は俺のモノ。
勝手にそう思っていた。
まだ、お互いの気持ちも確認していないのに・・・。
嫉妬 〜幼馴染〜
我愛羅はいつものように里から離れた高台で寝転んでいた。
ここから見る景色が好きだから。
でも、それだけではない。
ここにいると、必ず自分を探して追いかけてくる人物が来るから。
「我愛羅ぁぁぁ!」
遠くからの声がした。
「ここにいる・・・。」
の声を聞いていつものように返事をする。
内心は心浮かれているのに・・・。
「やっぱここにいたん・・・・っだぁぁぁぁぁぁぁ!」
が前のめりに倒れこんだ。
地面がどんどん近づいてくる。
咄嗟に目を閉じる。
「・・・・・・?」
が、いつになっても痛い衝撃が来ない。
目を開けると、の体をそっと砂が支えていた。
「・・・・相変わらず見事なドジっぷりだな・・・。それでも下忍か?」
我愛羅はさっきの体勢のまま、目だけをに向けている。
「助けてくれたのはありがとう。でも、一言多いのよ、我愛羅は。」
は体勢を戻し、我愛羅の隣に座った。
「で、なんの用だ?」
「べっつに?用事がないと我愛羅を探しちゃいけないわけ?」
「・・・・そんなこと一言も言ってない。」
この会話も毎度のこと。
でも、我愛羅にとっては一番うれしい言葉。
里のみんなは我愛羅に恐怖し、近づこうとはしない。
しかし、幼馴染のだけは我愛羅の事情を知っていて普通に接してくれる。
用もないのに探してくれる。
それは用はないけど一緒にいたいから探してくれる。
一緒にいるのが心地いいから探してくれる。
そういうことだと我愛羅は思っている。
いつの間にかの他愛も無い話題が飛び交っていた。
我愛羅はそれに適当に頷いている。
「ちょっとー。聞いてるの?」
我愛羅の態度に言ういつものセリフ。
「聞いてる。」
我愛羅は目を閉じ、呟く。
「そーいえばさー、昨日、近所の犬がまた脱走したんだよね。名前、なんだっけ・・・。」
「・・・・ポチ太。」
「そうそう!ポチ太!よく知ってるねぇ。」
「お前が前に話してただろ・・・。」
我愛羅はチラッとを見た。
「あ、今バカにしたわね。」
が我愛羅をにらみ、拳を作り我愛羅を殴ろうとする。
が、当然の如く、砂の壁が現れる。
「ったく。この砂は本当に我愛羅が大切なのねー。」
砂の壁にコツン・・・と拳をぶつけ、呆れたように呟いた。
「・・・・俺の意思で・・・。」
「分かってるってば。オートだからしょうがないよ。」
は明るく笑った。
「でも・・・これって外部からの攻撃に反応するんでしょ?
だったら、我愛羅から私に触れる・・・ってことはできるんだよね?」
「・・・・何が言いたい?」
「べっつにー?いつも私ばっか我愛羅に触れようとしてるけど、
我愛羅は私に触れようとしないんだもん。」
「触れる必要があるのか?」
「我愛羅もお年頃だしぃ。」
「・・・・今のはセクハラ親父みたいな発言だぞ。」
「・・・・うっさいよ・・・。」
しばしの沈黙。
「ぷっ・・・・。」
最初に噴出したのはだった。
噴出したら止まらなくなったのか、笑い転げている。
「何がそんなにおもしろい?」
「だっ、だってぇ。我愛羅の口からセクハラって言葉が出るとは思わなかったんだもぉん!」
笑いながら言い、更に自分で言ったことがおもしろかったのか笑いが倍増している。
「・・・・ふっ・・・・・。」
自然と我愛羅の口元が微笑んでいた。
我愛羅の一番好きな一瞬。
あらかた笑い終えたはふと、腕につけている時計を見た。
「あ、やだ。もうこんな時間。戻らなきゃ。」
は立ち上がった。
気付けば空は夕日に染まっている。
「・・・そうだな。」
「我愛羅も一緒に戻ろう?」
「俺はもう少しここにいる。」
「・・・・そっか。」
は淋しそうな眼をした。
「・・・じゃ、また明日ね。」
は我愛羅に手を振り、我愛羅が頷くのを見て去って行った。
(本当は・・・・。)
我愛羅は目の前に手を持ち上げた。
(に・・・触れたい。だけど・・・・・。)
手を握る。
(触れたら・・・・を傷つけてしまいそうだ・・・・。)
握った拳を額に落とし、目を閉じる。
(一緒に里にも戻りたい。でも、そんなことしたらも白い眼で見られてしまう・・・。)
一人夕日に照らされる我愛羅の姿は泣いているようにも見えた・・・。
最近、の様子がおかしい。
いつものように高台まで我愛羅を探しに来るまでは変わらない。
だが、いつもの時間より里に戻る時間が早まった。
そして・・・。
「我愛羅も一緒に戻ろう?」
と、言わなくなった。
(俺に気を使ってるのか・・・?)
