お前がいないとイヤだ。
毎日会わないとイヤだ。
かくれんぼ
冷たい北風の吹く中、里の広場で子供達が遊んでいた。
楽しそうに笑い声を上げて。
その様子を我愛羅は遠くから眺めていた。
1日に1回、どんなに忙しくても里の中を歩き回る。
それが我愛羅のクセだった。
里の治安情勢を知るためでもあったが、
毎日部屋の中にこもっているのがイヤだから、というのもあった。
子供達は無邪気な表情で遊ぶ子供達。
その笑い声は平和であると物語っている。
我愛羅は1歩、足を踏み出した。
が、すぐにその足を引っ込める。
・・・・だめだ。
我愛羅は俯いた。
我愛羅が遊んでいる子供ぐらいの頃、誰一人として我愛羅を受け入れることはなかった。
自らその輪に飛び込んだこともあったが、
返ってきた反応は幼い我愛羅を傷つけるには十分すぎる言葉と態度だった。
そのときのクセだろうか。
我愛羅は何かの輪に入るとこを諦めることが多かった。
折角楽しそうに遊んでいるんだ。
わざわざそれを壊す必要はないだろう・・・。
我愛羅は踵を返した。
「我愛羅様ー!!何してんのぉ?!」
名を呼ばれ、振り返ると、そこにはがいた。
は遠くから我愛羅に手を振り、駆け寄ってきた。
「えっ!!風影様がいんの?」
「どこどこ?」
「あっ!いたぁぁぁ!!!」
「風影様ぁ!!」
の声で我愛羅に気付いた子供達も我愛羅に走ってきた。
「何してんの?我愛羅様!」
「・・・・散歩だ。」
「とか言って、本当はデスクワークがイヤで逃げてきたんでしょ。」
「・・・・。」
子供たちと一緒に戯れてくるの言葉に一瞬、言葉を失う。
「ま、1日ずっとは辛いよね。
元々我愛羅様って頭使うような仕事、向いてなさそうだし。」
「・・・・随分言ってくれるな。」
の憎まれ口に、つい笑ってしまいそうになる。
風影となってから、誰もが我愛羅に気を使う。
それなのに、はポンポン普通に会話をしてきた。
それが我愛羅としては嬉しかったりするのだ。
「・・・・は何をしてたんだ?」
「私?私はこの子達と約束してたの。」
「約束?」
「そっ。一緒に遊ぶ約束。」
子供達と顔を見合わせて、ねー?!と笑った。
「・・・・お前、今年で16になるはず・・・。」
「うん、もうすぐ16歳でぇす。我愛羅様より年上なのでぇす。」
16になる女が5〜7歳の子供と遊ぶ約束・・・。
これは普通のことなのか・・・?
我愛羅の眉間に皺がよる。
「そんなにヒマなら、任務を回してやってもいいんだが・・・。」
「あらあら、子供達と遊ぶことも大切な任務よ?」
「・・・・らしいな。」
ぽんぽん出てくる言葉に、我愛羅は微笑んだ。
「あ、我愛羅様も一緒にやらない?」
の提案に子供達がはしゃいだ。
「どうせこのまま部屋に戻っても退屈な仕事が残ってるだけでしょ?やろっ!!」
「お、おい・・・・俺はまだ・・・・。」
「はい、決定!!みんなぁ!我愛羅様も一緒にやりたいってさぁ!!」
「やったぁ!!」
「我愛羅様と遊べるんだぁ!!」
「お、おい・・・!!」
「じゃ、何がいいかなぁ・・・・鬼ごっこだと砂が出てきちゃうし・・・・。」
我愛羅の言葉を全く聞いていないと子供達は何をして遊ぶか思案している。
我愛羅も諦め、大人しく待っていることにした。
「ドッジボールはぁ?」
「ダメ。」
「鬼ごっこはぁ?」
「却下。」
「かくれんぼはぁ?」
「・・・・消去。」
子供達が提案する遊びを全て否定する。
「じゃあ何がいいのぉ?」
「んー・・・大縄は?」
「いいよぉ!」
やっと決まったようだ。
「決まったのか?」
「うん、大縄。みんなで縄跳びするの。」
「ほぉ・・・・。」
「じゃ、いっくよー。」
「・・・・・え?」
「せぇーのぉぉぉっ!」
どこから持ってきたのか、と子供の一人が縄を回し始めた。
我愛羅は何がなんだから分からず、飛ぶタイミングを失い、縄に引っかかった。
「我愛羅様、へたー。」
「ちゃんと飛んでよぉ。」
