これから二人だけの花火大会とお祭りと海とプールやるから。
花火とお祭りと海とプール
暑い。
何が暑いって、あなた。
現在残暑残る9上旬。
外は蝉の声が鳴り響き、日差しは全てのモノを焦がさんばかりに降り注ぐ。
そのせいで、エアコンつけてても全く意味がないぐらい暑い。
気休めに特番の怪談番組を見て精神的に涼しくしようと試みたところ。
夏特有のあのべっとり感が余計恐怖を煽ってさらにイライラ増大。
あー・・・・暑い暑い暑い暑い暑いあついあついあついアツイアツイ・・・。
イライライライライライライライライライライライラ・・・・・・。
「ー、いるー?」
玄関からカカシが顔を見せた。
あれ?私、玄関の鍵かけてあったよね?
あのやろう・・・また勝手に開けやがったな・・・。
いつもの私ならここで1発怒りの鉄拳を食らわせる(当たらないけど)。
でも今日はそれすら面倒。
「なんだ、いるじゃない。
返事ぐらいしてよ。心配するでしょ?」
私の顔を見て、あたり前のようにうちの冷蔵庫に何かをしまった。
「あーアイス溶けちゃった。」
その間延びした言い方もイライラする。
「はイチゴ味でいいんだよね?」
こっちを向いてにっこり笑ったカカシ。
それがまたイライラする。
「よいしょっ・・・・と。」
これまた当たり前のように私の隣に座った。
そして・・・。
「やっぱの体は癒されるねぇ。」
しっかり抱きしめてきた。
イライライライライライラ・・・・・プチッ。
私の中の何かが音を立てた。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
私はカカシの腕を振り払った。
「暑苦しいんだってばっ!!」
「そりゃ夏ですから。」
「見てっ!!このサンサンと降り注ぐ日差し!!耳鳴りがするほど聞こえる蝉の声!!」
「まぁ・・・それがないと夏っぽくはないでしょ。」
「夏なんか嫌いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
勢いついでにテーブルの上に片足をドンッと置く。
「こんなに暑かったら人類滅亡の危機に直面よっ!!」
「そりゃいきすぎでしょ・・・。
それにしても・・・今日は本当に暑いねぇ。」
「暑いと言っててなんなのよその格好はっ!!!!」
ビシッとカカシを指した。
袖を捲くってるとはいえ長袖のシャツ!
しかも熱を吸収しやすい黒!!
しかもしかもその上に暑苦しいベスト!!
しかもしかもしかも顔の半分を口布と額当てで隠してるし!!
「見てるこっちが暑苦しいってのよ!!」
「んー、そう言われてもこれ、仕事着だし。」
「そんな仕事着で私の家に来るなぁぁぁぁぁ!!!!」
「ちょっ・・・!!っ?!」
勢いとは怖いもので。
あっと言う間にカカシの顔から口布と額当てを剥いだ。
その勢いでカカシのベストを脱がせ、シャツに手をかけたとき。
そっとカカシの手が私の手を止めた。
「女の子が男剥いてどうするの。普通逆だから。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・?」
「・・・・・・。」
真っ直ぐに向けられた目に耐えられなくて俯いた。
「お誘いなら喜ぶけど?」
「・・・・・・・。」
「・・・・?」
「・・・・すぐ・・・行くの?」
「え・・・?」
私の言いたいことが分からなかったみたいにマヌケな返事が返ってきた。
「仕事着で来たってことは、また仕事に行くってことでしょ?!」
「・・・・・いや・・・・今日は別に・・・・・・。」
「あんたはいいわよ、あんたは!!
でも残されるこっちの身にもなりなさいよ!!
カカシ!あんた、最後に会ったのいつだったか覚えてるの?!
3ヶ月も前よ?!3ヵ月!!遅刻にも程があるわっ!!