我愛羅はそっとの顔を見つめた。
「あ、そろそろ戻るね。」
今日もだ。
は空が赤く染まる前に帰ってしまう。
「じゃ・・・また明日ね。」
まただ。
今日も言ってくれない。
(いっそのこと、一緒に里に戻るか?・・・いや、そんなことしたら・・・・。)
我愛羅は考え込んでしまい、頷くのを忘れていた。
「我愛羅?」
「・・・あっ、すまん・・・・。明日・・・な。」
「あ、うん。じゃね!」
は笑い、我愛羅に背を向けて去ってしまった。
我愛羅の一番嫌いな瞬間。
我愛羅の許を去っていくの背を見送る瞬間。
また一人になる瞬間。
いつもなら明日もある・・・と思えば楽だった。
だが、最近のは・・・もしかしたら明日は来てくれないかもしれない・・・と思わせる。
我愛羅は慌てて小さくなったの背を追いかけた。
も下忍の端くれ。
その移動スピードはそれなりだ。
考えすぎてしまったせいか、里に入ったときにはを見失ってしまった。
(・・・ちっ!こういうときだけ下忍らしくなりやがって・・・。)
やはり一言多い我愛羅。
今日はを探しているせいか、里のみんなの視線が気にならない。
「・・・でしょ?」
ふいにの声が耳に入ってきた。
(・・・いたっ!)
声を確認して、の許へ向かう。
そして・・・。
「やっぱってかわいいよな。」
「お世辞言っても何もでないってば。」
我愛羅は咄嗟に身を隠した。
(・・・・その男は・・・誰だ?)
我愛羅の脳裏にと一緒にいた男の顔が浮かぶ。
と、同時に、幼い頃我愛羅を毛嫌いしていたグループのリーダーらしい男の子の顔が浮かぶ。
(あの男が・・・・なんでと・・・・。)
胸に痛みが走る。
「お前さ、俺と付き合わないか?」
「ダーメ。」
「なんでだよ。あ、もしかしてお前、我愛羅が好きなのか?」
男の言葉に我愛羅が緊張する。
「・・・そんなワケないでしょ。」
の言葉が胸に突き刺さった。
「だってお前、よく我愛羅のこと探してたりするじゃねーかよ。」
「あれは幼馴染として放っておけないから・・・・。」
の言葉はどんどん我愛羅を暗闇の底へと導いていく。
「だったら・・・・俺と付き合おうぜ。」
「ダメ。ヤダ。あんたと付き合ったら何されるか分からないし。」
「何って・・・こんなことだよぉん。」
「ちょっ!ヤダ!やめてよ!!」
の悲鳴にも近い声に我愛羅はハッと我に返り、二人の前に姿を現した。
は男に押さえつけられてキスされそうだった。
「・・・・・・!」
一瞬で頭に血が上る。
背中の瓢箪から砂が飛び出し、男の体に巻きついた。
「うわぁぁっ!」
男の情けない悲鳴と共には自由になり、我愛羅に気付いた。
「我愛羅!」
はハッとなり、我愛羅に走り寄ったが、砂に捉まり動けなくなった。。
「我愛羅!止めて!」
「・・・殺してやる・・・・。」
我愛羅にの声は届いていない。
「た、助けてくれぇぇぇぇ!!!」
男の悲鳴が里に響く。
何事か・・・と人が集まってくるが、我愛羅が相手と分かると遠くから見ているだけだった。
砂が男に圧力をかけていく。
「我愛羅!お願い!やめて!」
だけが我愛羅に訴えかける。
「うわぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
男との悲鳴が里に響く。
我愛羅は男に何もしないまま解放し、を砂で捕まえたままその場を去った。
我愛羅は自分の部屋に帰っていた。
「なんてことしたのよっ!」
砂に捉まったままのがバタバタと暴れながら我愛羅の背に怒鳴る。
「あいつにはなんも危害など与えていない。」
「そういうことを言ってるんじゃないのよ!」
の言葉に我愛羅は振り返った。
「里の中・・・しかもあんな大勢の前で恐怖心を煽るようなことをして・・・!