子供達が口々に言い、笑っている。
さすが忍を親に持つ子供達。
それなりに素早い縄の動きにも反応している。
・・・・・鈍ったなぁ・・・・・。
縄のタイミングを計りつつ、自分の反応の鈍さに苦笑した。
気付けば夕暮れ。
「風影様ぁ、また遊んでねぇ。」
「お仕事頑張ってねぇ。」
「ばいばーぁい!!」
子供達は元気に走って帰って行った。
我愛羅は肩で息しながら地面に座り込み、子供達に手を振った。
「気を付けて帰るんだよぉ!!」
は子供達の背中に叫んでいた。
「・・・・元気だな。」
「全くだよねぇ。あんだけ走ったのに、また走って帰ってるし。
子供の元気って底なしって本当だよね。」
「・・・いや、のことなんだが・・・。」
「私?ま、これでも現役の中忍ですから。」
「・・・・俺もまだ現役のつもりなんだが。」
ぶすっとする我愛羅を見て、がケラケラ笑った。
さっと我愛羅の隣に座った。
「・・・・聞いていいか?」
「いいよぉ。」
「どうしてドッジボールはだめなんだ?」
「だって我愛羅様、砂に守られちゃうからゲームにならないでしょ。」
「・・・・鬼ごっこはどうして・・・・?」
「んー・・・・。」
は空を見上げた。
「・・・・思い出しちゃう・・・でしょ?」
「思い出す?」
「・・・・昔の・・・こと。」
に言われ、初めて思い出した。
自分が近づけば、逃げ惑う同い年の子。
何もしていないのに。
どうしても仲間に入れて欲しくて無理強いをしたこともあった。
結果、その中の一人を・・・・に怪我させてしまった。
その怪我の痕は、の足にまだ残っている。
「・・・・・大縄なら・・・みんなでできるしね。」
「・・・・かくれんぼはどうして?」
「んー・・・・内緒♪」
「なんだ、それは・・・。」
悪戯っ子のように笑うにつられて我愛羅も微笑んだ。
「明日も一緒にやろうね!我愛羅様!!」
「・・・・いいのか?」
「まぁ、あまり遊びすぎて仕事溜まっちゃうのも困りモノだけど。」
「いや・・・俺が来ても・・・。」
「当たり前じゃん。」
「・・・そうか。」
はいつもそうだ。
さりげない言葉をくれる。
それがどんなに俺に安堵をくれたことか。
昔は明日などなければいいとさえ思ったのに・・・。
「・・・明日のためにも頑張らねば・・・な。」
「そうそう!子供達も待ってることだしね!!頑張って!!」
「何を言ってる。も手伝うんだ。」
「えー!!!無理でしょ!!」
「大丈夫だ。頭を使うのが苦手な俺でもできる仕事だ。」
「・・・・さっき言ったこと、根に持ってるでしょ・・・。」
「さぁ?」
「我愛羅様の意地悪!!」
くすっと笑った我愛羅の背中に文句を言いつつも、ちゃんと後ろを歩き始める。
それがまた、我愛羅にしてみれば嬉しかったり、する。
それから、午前中に我愛羅は仕事を大半は片付けるようになった。
お昼から夕方まで子供達と遊べるように。
も中忍だからか、ほぼ毎日里にいて、一緒に子供達の相手をしてた。
どこから仕入れてくるのか、は色んな遊びを知っていた。
大縄、綱引き、大玉転がし、せんだみつおゲーム・・・。
いつのまにか、我愛羅は新しい遊びを教えられるのが待ち遠しくなった。
そして、と会うことが待ち遠しくなっていた。
気付けば、風は暖かく柔らかくなっていた。
「今日は風影様いないのぉ?」
「んー、なんか会議だって言ってたよ。」
「エー!!!」
「つまんなぁい!!」
我愛羅に会える事を楽しみにしていた子供達からブーイングが起こる。
「大事な会議だから・・・って。
だからその分私がたっぷり遊ぶから!!」
「しょーがねーなー。」
「ちゃんかぁ・・・。」
「何よ、文句あんの?」
不満そうな子供達にもがにじり寄って行った。
会議は夕方まで続いた。
さすがにみんな、帰ったか・・・。
風影の執務室の窓から眼下にある誰もいない広場を見た。
誰かの忘れ物か、帽子が置いてあった。
・・・・みんな・・・怒ってしまったか?
