里の近くの森の中に1本だけある大きな桜の樹。
桜の季節は既に過ぎていて、現在は葉桜。
ピンクの花と緑の葉の入り交ざった樹。
「なんて状態なんかねぇ・・・。」
カカシはぽつっと呟いた。
幹にそっと触れ、優しく撫でる。
「・・・。」
こつ・・・と額を幹に当て、目を閉じる。
「俺は・・・どうしたらいい・・・?」
風が吹き、残りの花びらでカカシを抱きしめた。
約束
春。
上忍仲間のに呼び出され、カカシは森の奥にある桜の木の下にいた。
「私、カカシのことが好きなんだけど。」
大したことじゃないようにはサラッと言った。
「へぇ・・・・え?は?」
一瞬聞き逃したカカシは驚いて聞き返す。
「もぉ、乙女の告白なんだから真剣に聞いてよね。」
「いや、だったらそれらしく言って欲しいです。」
「言ってるじゃん。」
「どこにこんなサラッと言っちゃう乙女がいるのよ・・・。」
「そぉ?」
「そぉでしょ。」
「じゃぁ・・・。」
はカカシの眼を真剣に見つめる。
「私はカカシが好き。」
「・・・・・・うん。」
「だから、あんたを私のモンにしちゃいたいんだけど?」
「私のモンって・・・。女がそういうこと言っちゃだめでしょ・・・。」
カカシが呆れている。
「だって、私のモンにしちゃいたいんだもん。・・・ダメ?」
が上目遣いに見上げた。
「・・・・ふぅ。」
カカシのため息にがビクッとした。
それなりに緊張しているみたいだ。
「・・・・・・・・いいよ。」
たっぷり沈黙してからぽつっとカカシが呟く。
「・・・え?」
「え?じゃなくて!のモンになってあげる。」
カカシが微笑む。
「第一、の猛アタックから逃げられるヤツなんかいないって。」
「あ、バレバレ?」
「バレバレのつもりでやってたんじゃないの?」
「そのつもりでした。」
「じゃ、いいじゃん。」
カカシはの腕を引き寄せ、そっと抱きしめた。
「おかげで俺はにメロメロです。」
「どーだか?」
「あれぇ?そんなこと言っていいわけ?」
「ごめんなさい。」
「よろしい。んじゃ、お詫びに・・・。」
カカシはそっと口布をずらし、の顔を上げさせた。
重なる唇。
「これであんたは私のモンだからね?」
「はいはい。俺はのモンです。」
「言い寄る女、全部断ってね?」
「もう既に断り続けてるんだけどね?」
「あら、そうなの?」
「そうなのよ。」
二人はクスクス笑った。
そんな二人を祝福するかのように、花びらが舞っていた。
どれぐらいの時間を二人で過ごしたのか・・・。
少なくとも2回はこの桜を見上げた。
それまでにたくさんキスをした。
体も重ねた。
ケンカだっていっぱいした。
ケンカしたまま任務に行ってしまい、帰ってきてそのまま謝りに行ったこともある。
季節は秋だった。
葉の枯れた桜の木の下に二人はいた。
「話って何?」
木枯らしがカカシの体を震わせる。
「・・・うん・・・・。」
いつものらしくない。
カカシに背を向けている。
「なんかこのシチェーションって別れ話するみたいなんですが?」
わざとをからかう。
「・・・・うん、それでもいいかも・・・・。」
フフッ・・・と笑う。
「・・・・・?」
カカシは嫌な予感がした。
もうからかっていられない。
「別れたほうが・・・・気が楽・・・なのかな・・・。」
「・・・・・どうした?」
「・・・・・・・。」
二人の間に木の葉が舞う。
「・・・?」
「・・・急な任務・・・入っちゃった・・・。」
「そんなの、いつものことでしょ・・・・。」
「・・・・うん・・・・。そうなんだ・・・・けどね・・・・。」
が振り向いた。
「・・・・ランクは?」
「・・・・・Sランク・・・。」
「内容は?」
「・・・・ある組織の潜入捜査・・・。」
「期間は?」
「・・・・・分からない。」
「・・・・・・。」
の眼に涙がたまっている。
任務は他言無用。
