明の明星。
明け方、いつまでも輝き続ける星。
最後まで輝く星。
明星
目が覚めてしまった。
私はそっとベッドから出た。
隣にはすやすやと寝ているカカシがいる。
付き合い始めてもう3ヶ月がたつかな?
お互いに大人だし、体を重ねるまでにそう時間はかからなかった。
自分を安売りしてるわけじゃないし、
そうしなくてはカカシを引き止められないってワケでもないけど。
自然に求めて、自然に重ねた。
ま、そんなことはどうでもいいんだけど。
なんとなく水を飲んでそのままベッドに戻らず窓際に立った。
外はまだ暗い。
「眠れないの?」
ベッドを見るとカカシがこっちを見ていた。
「起こしちゃった?」
「の気配は寝てても分かるよ。」
カカシもベッドから起きて、窓際に来た。
「・・・・少し、寒いね。」
「うん・・・。」
背中から抱きしめてくれるカカシ。
前に回された腕をそっと抱く。
「明日・・・だね。」
「・・・・・・うん。」
「・・・・気をつけてね。」
「必ず戻ってくるよ。」
重なる唇。
明日からカカシは任務で里を数日空ける。
上忍だけのスペシャルチーム。
同じ上忍として、それが何を意味するのか分かる。
もう、会えないかもしれない。
「なるべく早く戻ってくるから・・・。」
「うん。」
「も・・・その間に任務とかあるだろうけど、気をつけてね?」
「分かってる。」
気付けば、空が白んできた。
「朝が明けましたね。」
「そうですね。」
二人はぽんやりと外を見つめていた。
真っ黒だった空が白っぽくなってきて・・・。
たくさんあった星が姿を消していく。
「あれ・・・?」
カカシが少し窓に近づく。
「どうしたの?」
「あの星・・・・消えない。」
「どれ?」
私も一緒に窓の外を窓に近づく。
1つだけ光っている星があった。
「あぁ・・・『明けの明星』ね。」
「『明けの明星』?」
「うん、または『宵の明星』」
「矛盾してない?」
カカシが不思議そう。
「夕方、一番最初に姿を現すから『宵の明星』。
んで、そのまま光り続けて明け方、最後まで姿を消さないから『明けの明星』。
本当は金星なんだけどね。」
「へぇ・・・。」
私の言葉を聞いてまた興味が沸いたのか、その星を見つめている。
「じゃあ・・・こうしよう。」
何か閃いたらしい。
「もし淋しくなったら、あの星を探すこと。」
「『明星』を?」
「そ。俺もが恋しくなったらあの星をだと思うから。」
「でも、夜の間はどの星だか分からなくなっちゃうよ?」
「他の星は里のみんな。だから、夜の間はみんなに会える。」
「なるほどね・・・・。それなら淋しくないかも。」
私はクスクス笑った。
「最初にに会えて、最後にに会う。これってステキじゃない?」
「うん・・・ステキだね。」
「もあの『明星』を俺だと思うんだよ?」
「じゃあ、ずっと見ていたくなっちゃうわね。」
「あー・・・・俺も。」
「だめじゃん。」
「だめだねぇ・・・。」
私たちは微笑んだ。
そして、カカシは任務へと向かった。
いつ戻るかわからないカカシ。
と、言うか、また会えるのかも分からない。
いつもそう。
カカシが任務で里にいない間、私は不安でしょうがない。
無事でありますように。
必ず帰ってきますように。
お願い事ばかり。
でも、今回は違った。
不安になったら夕方になるのを待って『明星』を見上げる。
そうすると、カカシが見守っていてくれるような気がして安心する。
朝、起きてすぐに『明星』を見上げる。
そうすると、朝一番にカカシに会えた気がする。
カカシが里を出て2週間がすぎた。
私はもう習慣のように『明星』を探した。
「・・・あれ?」
空は曇っている。
当然、『明星』どころか空自体が見えない。
「・・・・カカシ・・・・。」
突然、不安になった。
だけど、私にも仕事がある。
不安なまま、部屋を出た。
「何かありました?」
アカデミーで整理していた私にイルカさんが突然声をかけてきた。
「え?」
「なんかソワソワしてて・・・・。」
「あ、そう見えます?」
「違ってたらすいません。」
「いえ・・・・合ってます。」
「何かあったんですか?」
イルカさんの言葉につい空を気にしてしまう。
「・・・・空が・・・・。」
「あー、今日はめずらしく曇ってますね。」
「・・・・はい。」
「明日には晴れますよ。」
笑顔で言ってイルカさんは私のそばを離れた。
「・・・・そう・・・・ですね。」
私はしばらく窓の外を見つめていた。
夕方になっても空は雲に覆われていた。
「・・・・・カカシ・・・。」
アカデミーの校庭で一人佇む。
朝からの不安が消えない。
「!」
背後に突然現れたアスマ。
「アスマ!」
アスマはカカシと同じに任務に行っていたはず・・・。
そのアスマがここにいると言う事は・・・。
自然と顔が明るくなる。
「いますぐ病院へ行け!」
「へ?」
「カカシが入院している!」
「・・・・・・!」
私はそのまま病院へと向かった。
病室でカカシは寝ていた。
静かに病室に入る。
「・・・・?」
「あ、起きてたの?」
目の部分に包帯を巻いて何も見えないだろうカカシの手に触れた。
「言ったでしょ?の気配は寝てても分かるって。」
「そうでした。」
しっかりと手を握る。
暖かい手。
戻ってきた手。
静かに涙が流れる。
「心配かけて・・・・ごめん。」
「・・・ううん。戻ってきてくれてうれしい。」
「・・・・うん。」
つないだ手をほどき、私の頬に触れるカカシの大きな手。
「・・・・敵の忍びの使った毒霧のせいで・・・・目が見えなくなったんだ。」
「・・・・・しばらくすれば治るって。」
「・・・・うん。でも・・・・あの状態で見えなくなったときは・・・・もうだめだって思った。」
「・・・・・・。」
「そしたら・・・・星が見えたんだよね。」
「・・・・星?」
「・・・・『明星』が。」
私は窓の外に視線を走らせる。
まだ曇っている。
「その『明星』に向かって歩いていたら・・・・助かってた。」
「・・・・・そう・・・。」
「あの『明星』のおかげで助かったんだ。」
「『明星』に感謝・・・・だね。」
「うん。」
頬から離れた手はまたしっかりと私の手を握る。
私には見えなかった『明星』。
きっと・・・・。
カカシを助けるために移動してたから私には見えなかったんだね。
ありがとう・・・・『明星』さん。
これからも私の大切な人を守ってね。
キリ番1100Hitの明星様からのリクエスト。
内容は最初、イチタ・・・だったのですが、私にイタチは無理!!
なので、カカシにしていただきました。
リクエストに添えなくてごめんなさい、明星様・・・。
そんなわけで、明星様のお名前にちなんだモノを書かせていただきました。
私が高校時代に習った内容(明けの明星・宵の明星)なので、
もしかしたら間違っているかもしれませんが・・・。
ちなみにBGMはマイラバの「ハローアゲイン」です。