・・・・今日は何をして遊んだのだろうか・・・。
ここまで考え、ふっと笑ってしまった。
と、丁度そこへ部屋のドアがノックされた。
「入れ。」
「・・・ども♪」
入ってきたのはだった。
「・・・・からここに来るのはめずらしいな。」
「お疲れかなって思ってね。」
「・・・まぁな。」
我愛羅は椅子に座った。
「今日は何をして遊んだんだ?」
「んー?今日はねー・・・かくれんぼ。」
「・・・・前に消去って言ってた遊びだな。」
「よく覚えてるね。」
「ここが違う。」
わざとらしく頭を指した。
「ひっどいなー・・・・。」
が笑った。
その笑いに、我愛羅は気付いた。
「・・・・何か、あったのか?」
「・・・・なんで?」
「・・・・いつも違う。」
「そお?」
「・・・話ぐらい、聞くぞ。」
部屋の中にあるソファへ促した。
が、は動かなかった。
「我愛羅様、あのさ。」
「・・・なんだ?」
「これから、遊ぼう。」
「・・・・?子供達はみな帰ったようだが?」
「まだ遊んでいない子供がここにいるでしょ?」
が我愛羅を指した。
「・・・・悪いが、今日の会議をまとめなくては・・・。」
「いいから!行こう!!」
「お、おい・・・・!!」
は戸惑う我愛羅に手裏剣を投げ、砂を発動させ強引に外に連れ出した。
渋々外へ出た我愛羅が連れてこられた場所は広場ではなかった。
里から出て少し歩いたところにある荒野だった。
「今日はこんなところで遊んだのか?」
「・・・・ううん。広場。」
「なら、どうしてここへ・・・?」
「・・・・・。」
「・・・・?」
数歩前を歩くの反応がない。
暫くその沈黙に付き合っていた我愛羅だった。
だが、次第にイラついてきた。
・・・・こんなことしているヒマはないんだが・・・・。
さっきの会議の決定事項をまとめなくてはいけない。
それは少なからず、我愛羅にとって気の重い仕事だった。
仕事がめんどくさいワケではない。
会議で決まった決定事項、が、気が重いのだ。
「・・・・悪いが・・・。」
「よし。かくれんぼ、しよ。」
「・・・・え?」
急に立ち止まったは振り返った。
「我愛羅様が鬼ね。」
「おい・・・。」
「我愛羅様、10数えて。その間に私が隠れる。
我愛羅様は隠れてる私を探すの。忍術とかは禁止。分かった?」
「・・・・分かった。」
を見つければお仕舞い。
それならそんなに時間はかからないだろう。
我愛羅は目を閉じてゆっくり数え始めた。
「1・・・・2・・・・3・・・・。」
数えている間、の気配が目の前から消えた。
「4・・・・5・・・・6・・・・7・・・・8・・・・9・・・・。」
−−我愛羅様−−
突然、耳元での声が響いた。
数えるのを止め、目を開ける。
そこにの姿はない。
「まだ数えている途中だぞ。」
−−我愛羅様・・・
さっきの会議、全て、我愛羅様が決めたの?−−
会議・・・・?
は何を言っている?
