すまない・・・。
許してくれとは言わない。
ただ、謝らせてくれ・・・。
自分の欲望に勝てなかった俺にできる唯一のこと。
すまない・・・。
償い
「イタチ!」
は家の門から出てくるイタチを見つけ、かけよった。
「やぁ、。」
「今日も修行?」
「あぁ。」
「最近ずっと修行ばっかね。」
「自分が成長していることを実感できるとうれしくてね・・・。
も一緒にするかい?」
「私は・・・いいや。同じうちは一族でも・・・イタチと違って落ちこぼれだから。」
「だから一緒に修行しようと言っているんだ。」
イタチはにっこり微笑み、の手を掴み引いた。
「・・・・イタチの修行にはついていけないと思うけど・・・。」
も微笑み、イタチに引かれるままに歩き始めた。
「セイッ!ハッ!」
「踏み込みが甘いぞ。」
はイタチの懐に潜り込む・・・が、いつもイタチにかわされる。
「んもぉ!少しは手加減してよぉ。」
が肩で息をしながらイタチに叫ぶ。
「それじゃ修行にならないだろ。」
全く呼吸の乱れていないイタチ。
「あーもぉダメ。エネルギー無し。」
「お、おい。」
そのまま後ろに倒れるをイタチが支える。
「スキアリ♪」
は腕を伸ばし、イタチの首にしがみつく。
そして、そのままイタチの頬にキスをする。
「・・・・・。」
イタチは固まった。
「あ・・・・怒った?」
が心配そうにイタチの顔を覗き込む。
「スキアリ。」
「うわっ・・・・!」
今度はイタチがの額を小突く。
「まったく・・・どうしてはいつもそうなんだ?」
イタチのため息。
「じゃあ、イタチはイヤなの?」
「・・・・・・・。」
「こぉんな美女にキスされて、イヤなの?」
「・・・・自分で言っているあたりが信用ないね。」
「イタチ!」
顔を真っ赤にして怒るをイタチが笑った。
「・・・・ねぇ、イタチ。」
「なんだ?」
「・・・・・私・・・さ・・・・イタチのこと・・・。」
「さて、そろそろ日も暮れてきたし、帰ろう。」
の言葉を遮ってイタチは歩き始める。
「・・・・待って!」
はイタチの前に回りこんだ。
「どうしていつもそうやって最後まで聞いてくれないの?!」
「・・・だめなんだ。」
「何が!」
「・・・・今の・・・俺は・・・・ダメなんだ・・・・。」
イタチは自嘲気味に笑った。
「・・・・イタチ?」
「さぁ、帰ろう。サスケが待っている。」
の横を通り過ぎ、イタチは歩き出す。
すまない。
の言葉は聞けない。
知ってしまった俺には。
の隣に立つのが。
辛い。
「イタチ、いるぅ?」
「あ、さん。こんにちわ。」
「サスケ、こんにちわっす。」
玄関に立つはこれからアカデミーへ行くサスケの頭を擦った。
「兄さんなら森じゃないかな。最近そこへよく行くから。」
「そっか。ありがと。勉強頑張ってね。でないと私みたいになっちゃうぞ。」
「さんみたいにはならないよ。」
「お、言うようになったじゃない。」
「行って来ます!」
「いってらっしゃぁい。」
元気に走り去るサスケを見送る。
「・・・森・・・か。」
は森へ向かい始めた。
森ではすぐにイタチを見つけた。
だが、話しかけなかった。
いや・・・・話しかけられなかった。
イタチの周りの空気が・・・・。
人を寄せ付けない。
イタチ・・・・?
は遠くからイタチを見つめることしかできなかった。
そして、夜。
「キャアァァァァァァァっ!」
突然聞こえた悲鳴。
「何っ!!」
は家を出る。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
また別の悲鳴。
方向は・・・・!
