺たちだけど・・・。
やっと自分の気持ちを口にすることができた。
お前が守ってやれなかった分。
俺がを守るから。
お前がしてあげられなかった分。
俺がを幸せにすっから。
だから。
めんどくせぇかもしれねぇけど。
そこから俺たちを見守っててくれよな・・・・。

シカマル長編最終輪です。
なんとかハッピーエンドになりました。
ちょっと強引だったかな・・・?