神様なんて信じる性質じゃないけど。







・・・・これで許してよ、ねぇ、神様。










































この手に気付いて
















































紅茶のいい匂いがした。
がそれをトレイに乗せて、ゆっくりと運んでくる。
トレイの上でカップが2つ、カタカタ鳴ってる。


その様子を心配そうに見ている俺。
は慣れた様子でカップを俺の前に置いた。


「今日はハーブティーにしてみました。」
「いただきます。」


その笑顔にこっちもつい微笑み、紅茶を一口飲む。
も俺の前に座り、俺の一言を待っている。


「ん、おいしい。」
「よかった。」


嬉しそうに笑ったも紅茶に口をつけた。
が動くと、俺の目は心配そうにを見つめる。


「そんなに心配?」
「あぁ・・・ごめん。もうクセなんだよね。」


に指摘され、つい苦笑した。
不意に、の手が伸びてきた。
手は俺の頬に触れた。


「また痩せた。」
「んー・・・・男の一人暮らしなんて質素なもんだからね。」
「だからあのまま一緒に住んでればよかったのよ。」
「そういうわけにもいかないでしょ。」


俺、27歳。
、23歳。
そんな男女が一緒に暮らし続けてたら・・・・俺が辛い。


いや、そんなことを言ってるんじゃなくて。
俺はとそういう関係になりたくて、一緒に住んでたわけじゃない。


時計を見上げた。
もうすぐ11時。


「さ、。そろそろ時間だ。」
「うん、分かった。」


そう言って、は用意してあったバッグを手に取った。
そのバッグを取り上げる。


「危ないから。」
「カカシは心配症だなぁ。」


くすくす笑う
その笑顔は忍としての俺の心を癒してくれる。
普段は大きな目が笑うと線になってしまうぐらい細められて。
口紅も塗っていないのに紅い唇がくすくす笑い声を聞かせてくれる。


「忘れ物は?」
「ないよ・・・・あ、杖。」
「それはいらない。」


立てかけてあった白い杖を取ろうとしたの腕を自分の腕に絡ませた。


「これで十分。」
「じゃ、このまま買い物に行こうか!!」
「病院が終わったらね。」
「・・・・はーい・・・・。」


の足元に気を配りながら、俺たちはの部屋を出た。




























は目が見えない。
15年前のある事件がきっかけで、は両親と視力、両方を失った。
当時8歳だったを待ち受けていたもの。
それは終わりの見えない真っ暗で無機質な入院生活。
視力を失っているを施設に入れられるわけがない。
治療と称して、は退屈な入院生活を余儀なくされた。



その3年後、を引き取った。
俺が15歳、が11歳。



よっぽど嫌だったのか、差し出した手を迷いなく掴んだ
病院から俺の家まで片時も離れようとしなかった。
視力を失ってるから・・・それだけじゃない。


震える小さな手から伝わる感情。


『一人にしないで。一人はいやなの。』

『怖い、淋しい』


泣きそうになった。
涙を堪えるのに、必死だった。


「・・・・どうしたの?」
「・・・・・・なんでも・・・ないよ。」
「・・・だって・・・・泣いてるよ。」


伸ばされた手。
頬に触れる暖かい小さな手。


見えるわけがないのに。
その指はちゃんと俺の頬を伝う涙を拭った。


「・・・・・・・ごめん・・・・本当に・・・・ごめん。」
「・・・・・・?」
「俺が・・・・を守るよ・・・・許してとは・・・言わない・・・・。」
「・・・・ずっと一緒にいてくれる?」
「・・・・・・うん・・・・・約束だ。」
「うん。」


泣きたいのはのはずなのに。
は笑ってくれた。








































「カカシ?どうしたの?」
「ん?何が?」
「ぼーっとしてたでしょ。」
「んー・・・ま、気にしないの。」


待合室のベンチで隣に座ってるの頭を撫でた。
光を失っているの目が不思議そうに俺を見つめている。
その目は何も写していない。


写していないのに。
は俺の心の揺れに敏感で。
視力を失った代わりに、人の心を読む力を得たんじゃないか・・・って思う。


さん、どうぞ。」


看護婦に呼ばれ、二人同時に席を立った。
の腕を取って、診察室に入り、を座らせた。
軽い挨拶をした後、の目をライトで照らす。


「・・・・・・・・・どうですか?」
「・・・・・・・うん。」


俺に問いかけに、医者はライトを消して頷いた。


「以前と何も何も変わらず・・・ってところかな。」
「・・・・・・そうですか。」


見るからに落ち込んでしまう俺。


「我々の力が及ばなくて・・・・申し訳ない。」
「いえ、先生のおかげで色々と助かってます。」


申し訳なさそうに呟く医者に笑って見せた。
色々なアドバイスをもらってるしね。
の手をとり、自分の腕に絡ませた。


「あ、カカシさん、ついでにこの前の傷・・・。」


看護婦が何かを言いかけ、それを手で遮った。
看護婦もすぐに気付き、頭を下げた。
は遠くを見ていた。




















「ねぇ、カカシ。」
「んー?」
「カカシ、怪我してるの?」
「なんで?」
「だって看護婦さんが・・・・。」
「あぁ、アレ?仕事関係のことだよ。」
「カカシ・・・・危ない仕事してるの?」