その間、私がどうしてたかなんて、あんたには分からないわよねぇっ?!」
「ちょっ・・・・・・!!落ち着いてっ!!」
カカシのシャツから手を離して、今度はカカシの首に両手を移動させておもっきり振った。
「花火大会もお祭りも海もプールも全部終わっちゃったじゃない!!
あれほど一緒に行こうねって約束してたのにっ!!!
悔しいから一人で行ってきたわよ、コノヤロー!!
まぁそれは仕事だからしょうがないわよ、えぇしょうがないわ。
私だって一応社会人なんだわけだし?
それぐらい理解してあげるわよっ!!
だけどねぇ!!」
カカシの頭を振る力が弱まって・・・・次第に止まった。
「・・・・心配・・・・するじゃない・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「1ヶ月で終わるって言ってたじゃん・・・・。
長引くなら長引くで・・・・・連絡ぐらい・・・してよ・・・・。」
「・・・・・・。」
「あんたにとって・・・・私ってそんな存在なの・・・・?」
本当は暑さなんてどうでもよかった。
夏が暑いのもしょうがないし、蝉が鳴くのだって蝉の自由だ。
本当はカカシに会えなくてイライラしてただけ。
でもそんなのただの私のワガママで。
カカシは私たちの住む里を守るために任務をこなしていて。
会えないイライラを全部夏のせいにしないとやっていけなかった。
んで、久しぶりの再会が不法侵入の上何事もなかったような涼しい顔をしたカカシ。
怒りが爆発しないで何が爆発するって。
「・・・・ごめんね?」
「謝って済んだら警察いらないから!!」
「うん、でも、ごめん。」
カカシは私の体を抱きしめた。
「俺も行きたかった。
花火大会もお祭りも海もプールも。
と一緒に行きたかったよ・・・・。」
「・・・・・・・。」
「だけど、やらなきゃいけないときは・・・やらなきゃ。
それはも・・・・分かるでしょ?」
住む世界は違うけど、私だってカカシだって社会人。
仕事が舞い込んできたら、それは何を犠牲にしても最優先すべきこと。
ましてや、カカシは・・・・。
そんなこと、分かってるよ・・・・。
「ワガママ言って・・・・ごめん。」
「俺も・・・・我慢ばっかさせてごめんね?」
俯く私の顔をカカシの指が止めた。
そのまま上を向かせて・・・唇が重なった。
「・・・・ねぇ、?」
「・・・・ん?」
「本当に全部一人で行ってきたの?」
「当たり前じゃない。」
「本当に一人で?」
「一人よ。何が言いたいワケ?」
「だって、お祭りや花火大会はいいとして、海やプールに一人って・・・。」
「・・・・・・。」
「男、一緒?」
「ばっ!!!んなわけないでしょ!!」
「本当に?」
カカシの疑いの目がじぃ・・・・と私を見る。
つい、目が泳いでしまった。
「本当は・・・・。」
「本当は?何?」
「・・・・・行ってません。」
「行ってない?」
「〜〜〜〜〜んもぉっ!!そうよ!!行ってないわよ!!行けるワケがないじゃないっ!!
あんなカップルだらけのところに女一人で行って何が楽しいのさっ!!」
「あそ、なら丁度いいや。」
私の逆ギレを何もなかったようにカカシは笑った。
「さぁ、行こうか。」
「・・・・・へ?」
カカシは立ち上がって私に手を差し出してる。
私はポカン・・・・とそれを見上げてる。
「お祭りと花火大会と海とプール、やりたいでしょ?」
「・・・・・もう終わったよ?」
「木の葉のは、でしょ。」
「・・・・・?」
「これから二人だけの花火大会とお祭りと海とプールやるから。
今夜は花火大会ね。さ、買い物行くよ。」
慣れた手つきで口布と額当てをして。
くすくす笑う私の手を引いて、玄関へと向かった。
花火大会とお祭りと海とプール。
本当はどうでもいいの。
あなたと一緒にいられれば。