それは同じ里の忍び同士であっても・・・だ。
それ以上聞けないし、言えない。
でも、の様子から・・・・どれほど危険なのか予測はつく。
「・・・・・・・待ってる。」
「・・・・待たなくて・・・いい。」
「ずっと待ってる。」
「・・・・待たなくていい。」
「が帰ってくるまで・・・俺はここにいるから。」
「そのときには別の女が隣にいたりしてね。」
が微笑んだ。
「・・・俺のこと、信用してないでしょ。」
「信用してる。カカシは有言実行だもん。・・・・だから、待っててほしくないの。」
「なんで?」
「・・・約束は生き抜くための糧になる。だけど、時としてそれは束縛にもなる・・・。」
「・・・俺との約束が・・・邪魔ってこと?」
「・・・・・・・。」
「・・・そっか・・・・。」
カカシはそれ以上言えなかった。
「でも・・・・勝手に待っている分には・・・いいよね?」
「・・・・・・・ん・・・・。」
小さく頷く。
「・・・・俺のところに戻ってこなくてもいいから・・・生きて。
が生きていてくれるだけで・・・・それだけで十分だから。」
「・・・・約束はできないかな・・・。」
「約束じゃないよ。俺の・・・願いかな。」
「そっか・・・。叶うといいね。」
「あぁ・・・。欲を言えばキリがないから言わないけど・・・。」
カカシの言葉には笑った。
「いつ出立?」
「今夜。」
「・・・・気をつけて。」
「・・・・ん・・・。」
頷いたをそっと抱き寄せキスをする。
「・・・約束しないって言いながらもお願いがあるの・・・。」
「いいよ。」
「額当て・・・・交換しない?」
「これ?」
「うん。カカシの額当てしてれば・・・少なくとも頭は守ってくれそう。」
が少しおどけて言った。
「忍びとなってからずっとしてるから・・・強力なお守りだよ。」
カカシは額当てを外した。
「ありがと・・・。」
額当てを受け取ったは自分の額当てをカカシに差し出した。
「・・・・気をつけて。」
「・・・行ってくる。」
「うん・・・・。」
はカカシに背を向けて歩き始める。
カカシはポケットに手をしまい、の姿が見えなくなるまでそこにいた。
自分の隣を去っていく愛しい人。
本当は忍びなんかやめてほしい。
だけど、は忍びであることを誇りに思っている。
だから好きになった。
忍びとは、いかなる場合でも己の心は消すべし。
任務遂行が第一目的。
の姿が見えなくなり・・・・カカシは桜の樹を見上げた。
「・・・・一緒に・・・・待ってような・・・。」
幹をポンポンと叩き、カカシは姿を消した。
そして1年が過ぎたある午後のこと。
カカシはいつものように桜の木の下で読書を楽しんでいた。
「カカシさん!」
突如、隣にゲンマが現れる。
「ん?どーしたの。」
カカシは愛読書から眼を離してゲンマを見る。
そこで初めてゲンマの緊迫した様子が分かった。
「いますぐアカデミーへ来てください。さんが・・・。」
「・・・・・!!!」
カカシの心臓がドクン・・・と鳴る。
と、同時に桜の樹がザワザワと揺れた。
「・・・・大丈夫。」
そっと桜の樹に言った。
「早く!!」
「おう。」
ゲンマに急かされてカカシは姿を消した。
アカデミーの会議室には火影が待っていた。
「失礼します!」
カカシは言葉とは裏腹にドアを勢いよく開け、飛び込んできた。
「来たか・・・。」
火影がパイプを吹かす。」
「は・・・・!!!」
部屋の中にの姿を探すが見当たらない。
「・・・・つい今しがた・・・これが届いた。」
火影の前のテーブルには額当てが置かれていた。
カカシは近づき、それを確認する。
血に染まった額当て。
「・・・・これは・・・・。」
震える指でそれに触る。
「・・・・お主の・・・じゃな?」
カカシの額当てだった。
と交換した・・・・カカシの額当て。
それがここにある。
意味することは?