−−里のくの一の誰かが・・・風の国の大名に嫁ぐって話・・・本当なの?−−
「どうしてお前が知っている?」
−−・・・・・本当なのね・・・・−−
会議の内容。
それは、この国の大名が里から誰か嫁によこせと言うのだ。
憶測に近いが、我愛羅が風影となってから温和になりつつある里に危機感を持ったのだろう。
国を裏切る準備をしているのではないか・・・と。
それで大名が考えだしたのが、嫁をよこせ、だ。
人質のつもりだろう。
もちろん、我愛羅は聞くつもりはなかった。
しばらくの間、ずっと取り合わなかった。
だが、誰か一人を出すことで丸く収まるのなら、任務のつもりで出せばいいという答えが多かった。
下手に問題を大きくしても里にはなんの利益がない。
我愛羅は渋々頷くしかなかった。
「さっきの会議の内容は公開しないはずだ。
どうしてが知っている?」
−−・・・・・・・・・−−
「関係者しか知らないはずだ。
、盗聴は十分罰せられることだぞ。」
−−・・・・関係者・・・ね−−
の声は笑っていた。
−−じゃあ、私は十分な関係者ってとこかな−−
「何を言っている?」
−−さっき、私のところに任務が回ってきた−−
「それがなぜ・・・・。」
−−私に行けってさ。大名のもとへ−−
「・・・・・!!」
まさか・・・だってあれは・・・。
国の法律で16歳以上でないと婚儀は認められない。
それに、下手に術が漏れては不味いということで、
16歳以上の中忍以下ということだったじゃないか・・・。
はまだ15・・・。
だから、渋々なりとも、承諾したんだ・・・・。
−−・・・・来週には16歳よ−−
「・・・・・!!」
−−ねぇ・・・1つだけ教えて・・・。
それだけ教えてもらえれば・・・。
私、ちゃんと、任務を遂行するから。
全ては・・・・我愛羅様が決めたことなの?−−
「違うっ!!」
−−本当に?−−
「断じて俺じゃない!
俺は反対した!だが、里の老いぼれたちが・・・!!」
−−・・・・信じていい?−−
声が震えていた。
・・・・泣いてる。
・・・・が、泣いてる。
「俺は反対したんだ!!当然今でも反対してる!!」
−−・・・ありがと・・・・−−
「出て来い!!!
ちゃんと俺の前で話せ!!」
我愛羅は辺りを見渡した。
見渡しのいい荒野。
隠れられそうな場所など・・・ない。
「!!出て来い!!」
−−・・・最後に・・・1つだけ言いたいこと、あるんだ−−
「最後だなんて言うな!!
そんな任務、今から取り消してやるからっ!!」
−−・・・我愛羅様・・・ずっと・・ずぅぅぅっと・・・好きだったよ・・・・−−
「っ!!!」
の言葉の最後はもう聞き取れなかった。
「っ!!!」
広い範囲まで気配を探った。
だが、どこにも、里の中にも、の気配はなかった。
「・・・・・幻術、使いやがったか・・・・。」
小さく舌打ちをする。
「おもしろい・・・・。」
我愛羅は目を閉じた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10。」
目を開ける。
「・・・・さぁ、かくれんぼの始まりだ。」
は大名の屋敷の中にいた。
目の前にある花嫁衣裳をぼー・・・と眺めている。
純白のきれいな衣装。
女の子なら1度は夢見る、花嫁衣裳。
なのに、なんの感動もない。
・・・なんで私があんなクソジジィと結婚なのよ・・・。
胸の内で悪態つく。
私ってまだ15なのに!!
あと3日で16だけど・・・まだまだ若いんだよ!!
なのになぁぁぁんであんな60超えたジジィに嫁がなきゃいかんのさっ!!
どぉせ嫁ぐなら、会議に出席したぐらいの老いぼれが行けばいいじゃない!!
とっくの昔に引退してんだし、漏れる術なんか1つもないっつーの!!
きっと若いことを僻んでるんだ。絶対そーだ!!!