心配そうなの顔に、つい苦笑した。


「大丈夫。は何も心配しなくていい。」
「でも・・・・・。」


不安そうな
の頬に手を添えた。


は目が治ることだけを考えるんだ。それ以外は心配いらない。俺は大丈夫。」
「・・・・・・。」
「俺が嘘言ったこと、ある?」
「・・・・・あるけど・・・・・信じる。」
「・・・ん・・・・・ありがと。」


不満そうにしてるの頭を撫でた。
ほっとしてることを気付かれないように。




には言っていない。
俺が忍をしていることを。
だから、は普段俺が何をしているのか知らない。


知らせようとは思わない。


なぜなら。


が視力を奪われた原因は、俺に関係があるから。













































当時12歳だった俺は上忍になりたてだった。
その日、里の近くに他の里の忍がスパイしに来ているとの情報が入った。
当然、厳戒体制を取り、数名の上忍が見回った。
最初にスパイを発見したのは俺だった。


そして、戦闘。


他里の忍の予想外の強さに苦戦を強いられた。
俺は合図を出し、仲間が到着するまで一人でなんとかしなければならなかった。
そんなとき。


他里の忍は1つの家へと逃げ込んだ。
チャンス。
このまま家ごと吹っ飛ばしてやる。


印を結び、チャクラを練りこむ。


そして、家もろとも破壊した。
忍の遺体を確認しようと崩壊した家に足を踏み入れたとき。


忍ではない、別の遺体を発見した。
抱き合う若い夫婦に大事そうに抱かれた幼い少女。


頭の中が真っ白になった。
俺は関係のない家族を巻き込んだ上に・・・・。


「・・・・・ぅっ・・・・・。」


少女だけが微かな反応を見せた。
すぐさま俺は少女を抱きかかえ里に戻り、医療班に預けた。
そのまま現場に引き返し、来ていた仲間に事情を説明して。
巻き込んでしまった夫婦の遺体を手厚く埋葬した。



そして、少女・・・・は両親と視力を失った。




仲間は仕方のないことだ・・・と言ってくれた。
あのままスパイを生かしていたら里の情報が外部に漏れるかもしれない。
彼らは忍ではなかったが、里を守った英雄だ、と。


何かしてあげたかった。
でも、何かしてあげたくても、当時の俺は12歳。
8歳のに何をしてあげられる?


ただ見守ることだけ。


たまに様子を見に来ると、は泣いていた。
小さな肩を震わせて。


守りたい。
俺のこの手で。


視力を取り戻してあげたい。
空の青さを忘れる前に。



















そして15歳になったとき。
11歳のを引き取った。


当時の火影・四代目にも納得してもらって。
俺との生活は始まった。


最初は色々と苦労したけど、次第には部屋の中なら自分で歩けるようになった。
それだけじゃなく、部屋の掃除とか、洗濯とか、料理とか。
自分一人で生活するだけの力を得た。












































「カカシ、今日の夕飯はどうする?」
「あー・・・・ごめん。仕事が・・・ね。」
「・・・・そっか。」
「家まで送るよ。」


夜から任務。
その前に自分の家に戻って用意をしなくちゃならない。


「ねぇ・・・・また一緒に暮らそう?」
「・・・・・・・。」
「なんか痩せたみたいだし・・・・心配。」
「・・・・大丈夫。安心して。」


笑って見せたが、内心では『冗談じゃない』と呟いている。










と一緒に暮らし始めて5年がすぎた時。
俺は危うくに手を出しかけたことがある。
16歳のが寝入ってるとき、唇を奪ってしまった。
唇を重ねているときに、我に返り、慌てて家の外に飛び出した。


何をやってるんだ。
俺はこんなことをするためにを引き取ったんじゃない。

同時に俺は気づいてしまった。
自分の中にある、奇妙な心情に。

笑っている
すぐ怒る
何を見ているのか、遠い目をしている


全てが愛しい・・・。


愛しい?