「・・・・届いたのはそれだけじゃ・・・。
まだ生死の確認はとれていない・・・・。じゃがも上忍じゃ・・・・・・。」
火影は言葉を濁らせた。
「・・・・・・・・。」
カカシは額当てをそっと持ち上げる。
「・・・・希望は・・・捨ててはいかん・・・。」
火影はそっと部屋を出た。
「・・・・。」
持ち上げた額当ては冷たくて・・・少し重い気がした。
・・・・血を含んでいるから?
誰の血・・・・?
それは・・・・・。
「・・・・生きててくれ・・・・。」
額当てを抱きしめ・・・小さく呟いた。
あれから3年が過ぎた。
ついに・・・の名が慰霊碑に刻まれることが決まった。
それは・・・殉職を意味する。
正確にはまだの生死ははっきりしていない。
が、音信不通が3年も続けば誰もが殉職したと思う。
ある1人を除いては・・・。
「納得できません。」
カカシは火影の机を叩いた。
「は生きているかもしれない!それなのに名を刻むなんて・・・!」
「しかし・・・あれから3年が過ぎた。」
「希望を捨てるなと言ったのは火影様じゃないですか!!」
「カカシ、落ち着けって。」
一緒にいたアスマがカカシの肩を手を置いた、が、振り払われた。
「お前は黙ってろ!」
「・・・・ぉぅ・・・。」
アスマはカカシの迫力に押されてしまった。
「もし帰ってきたがそれを見たら・・・!」
「・・・お主の気持ちも分かるが・・・。
お主の他にもを慕っている人々がいる。
その人々からはなぜ刻んでやらないのか・・・と言われ続けていたのじゃ。」
「・・・・・・・。」
「お主だけが辛いのではない。みんなが辛いのじゃ・・・。
の名を刻んでやらないと・・・先に進めぬ者もいる・・・。
分かってやってくれ・・・。」
火影はパイプを吹かす。
「・・・・失礼しました・・・。」
カカシは力なく火影の部屋を出る。
3日後。
の名が刻まれた。
名入れのとき、を慕っていたたくさんの人々がその瞬間を見守った。
すすり泣く者。
じっと見つめる者。
花を手向ける者。
に話しかける者。
「変なの・・・そこにはいないのに・・・ね。」
遠くから見ていたカカシが呟く。
「ま・・・・俺も話しかけちゃうけどさ・・・。」
オビトに会いに来るときはカカシも慰霊碑に話しかける。
それはオビトの死を理解していたから。
その死の瞬間に居合わせたから。
だから、いやでも理解できる。
でも、は・・・。
まだ確認していない。
もしかしたら生きているかもしれない。
それなのに・・・・。
おかしかった。
別の場所で生きているかもしれないの名に語りかけ、泣いて、最後の別れを言う。
「行かなくて・・・いいのか?」
背後に現れたアスマが呟く。
「・・・・行ったら・・・・認めることになるでしょ。」
カカシはそう言い残して姿を消した。
半年たった今。
カカシは今だ桜の樹に通っていた。
里の近くの森の中に1本だけある大きな桜の樹。
桜の季節は既に過ぎていて、現在は葉桜。
ピンクの花と緑の葉の入り交ざった樹。
「なんて状態なんかねぇ・・・。」
カカシはぽつっと呟いた。
幹にそっと触れ、優しく撫でる。
「・・・。」
こつ・・・と額を幹に当て、目を閉じる。
「俺は・・・どうしたらいい・・・?」
風が吹き、残りの花びらでカカシを抱きしめた。
カカシの中で半分諦めていた。
里の中での想い出がある場所は徐々に姿を変え、
誰もがを過去の人のように話す。
最初はそんな会話をされるたびにカカシはケンカを吹っかけていた。
が、だんだんと自分の中にも諦めが・・・。
「・・・・理解できていないのは・・・俺だけなのか・・・?」
カカシの言葉は弱弱しく・・・里1番の忍びの言葉ではなかった。