ここまで考え、目を閉じる。
蘇るのは、あの日のかくれんぼ。
幻術にかかってくれたおかげで最後の会話ができた。
風影のいうのに、簡単に術にはまった。
それだけ、心を許していてくれたということ。
「・・・・我愛羅様・・・。」
涙が浮かんだ。
我愛羅様が全てを決めたんじゃない。
もう・・・それだけでいいや。
これ以上、我愛羅様を悩ませるのはかわいそうだしね。
子供のとき、逃げてしまった私なりの罪滅ぼし・・・・・かな。
溢れそうになる涙をぐいっと拭いた。
「何を泣いている。」
背後から声がした。
振り返れば・・・。
「が、我愛羅様っ!!!!」
「見つけたぞ。今度はが鬼だ。」
「はっ?!つか、なんでここに・・・!!!」
「かくれんぼだ。」
「はぁっ?!!」
「10、数えろよ。」
「あっ・・ちょっ・・・!!」
動揺しているを気にせず、我愛羅は姿を消した。
は慌てて部屋を飛び出した。
意識を集中して、屋敷内の気配を探る。
・・・・・・・・いたっ!!!
我愛羅の気配はすぐに見つかった。
なぜなら、まるで居場所を教えるかのように気配を存分に発散しているからだ。
我愛羅は大名の部屋に向かっていた。
・・・・ったくっ!!
人が感傷に浸ってるときに・・・!!
なんなのよ!!あの風影はぁぁっ!!!
急いで大名の部屋へ向かった。
追いついたとき、我愛羅は部屋のドアを乱暴に開け放っていた。
「何事っ!!」
「砂隠れ風影の我愛羅、失礼する。」
「か、風影じゃとっ!!」
突然の我愛羅の登場に、部屋の中にいた人たちが慌てている。
「この度そちらの出した依頼だが、なかったことにしてもらう。」
「なんじゃと・・・!!」
「前の風影なら素直に承諾したと思うが、俺はそうはいかない。
里を守るのが風影としての仕事。里の忍は俺が守る。」
「・・・そんな勝手なことをして・・・!!」
「元々はそちらが里を疑ったことが原因の依頼だろう。
俺たちには疑われる要素はどこにもない。
従う意味もない。」
「・・・・・!!」
「風影が変わったからと言ってすぐに裏切りを考えられては困る。
そんなに信用されていないのなら、こちらも黙ってはいない。」
「・・・・・・。」
「言いたいことはそれだけだ。は連れて帰る。邪魔した。」
言いたい事を言って、大名を黙られた我愛羅は踵を返した。
と、入り口で佇んでいると目が合った。
「行くぞ。」
「え・・・ちょっ・・・!!」
今度は我愛羅が有無を言わせずにを連れ出した。
我愛羅は屋敷を出て、里に戻る道を走っていた。
その後ろからが押しかけている。
いつかと同じ夕焼け。
「ちょっ・・・我愛羅様!!」
「なんだ。」
「なんだじゃないでしょ!!いいの?!あんなことして!!」
「いい。」
「いいって・・・そんな簡単に言わな・・・。」
「簡単に最後だなんて言うな。」
は言葉を遮られた。
「俺はが行くと知っていたら、絶対に承諾しなかった。
それなのには勝手に任務を受けて・・・。
探しまわった俺の身になれ。」
ぶすっとした我愛羅はの手を取った。
「もうかくれんぼはしないからな。」
手をつないで歩き始める。
・・・・私だったら・・・承諾しなかった?
・・・・私だから?