慌てて、感情に蓋をする。
感情に、思考に蓋をするなんて、朝飯前だ。



だけど・・・。



16歳だというのに、大人な色香の漂う
一緒にいて、ここまで何もしなかったのが奇跡に近い。


だめだ。
明日にでも家を出よう。
出ないと、俺は・・・・・・。



をさらに傷つけることになる。





翌日、怒るに適当に言い訳して別々に暮らすことにした。












家の中に入るを見送って、俺は俺の家に帰る。
空を見上げれば、オレンジ色に染まっている。


認めちゃならない自分の気持ち。
押し殺さなきゃならない気持ち。



目を閉じた。
考えたくない答えから目を閉じるように。



できれば・・・・今のままがいい。
には悪いが・・・今のままがいい。


何も見えない、知らないを・・・守り続けたい。















































大変なことになった。
綱手様が帰って来た。
里一番の医療忍者。


なんてこった。


正直な気持ちはそれだった。
きっと、綱手様ならを治せる。
そしたらは視力を取り戻して。
俺は・・・・。


そんなことを考えていたら。
事情を知っている・・・だけど俺の気持ちは知らない・・・・仲間たちがを連れてきた。
俺はイタチから受けたダメージがまだ完ぺきには回復してなくて。
重い体を引きずってのいる診察室に入ったときには。
もう治療が終わっていた。


「・・・・・これで大丈夫。1週間後には前のように元に戻る。」
「ありがとうございます!!」


目を閉じながらも泣きながらは礼を言っている。


あーあ。
終わっちゃったよ。
どーすんのよ、コレ。


何も考えられなかった。
ただ呆然とそれを眺めていただけ。


「・・・・カカシ?」


包帯を巻かれ終わったが俺のほうを向いた。
俺はびっくり。
だつてここに来てまだ一言も話していないの。
にはすぐ分かったのか。


「見て!私、視力戻るって!!」
「・・・ん、そーだね。」
「もうカカシの腕に捉まって通院することも、小さな石につまずいてカカシに助けてもらうこともないのよ!」
「・・・・ん。」


の言葉が胸に刺さる。
要は、もう俺は必要ないってこと。


「包帯は取るなよ?それに消毒も忘れずにな。」
「はい!!」


あーあ、ったら俺の気持ちも知らずに元気に返事なんかしちゃって。
笑っちゃうよ、本当に。










は嬉しそうに鼻歌なんか歌いながら料理を作ってる。
俺はそれを椅子に座りながら・・・・眺めていた。



どうする?
明日、の包帯が取れる。
が視力を取り戻す。


それだけだったら俺だって鼻歌歌ってる。
そうじゃないから悩んでる。


俺はから両親を奪い、視力までも奪ってこの15年不自由させてしまった。
恨まれても仕方がない。


黙っていれば、ばれないかもしれない。
全ての謎を闇に葬り去ることだって出来る。


でも・・・・それはを騙すことになる。


騙したくない。
大切にしたい。
俺の全てを受け入れてほしい・・・。


そんな願いをする資格、俺にあるのか?
俺の役目は視力を失ったを守ることだけ。


俺の役目は終わった。
それなのに、その後も一緒にいることを願うなんて・・・・。


どうする・・・どうする・・・どうする・・・・。




・・・。」
「んー?何?もうおなか空いちゃった?」
「聞きたいことが・・・あるんだ。」
「ちょっと待ってー。後少しで夕飯できるから。」


笑いながら鍋をかき回しているの手を止めた。
にぎってる手に力が入る。


「カカシ?」
「・・・・1つだけ・・・・答えて。」
「どーしたの?改まっちゃって。」


が火を止め、俺に向きなおした。
いつものように微笑みながら、俺の頬にふれる。


暖かい、手。
昔と変わらない、手。


愛しい、手。


「15年前のこと・・・・覚えてる?」
「どうしたの?急に・・・。」
「いいから、答えて。」


いつもと違う俺。
声が震えそうだ。


「・・・・・はっきりとは覚えてない。15年も前のことだもの。だけど・・・・・。」
「・・・・だけど?」
「1つだけ・・・・覚えてる。」
「・・・・それは・・・・何?」