「そろそろ・・・受け入れなくちゃ・・・いけないのかな・・・。」
自嘲気味に微笑み、ポーチの中からあの額当てを取り出した。
「・・・・何が・・・・お守りだよ・・・。」
悔しそうに呟き、額当てを樹の枝に結んだ。
「これは・・・・お前が持ってて。俺は・・・・と約束したから・・・。
・・・・待たないって・・・・。だから・・・先に進まなきゃ・・・・。
せめてお前だけは・・・を待っててやってちょーだい。」
カカシの言葉に反応したように桜は葉を揺らす。
それを見てカカシは微笑み、歩きはじめた。
もう・・・振り向かない。
振り向けない。
1歩1歩を踏みしめる。
。
俺は・・・・先に進むよ。
約束は束縛になる。
その言葉が今、分かった。
あのとき約束していたら・・・・。
俺はずっと立ち止まったままだった。
だから『待たなくていい』って言ったんだね。
は俺のこと、よく知ってるよ。
もうお前ほどの理解者は現れないだろう。
お前ほど大切に思える人は・・・・いないだろう・・・。
ありがとう・・・・・・・・・・。
「こんなところに額当てが飾ってあるぅ。」
背後から声がした。
ドクン・・・・。
カカシは動きを止めた。
「誰のかなぁ?」
振り返りたいのに・・・・・振り返れない。
「こんなところにこんな大切なもの捨てちゃうなんてひどいなぁ。」
体中の感覚は麻痺しているのに耳だけははっきりと声を聞き取る。
「もらっちゃおーかな。」
「はたけ カカシさん?」
名を呼ばれ、やっと・・・けれどゆっくりと振り返る。
そこには・・・。
「これ、私の・・・だよね?」
が微笑んでいた。
いつもの。
唯一違うのは、右目の脇に大きな傷跡が残っていて髪が短いだけだ。
「・・・・・・・。」
カカシは動けない。
心臓が動いているのが不思議なぐらいだ。
「なぁに、固まってるのさぁ。」
はいつものようにクスクス笑っている。
「私の顔、忘れちゃった?」
「・・・・忘れた・・・・かも。」
「じゃ、よく見せてあげる。」
1歩1歩よっくり近づき、カカシの前まで来るとは顔を見上げた。
「・・・・思い出した?」
「・・・・・・・・・・・ん・・・・・。」
「それはよかったです。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「ん?」
「・・・・・・・。」
「なぁに?」
「・・・・・・・・っ!」
カカシは腕を伸ばしを抱き寄せ力一杯抱きしめた。
「・・・・・!・・・・!」
「・・・・・・ただいま・・・・。」
「・・・・・おかえり・・・・!」
「遅くなって・・・・ごめん。」
「・・・・そんなの・・・・!生きて帰ってきてくれればいいって言ったでしょ。」
「・・・・うん・・・・。」
もカカシの背に腕を回し、抱きしめた。
「今までどこにいたの?」
カカシはベッドの中でに腕枕をしながら抱き寄せた。
火影に生還を報告し、刻まれた名を消してもらった。
その後、そのままカカシの家に戻り、二人でくつろいでいる。
「・・・・小さな村でお世話になってたの・・・。」
「村?」
「うん・・・。任務の途中で正体がばれて・・・。
逃げる途中で怪我しちゃって・・・ね。
でも、カカシの額当てのおかげで頭だけは守れたんだよ。」
は傷跡をカカシに見せた。
傷は額の下辺りからついていた。
「川に落ちた私はどこかに流れ着き・・・近くの村の人が助けてくれたの。
最初は・・・全然動けなかった。
小さな村だから・・・医療も発達してなかったし・・・。
私も医療忍術が使えないほどだったから・・・。」
「それでこんなにかかったのか・・・・。」