・・・・・・それって・・・・。
「あの・・・我愛羅様・・・・もしかして・・・。」
「なんだ?」
「我愛羅様って・・・私のこと・・・好き・・・ってこと?」
我愛羅の足がぴたっと止まり、振り返った。
は唾を飲み込んだ。
「この気持ちが好きと言うのか知らんが・・・。
お前がいないとイヤだ。
毎日会わないとイヤだ。
お前が他の男と結婚するなんてイヤだ。
お前は俺のそばにいればいい。
それだけだ。」
我愛羅は顔を赤めることも無くスラスラ言った。
言い終わると、また歩き始めた。
が、つないでる手に引っ張られて前に進めない。
「・・・・どうした?」
振り返ると、がしゃがみ込んでいた。
「・・・・我愛羅様・・・ストレートすぎ・・・。」
の耳まで真っ赤になっていた。
「・・・。
俺は・・・普通の人と違ってそういう感情に鈍く、それを現す言葉を知らない。
だから・・・うまく伝わらなかったり、表現できないかもしれないし、理解できないかもしれない。
それでも・・・の言ってくれた言葉は・・・・嬉しかった。」
我愛羅はの前にしゃがんだ。
「こんな俺だが・・・そばにいてくれないか?」
そっと手をのばし、の髪に触れた。
その手は壊れ物を扱うように優しかった。
「・・・・それだけ表現してくれれば、十分よ。」
「・・・いてくれるか?」
「・・・我愛羅様、砂、動かないようにして。」
「あ?あぁ・・・。」
我愛羅は言われた通りに砂へチャクラを送るのを止めた。
と、同時に・・・。
が顔をあげ、我愛羅の首に手を回し・・・。
唇を重ねた。
「・・・・・・なんか・・・気持ちいいぞ・・・・?」
「・・・・これは恋人同士がするキスって言う行為よ。」
「・・・じゃあ・・・いいんだな。」
「・・・・恋人って意味は知ってるのね。」
「俺は風影だ。」
「・・・・・・そうだね。」
「・・・・お前・・・俺のこと、バカにしてないか?」
今度は我愛羅がの首に手を回し、引き寄せた。
我愛羅は午前の仕事を終わらせ、広場に向かった。
そこにはすでに子供達とが待っていた。
「風影様ぁ!!」
「お疲れ様ぁ!!」
我愛羅を見つけるとかけよってくる子供達。
「・・・今日は何をするんだ?」
「まだ決めてないんだぁ。」
「そうか・・・。」
「風影様は何したいー?」
「お前達がしたいことでいい。」
「んー・・じゃあ、かくれんぼ!!」
「・・・・・え?」
我愛羅の動きが止まる。
「最近ずっとかくれんぼ、してなかったもん。」
「・・・それは・・・だめだ。」
「えー!!なんでもいいって言ったじゃん!!」
「・・・・・・なんとかしてくれ・・・。」
我愛羅はに助けを求めた。
「んー・・・しょうがないでしょ。」
「・・・・・・・。」
「はい、決定ー!!鬼はー・・・風影様ねぇ?!」
「・・・・俺なのか・・・。」
「10数えてねー。」
「隠れろー!!」
返事をしない我愛羅を置いて、子供達は一目散に走り出した。
我愛羅は諦めて数を数え始める。
「・・・7・・・・8・・・・9・・・・10。」
数え終え、目を開けると・・・・がいた。
「・・・隠れないのか?」
「だって、淋しいでしょ?」
「・・・・・?」
不思議そうな我愛羅を見て、が笑った。
「今まで友達がいたはずなのに、数え終わって目を開けたら・・・誰もいない。
そんなの、淋しいでしょ?
初めて遊んだ日にかくれんぼをしなかった理由はそれ。
まぁ、そういう遊びなんだけど・・・。」
の目が優しさで溢れていた。
きっと、は子供の頃のことを気にしているのだろう。
「・・・・もう・・・大丈夫だ。」
「・・・・本当?」
「・・・・がいてくれるから。」
「・・・・そっか。」
自然と笑い合っていた。
「・・・じゃ、二人で探すか・・・。」
「そーだね。」
どちらからともなく、手をつなぐ。
「・・・・。」
「なぁに?」
キス。
「お前だけは俺の前からいなくなるなよ。」
「・・・・我愛羅様の・・・バカ・・・・。」
満足顔の我愛羅を顔を真っ赤にしたがにらんだ。
「アー!!!!風影様とねーちゃんがチューしたぁ!!」
「エェェェ!!」
「エッチィィィ!!」
「キャアァァァァ!!」
「こ、こら・・・!!そういうことは大声で言わないの!!」
「・・・・これからはかくれんぼをしないとキスはできないのか・・・。」
突然騒ぎ立てた子供達を慌てて宥め始めたを見て、我愛羅が呟いた。