聞くのが、怖い。


「腕に・・・青い何かを纏った少年が・・・・いたこと。」


やっぱり。
は覚えていた。
俺がスパイの死を確認するために踏み込んだ瞬間を。
いつスパイが現れてもいいように雷切を準備してあったことを。


その少年は、15年前の、俺だ。


「・・・・恨んでる?」
「・・・・・・。」
「彼のこと・・・・恨んでる?」


頬に当てられてる手を握る。


お願い、頷かないで。
でないと、俺は・・・・。


「・・・・恨んでる・・・かな・・・・。」


が小さく頷いた。
それを見て、俺は目を閉じた。


「だって・・・・。」
「うん・・・そうだね・・・分かってる。」


それ以上の言葉は聞きたくない。
何も見えないに、そっと唇を重ねた。
は何が起きたのか分からない・・・というような顔をしてる。


「誰よりも・・・・何よりも・・・・が好きだ。」
「・・・・カカシ?」
「・・・・一番、大切だよ・・・・・・。」


それだけ言って。
何かを言いかけたを残して。
俺は姿を消した。


の前で初めて術を使った。
それがこんな形で・・なんて、ね。

























15年前、俺はの両親と視力を奪った。
15年間、俺はを守り続けた。
そして今、は視力を取り戻す。


は言った。
あの少年を・・・・俺を恨んでいるって。


黙っていれば、俺だと分からないかもしれない。
ずっと一緒にいられたかもしれない。


だけど。


罪悪感に押しつぶされそうになる。
が笑うたび、胸が痛い。


あのとき、俺が・・・。


これは逃げてる。
自分でもはっきりと分かる。
から、逃げてる。


だけど、同時に俺は。


この世で一番大切な人を失ったんだ。
しかもその人から恨まれてる。
この先、決して手に入ることもない。


神様なんて信じる性質じゃないけど。


・・・・これで許してよ、ねぇ、神様。












































風の便りでの視力は順調に治ってる。
それに、綱手様の斡旋で、里のどこかの店で働いてるそうだ。


俺はあれ以来、会っていない。
様子すら見に行っていない。


あの日、突然いなくなったは里中俺を探したらしい。
何も見えないのに、たった一人で。



ありがとう、
だけど、俺はそこまでして探し出すほどの男じゃない。
から大切なモノを奪ったんだから。
しかも、事実を告げられずに逃げてしまった臆病な男なんだから。





小鳥が頭上を飛んでいる。
緊急招集。
任務だ。


あーあ・・・綱手様も人使い荒いよね。
傷心にふけってる青年にそんな時間さえ与えないなんて。


重い腰を上げて火影室に向かった。













「はたけ カカシ。入ります。」


火影室のドアをノックして、室内に入る。


「おぉ、来たか。」
「で、今回はどんな任務で?」
「そう慌てるな。」
「緊急収集かけたんでしょーに。」


くっくっと笑う綱手様に呆れ顔。


「ある人物をとある場所まで案内してほしい。」
「どこまで?」
「依頼人は両親に会いに行きたいそうなんだが・・・・。」
「分からないんですか?」
「その場所はお前しか知らん。他のヤツはみな里の英雄になっていてな。」
「・・・・え?」


俺しかしらない?


綱手様の合図に、誰かが招きいれられた。


まさか。


「カカシ、しっかり案内してやれよ。」


振り向くと、そこにはが立っていた。



















目の前には崩れた廃屋。
は持ってきた花束を手向けた。
手を合わせてる。


その様子を、遠くから眺める。


ここから、始まった。
全ては俺の手から。


そして、今、俺の手でをここに連れてきている。
なんて皮肉・・・なんでしょうね。



「・・・・・・・・・任務は終了しました。里まで送りましょう。」
「カカシに・・・・話したいことがあるの。」
「もうすぐ日が暮れる。急ぎましょう。」


の顔を見ないように目を閉じた。


「・・・・・私、カカシにずっと黙ってたことがあるの。」
「・・・・・・。」
「あのときの少年って・・・・カカシでしょ。」
「・・・・・・!!」


驚いてを見れば。
は笑っていた。


「やっぱり、ね。」
「・・・・・いつから・・・・・。」
「病院に・・・迎えにきてくれた日から。」


そんな・・・。
じゃあ、はずっと知ってて・・・。


「初めてカカシが手を差し出してくれたときから・・・・。
 あのとき、助け出してくれた人の手だって・・・すぐに分かったわ。」
「そんな・・・・じゃ・・・どうして・・・・。」


両親と視力。
一瞬で奪った俺と・・・・どうして・・・・。


「・・・・泣いてた・・・から。
 カカシが・・・・あのとき泣いてたから・・・・。」


申し訳なくて、自分が惨めで、許せなくて。
隣のと手を繋ぎながら、流した涙。


「確かに入院中は恨んだ・・・・カカシが私から両親を奪ったって・・・。
 だけど・・・カカシが術を使わなかったら、どのみち私たちは殺されてたわ。」
「・・・・・・・。」
「・・・・カカシは泣いて謝ってくれたもの・・・・。
 それに、約束もしてくれた。それだけで十分よ。」
「・・・・・・・・・・。」














