そんなことしたら、我愛羅、里にいれなくなっちゃうでしょ!」
「ほぉ・・・・?」
我愛羅が含み笑いをした。
と、同時に、は砂によって壁に押さえつけられた。
「それは・・・幼馴染・・・として心配してくれているのか・・・?」
「・・・!さっきの聞いて・・・。」
が驚いた顔をしている。
「それでもお前は下忍か?」
いつも言っている言葉を言うが、言葉の雰囲気が違った。
冷たく、突き放すような、相手を見下しているような・・・。
「あの場に俺がいなかったら・・・はどうなっていたのやら・・・・。」
砂が動き出し、を押さえつけたままの服の前を引き裂いた。
「・・・・・っ!」
の顔に恐怖が浮かぶ。
「あのままあの男に・・・・キスされてたんだろうな・・・。」
我愛羅はのアゴを捕まえ、自分の唇を押し付けた。
「・・・・・・っ!」
はもがくが、砂に押さえつけられている上に我愛羅にアゴを捕まえられている。
逃げようが無かった。
息苦しくなったは空気を求め、唇を少し開けた。
「・・・んんんっ!!!」
僅かな隙間から突然我愛羅の舌が進入してきた。
それはのそれを求め、口内を舐めまわす。
ついには捉まってしまったの舌は我愛羅の舌に纏わり付かれもう逃げられない。
そして・・・。
我愛羅は破れている服の隙間に手を滑り込ませ・・・・。
「・・・・んんんんんんっ!」
は渾身の力を使って暴れたが、我愛羅の手は怯むことはない。
「・・・・・・・・・・。」
が泣いていることに気付き、我愛羅は体を離した。
「・・・・・我愛羅の・・・・バカっ!死んじゃえ・・・・っ!」
の眼からは止まりそうにない涙が幾筋も伝っている。
「・・・・・・・っ!」
そこで初めて我愛羅は自分のしたことに気付いた。
(俺は・・・・・・っ!)
を押さえつけていた砂がを自由にする。
前の破れた服を両手でかき寄せ、しゃがみ込む。
「・・・・・・・・・。」
「来るなぁぁぁっ!!!」
「・・・・・!」
の悲鳴に我愛羅は一歩下がった。
「・・・・ぅ・・・・・ぅ・・・。」
静かな部屋にの嗚咽だけが聞こえる。
しばらくして少し落ち着いたは離れた場所に居る我愛羅を見上げた。
我愛羅はできるだけから離れようとしているのか反対側の壁の前でに背を向けている。
そして、気付かなかったがのそばに我愛羅の上着が置いてあった。
「・・・・・・これ、借りる・・・。」
「・・・・・あぁ・・・。」
素っ気無い返事を聞いては上着に袖を通した。
には大きかったらしくブカブカだ。
「・・・・すまなかった・・・・。」
我愛羅が呟いた。
「・・・・・・。」
は返事をしない。
「・・・なんて言えばいいか・・・分からないが・・・。」
「・・・・いつからあそこにいたの?」
「・・・・・が高台を去ってしばらくしてから追いかけた。」
「・・・・なんで?」
「・・・・が・・・もう来てくれないんじゃないかって・・・。」
「・・・・・また明日ね・・・って言ったよね?」
「・・・・あぁ。」
「・・・・私のこと、信用してなかったの?」
「そうじゃ・・・・・っ!」
我愛羅は振り返っての眼を見たが、
の眼はとても冷たく軽蔑の色を浮かべていて言葉を失った。
「・・・・・なんでみんなの恐怖心を煽るようなこと、したの?」
「・・・・わからない・・・。」
我愛羅は足元を見つめた。
「が・・・襲われているのを見たら・・・・。
思考は止まっていた。」
「・・・・じゃあ・・・なんで私にあんなことしたの?」
「・・・・・・・!」
「私の納得できる理由を言って。」
「・・・・・・。」
我愛羅は言葉に困った。
自分の中にあるこの感情。
「・・・・に・・・・。」
浮かぶ言葉をそのまま口にする。
「に触れていいのは・・・・俺だけであって欲しかった・・・。
あいつが触れた部分、触れようとした部分を全部俺が消したかった・・・。」
ここまで言って、我愛羅は自嘲的に笑った。
「・・・・もう・・・・高台に来なくていいぞ・・・。」
我愛羅は再びに背を向けた。
