俺に未来がないわけじゃない。
俺が求めてなかっただけ。
誓いの印
隣で無防備に眠るの髪を撫でる。
ちょっと痺れてきた腕をの下から抜いてフルフルと振る。
「・・・ん・・・・。」
がモゾッと動いた。
と、同時に白い肩が露になる。
「はホントに寝相悪いんだから・・・。」
クスクス笑いながら布団をかけなおしてやる。
真夜中の静寂。
窓から差し込む月明かり。
それに照らされて浮かび上がるの寝顔。
俺の一番幸せの時間。
職業柄、眠りは浅い。
のちょっとした動きですぐ目が覚める。
だからは別々に寝ようと言ってくれたけど。
それは俺にしてみれば、冗談じゃない!と思う。
愛しい人と同じ空間にいるのに、どうして一緒にいちゃいけない?
愛しい人の気配を常に感じていたいのに。
別々に寝ることに首を横に振り続ける俺に、
は観念したように笑った。
普通、女は付き合っていれば必ず未来を描く。
そして、それを俺に求める。
俺に明日があるかなんて分からないのに。
との会話に未来を匂わす言葉はない。
いや、全くないわけじゃない。
俺が任務に行くまでの未来の話はする。
明日は二人でのんびりしよう、とか。
明後日、買い物に行こう、とか。
でも、任務の日から先の未来を描かないし、求めない。
それが心地よく感じる。
守れない約束はしたくないから。
だけど、それが淋しく、切なく感じる。
の中に、ずっと一緒にいたいという気持ちはないのか、と。
ワガママだって分かってる。
保障の無い未来を求めるなと言っておいて、なんで求めないんだ・・・なんて。
正直、には求められても・・・いい。
なぜなら、俺が求めているから。
とずっと一緒にいたい。
とずっと笑っていたい。
ケンカして、泣いて、仲直り。
「ねぇ・・・の未来に俺はいないの?」
寝ているにそっと呟いてみた。
当然、返事なんかない。
でも、それが返事に思えて・・・・。
「・・・いつか・・・・本当に一緒に住めたら・・・・いいね。」
呟いた後、苦笑する。
いつか?
なんだ、それ。
俺に「いつか」なんてないのに。
バカか、俺は。
「・・・・カカシ・・・・離れないで・・・・・。」
静寂の中に小さな呟き。
驚いてを見れば・・・・。
閉じたの目から涙が零れていた。
嫌な夢でも見てるのか?
「・・・・ずっと・・・・一緒に・・・・いて・・・・。」
胸が痛んだ。
同時に、幸せになった。
は俺との未来を求めてないわけじゃない。
俺の負担にならないように言わないだけなんだ。
そうさせてるのは・・・・俺。
言葉にしなくても、は望んでる。
寝言で呟いてしまうほどに。
「どこにも行かないし、ずっと一緒にいるよ。の隣で。」
涙を拭ってあげ、キスをした。
俺に未来がないわけじゃない。
俺が求めてなかっただけ。
でも、今は願う。
との未来を、永遠に続くことを。
この未来を守りたい。
俺のために、のために。
約束の印として。
の左手薬指に誓いの印をつけた。
この印の所に、絶対帰ってくるから。
二人で未来を作っていこう?