「・・・・・・・ごめん・・・・本当に・・・・ごめん。」
「・・・・・・?」
「俺が・・・・を守るよ・・・・許してとは・・・言わないけど・・・・。」
「・・・・ずっと一緒にいてくれる?」
「・・・・・・うん・・・・・約束だ。」
「うん。」







12年前の、約束。
8歳の少女から両親と視力を奪った罪悪感で泣きながらした約束。
理解していないと思っていた。
11歳の少女に。

だけど、ちゃんと理解していた。
しかも、許してくれていたんだ。










































「綱手様に言われたわ。
 私が視力を失ったのは・・・・カカシのせいじゃなくて・・・。
 私の心理的なものだ・・・・って。
 目の前で両親を殺されたのがショックで視力は失ったけど。
 私が取り戻そうと思えば・・・・いつでも取り戻せたんだって。
 でも・・・・。
 視力を取り戻したら・・・・カカシがいなくなっちゃう気がして・・・・。
 カカシのそばにいたかった・・・。
 ずっとずっと・・・・約束したように・・・。
 そばにいてほしかった・・・・。
 だから、私は・・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・ごめん・・・・なさい・・・・・・。」


涙をためたの手が頬を撫でた。
優しく、労わるように。


「ずっと・・・・カカシが悩んでたの、知ってる。
 ずっと罪悪感でいっぱいだったの・・・知ってた。
 それでも・・・言い出せなかった。
 視力なんかより・・・。
 今の私にとって、カカシを失うことのほうがずっと怖かった。」


触れていた手を引き、顔を覆って泣く


「だけど・・・もう限界・・・。
 カカシを悩ませたくない・・・。
 だから・・・・視力を取り戻すことにしたわ・・・。
 そして・・・カカシに・・・・謝りたかった・・・・。」


顔を覆ったまま、が俺に背を向けた。
その背中は震えていた。


「私のエゴでずっとカカシを苦しめていたの・・・。
 私のそばにカカシを縛り付けていたの・・・。
 本当に・・・・本当にごめんなさい・・・・・。」
「・・・・・・。」
「視力を取り戻して・・・カカシを自由にしてあげたかった・・・。
 私なんかに縛られずに・・・。」


震える背中に手を伸ばした。
そのまま後ろから抱きしめる。


が・・・・好きだ。
 好きだから・・・・言えなかった。
 もし・・・本当のことを全部話してしまったら・・・・・それは楽かもしれない。
 だけど・・・・出来なかった。嫌われたくなかった。
 ・・・・・・手放せなかった・・・・。」
「・・・・・カカシ・・・・・。」
「もし・・・・もし・・・・。
 が許してくれるのなら・・・・・。
 これからもずっと・・・・俺に守らせてほしい・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「今度こそ・・・償いとか・・・そんなんじゃなくて・・・。
 心から・・・守りたいんだ・・・。」


そっとの髪にキスをした。
がそっと振り向いた。


「・・・・・今度こそ・・・・約束してくれる?」
「約束なんて・・・・余るぐらいにしてあげるよ。」


振り向いてるにキスした。
優しく、優しく。
震えているを抱きしめながら。

 
「・・・・ねぇ・・・カカシ。
 私、一番最初に・・・・カカシを見たかったの。
 いつも触れる顔に、サラサラの髪の色。
 どうやって笑うのか・・・知りたかったの。
 それに・・・・あのとき男の子が・・・・どんな大人になってるか・・・・。」
「じゃあ・・・これからじっくりと見てちょうだいよ。」
「うん・・・・。」
「もう、飽きるぐらい・・・・ずっと見てて・・・・。」
「・・・・・・うん。」
「ずっと・・・・・一緒だ・・・・。」


もう何も気にすることはない。
何にも咎められる必要はないんだ。


心のままに、抱きしめていい。


色んなものを見せてあげたい。
15年間、ずっと暗闇にいた君に。
色鮮やかな世界の姿を。


二人で、見に行こう。

















33000Hitのともりん様のリクエスト!!
内容は「カカシでヒロインは一般人。原因不明で失明中(!) 物凄い美人で、性格もまじめで優しい。」でした。
色々山田に都合のいいようにリク内容を捻じ曲げちゃった・・・ごめんなさい。
私の中では美人なんです!!ものっそい美人!!
だけど、それを書くタイミングがなかったんです・・・・。
いつもたくさんのチャクラをありがとうございます!!
これからもこんな山田ですが、仲良くしてちょ♪