は迷わずイタチの家へと向かった。
「・・・・何・・・これ・・・・。」
絶句。
イタチの家に向かう道に倒れているモノ。
人、人、人、人・・・・。
「誰が・・・・こんなこと・・・・。」
は腰のポーチを確認して足を進める。
「うわぁぁぁぁぁ!」
目の前をサスケが悲鳴を上げて走っていた。
「サスケ!」
も後を追いかける。
「サスケ!待って!」
が、サスケも無我夢中での声が聞こえていない。
「・・・・・・!」
殺気。
そっと振り向けば、そこにいたのは・・・。
「イタチ・・・・!」
「・・・か。」
イタチはふっ・・・と笑った。
「どうして出てきた?」
「どうしてって・・・・悲鳴が聞こえて・・・。」
只ならぬイタチの気配に自然と構える。
「・・・・さっきサスケが走っていった・・・。何が・・・あったの?」
手が震える。
「・・・・何も気付かずにいれば・・・・よかったのに・・・。」
イタチは顔を歪める。
「・・・・まさか・・・とは思うけど・・・・。」
冷や汗が流れる。
「あなたが・・・・やったの?」
「・・・・・・。」
「違う・・・・よね?」
「・・・・・。」
「誰かが攻めてきた・・・んだよね?」
「・・・・・・。」
「答えて!!」
はクナイを取り出した。
「・・・忍びとしての習性か・・・。」
イタチがクククッ・・・と笑う。
「・・・・・もう・・・分かってるんだろ・・・?」
「・・・・・。」
「みんなを殺したのは・・・・俺だ。」
の手からクナイが落ちる。
「・・・・・どう・・・して・・・・・。」
しゃがみこむ。
「・・・・・俺は強くならなければならない・・・・。」
「だから・・・・みんなを殺したっていうの・・・・?」
「・・・・・そうだ。」
「じゃあ・・・・。」
ぼんやりと・・・・イタチを見つめる。
「私も・・・・?」
「・・・・・・。」
「そっか・・・・。」
は微笑んだ。
「どーせ・・・私にはイタチに勝てない・・・・。
イタチを止められない・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「みんなを殺したことは許せないけど・・・・。」
「私を殺すことで・・・・・イタチの望むモノがあげられるなら・・・・。」
「・・・・・いいよ・・・・・・。」
は両手を広げた。
その中に飛び込むイタチ。
持っていた刃はを貫き・・・・。
の体はイタチに寄りかかる。
「・・・・・。」
イタチはの体を支えてそっと地面に置く。
「・・・・・今度は・・・・遮らないで・・・・最後まで・・・・聞いて・・・ね。」
の口から血が吐かれる。
「・・・・・私、ずっと・・・・・ずっと・・・・イタチが好きだった・・・・。」
はイタチの腕を掴んだ。
「こんなこと、間違ってる・・・・。
本当は・・・・イタチを止めなきゃ・・・・いけないんだろうけど・・・・。
私は・・・・イタチの思った通りに・・・・行動・・・・してほしい・・・んだ。
それが・・・・私の・・・・愛情の・・・・形・・・かな。」
へへっ・・・・と微笑む。
「・・・・。」
「・・・・・好き・・・・だよ。イタチ・・・・・。」
の腕から力が抜けた。
「・・・・・・・・・。」
イタチはの唇にキスをする。
・・・・。
すまなかった・・・・。
せめてお前だけは・・・・と思っていた。
だが、全てを見たお前を・・・・。
生かしておくわけにはいかなかった。
あのとき・・・・・。
お前が来なければ・・・・。
生きられたのに・・・・。
すまなかった・・・。
お前の気持ちを知っては先に進めぬと。
だから、いつも聞かないようにしていた。
。
俺はお前の言った通りに。
自分の思った通りにしてる。
それが・・・。
せめてもの・・・。
お前への・・・。
償いだと思うから・・・。
「イタチさん?どうしました?」
「いや、なんでもない。」
「木の葉の里に来て、なつかしい思い出でも蘇りました?」
「そんなもの・・・俺には・・・・ない。」
イタチはある餡蜜屋に入った。
そして、席に座る。
「そこに座るな。」
「え・・・?」
「そこには座るな。」
イタチの前に座ろうとした鬼鮫を隣の席に移動させる。
「この席・・・なんかあるんですか?」
「・・・・いや・・・別に・・・。」
そう言いつつも目はさっきの席から離れない。
その席は・・・。
がよく座っていた席だった。
嫌がるサスケの腕を引っ張るとそんな二人によく一緒に来ていた店。
そして、よく座っていた・・・・席。
イタチは・・・昔のクセでいつも座っていた席に座っていた。