「ううん。3年もしたら元の体に戻ったわ。
だけど・・・・村の人にお礼がしたかったから・・・・。」
「らしいね。」
「私らしいでしょ?」
二人はクスクス笑った。
「・・・・・・・このまま・・・・村にいてもいいかなって思った。」
は体を起こし、シーツを体に巻きつけベッドのフチに座った。
「・・・・・・・・。」
カカシは言葉の続きを待つ。
「とてもいい人たちばっかりだし・・・・のどかで・・・平和で・・・・。
血に汚れた私を受け入れてくれる。
とても・・・・いい村だった。」
「・・・・・・そっか・・・・。」
「・・・・・求婚されたの。」
「・・・・・・・・・・。」
「その人は・・・・最初に私を見つけてくれて、看病もしてくれた人だった。
とても優しかったし・・・・正直、この人ならいいかな・・・とも思った。
だけど・・・・ある日、気付いちゃったんだ。」
「何に?」
「・・・・その人が・・・・本当はカカシに似ていたことに・・・・。」
「俺?」
「外見とか・・・・しぐさとか・・・・。
だから、あの人のそばにいて心地よかったんだって・・・・。
それに気付いたら・・・・・もう・・・・里に戻りたくてしょうがなかった。」
「・・・・・・・・。」
カカシも体を起こし、後ろからを抱きしめた。
「あの人に・・・・悪いことしちゃった・・・。」
「しょうがないでしょ。には・・・・俺がいる。」
「でも、私は自分で待たなくていいって言ったし。」
「・・・・俺がそんなに諦めの早い男だと思った?」
「・・・・・ううん・・・。絶対待っててくれてると思ってた。」
「分かってるじゃない。」
「ふふ・・・・・でも、自信なかった。」
「自信?」
「本当に私は里に戻っていいのか・・・・。またあなたの許に戻っていいのか・・・。」
「なんで?」
「他の女がほっとかないでしょ。」
「あー・・・。」
「心当たり、あるんだ?」
「まぁね。だけど、全部断ってたよ。」
「なんで?」
「最初に約束したじゃない。以外の女からの誘いは断るって。」
「でもそれは・・・・。」
「もうクセなんだよね。断ることが。」
「あらあら、大変。」
「うん。大変。でも、がこうして戻ってきてくれたから・・・・。」
カカシはの肩からシーツを下ろした。
その肩に前は無かった傷跡がある。
そっと傷跡にキスをする。
「・・・。」
「ん?」
「約束してほしいんだ。」
「何を?」
「・・・・もう『待たないで』なんて・・・・言わないで。」
「・・・・・・。」
「今回のことでよく分かった。
俺はどんなにが長く遠くに行ったとしても・・・待つしかないんだってことに。
『待たない』なんて・・・・できないんだよ。」
「カカシ・・・。」
「だから・・・・約束して?」
「じゃあ、カカシも約束して?」
「何を?」
「何があっても私を待ってるって。
どんなに長くて・・・音信不通になって・・・・何をしているか分からない状態でも・・・。
絶対私を待ってて?」
「・・・・分かった。」
「約束ね?」
「ん・・・・。」
二人は唇を合わせる。
「あ、でも、殉職したら待たなくていいよ。もう戻れないから。」
「すぐ確認できればそーだけど・・・。」
「死ぬときはすぐ確認できるようにする。」
「さーん・・・・。」
「だから、カカシは私より先に死んではいけないのよ。」
「じゃ、俺の最後はに看取ってもらおう。」
「・・・・・二人して長生きしなきゃね。」
「そういうこと。」
クスクス笑いながらベッドに横になった。
約束。
それは時として生きる糧となる。
しかし、時として束縛となりえる。
でも・・・・。
約束があるからこそ、前に進もうと人は努力するのかもしれない。