「お前は幼馴染として・・・・俺を心配してくれていたと分かった。
だったら・・・・もう来ないでくれ。
俺は・・・・。」
我愛羅は目を閉じる。
「信じてもらえないだろうが・・・俺は・・・・が好きだ・・・。
幼馴染としてではなく・・・。
でも、を俺のモノにできる可能性がないのなら、来ないでくれ。
俺はまた暴走するかもしれない・・・。
第一、あんなことをした俺のことが怖いだろ・・?」
沈黙。
「バカだね、我愛羅って。」
いつものようなの口調。
それはすぐ背後から聞こえた。
そっ・・・・と振り返ると、がすぐ後ろにいた。
「私は我愛羅に触れたいって・・・・前に言ったよね?覚えてる?」
の言葉にコクン・・・と素直に頷いた。
「それは・・・・我愛羅が好き・・・って意味だったんだけどな・・・。」
「・・・・・え?」
「私はずっと前から我愛羅が好きよ。だから毎日高台に通ってたんじゃないの。
少しは気付いてほしいもんだわ。」
「・・・・あいつに幼馴染って・・・・。」
「我愛羅の気持ちが分からないのに下手なこと言って、
噂という形で我愛羅の耳に入れたくなかったのよ。あいつ、口軽いし。」
「・・・・じゃあ・・・。」
半信半疑の我愛羅。
そんな我愛羅には
「我愛羅から触れて?私に・・・・触れて?」
と、微笑んだ。
さっきのこともあり、を怯えさせないようにそっとそっと手を伸ばす。
そして・・・。
の頬に触れた。
は眼を閉じ、その手を愛しそうに頬ずりした。
「・・・・・やっと・・・・・触れてくれた・・・・。」
は目を閉じたまま呟いた。
「俺は・・・・またを待っていていいのか?」
「・・・・・うん。」
「もう怯えることはないのか?」
「・・・・・うん。」
「と一緒に里に戻ってもいいのか?」
「・・・・・当然でしょ?だってここは私達の里なんだから。」
その言葉に我愛羅はを引き寄せた。
「・・・・できれば・・・・これが初めて触れてくれたってことにしたいんだけど?」
我愛羅の腕の中でが笑った。
「・・・・俺も・・・そうしてほしい・・・・。
さっきは本当に悪かった・・・・。すまない・・・・。」
「いいよ・・・。触れてくれたことでチャラにしてあげる。惚れた弱み・・・ね。」
のくすくす笑う声に我愛羅は微笑んだ。
今日も我愛羅は高台に来ていた。
「我愛羅ぁぁぁぁぁ!」
いつものようにが走ってくる。
「・・・ったぁぁぁぁぁっ!」
いつもの展開。
「まったく・・・・本当に下忍か?」
「うっさいわよ・・・。」
砂に守られたは少し怒りながら何かを差し出した。
「・・・・・?」
我愛羅は不思議そうにそれを受け取った。
それは写真だった。
我愛羅とが幼い頃に一緒に撮った写真。
「今までいつもより早く帰ってたのはこれを探してたからなのよ。」
は我愛羅の隣に座った。
「何かがきっかけでその写真を思い出して・・・。
それ、焼き回しして我愛羅にあげようってとっといてたやつなのよ。」
「へぇ・・・・。」
「・・・・他にコメントは?」
が膝の上にアゴを乗せながら我愛羅を見た。
「・・・この頃のように・・・・なりたいな・・・。」
我愛羅は懐かしそうに微笑んだ。
「・・・・そうだね。」
も一緒に微笑み、すっと手を差し出すと、我愛羅がその手に自分の手を重ねた。
写真。
我愛羅との幼い頃の写真。
が我愛羅の頬にキスしている写真。
この頃のように・・・。
砂に守られることなく自由にお互いに触れ合えるような・・・。
そんな関係になりたいね・・・。
600Hitの柚樹様よりリクエストをいただきました。
初めてのリクエストだったので緊張しましたぁ・・・。
リクエスト内容は『我愛羅・嫉妬・シリアス(微エロ)・甘め』ということでした。
ここで私は悩みました!
微エロってどの程度・・・?
と、いうことでちょっとエロ要素を取り入れてみました。
でもこれって・・・・『微』?『微』なの?『中』いっちゃってない?
しかも、我愛羅大暴走?
柚樹様、ごめんなさい・・・(┰_┰)
こんな感じになってしまいました。