あの日 交わした約束。



俺の指定席。



10年立った今も それは変わってねぇんだろぉな?







































指定席





















































「本日の授業はここまで!」

チャイムと同時に授業をしていたイルカが持っていた本を閉じた。

あ〜・・・やっと終わったぜ・・・。

豪快な欠伸が漏れた。

「シカマル!お前は居残り!!」

「んなっ!!」

「当たり前だろ!授業中ずっと寝てたんだから!ついでにキバと!お前達もだ!」

「えぇ!!」

「そりゃねぇよぉ!」

「キバはずっと遊んでたし、もシカマル同様ずっと寝てただろ!」

イルカに呼ばれたキバとがぶぅぅぅ・・・と膨れてる。

ったく・・・居残りなんてめんどくせぇ・・・。
















放課後の教室、残ってるのは俺とだけ。

キバは赤丸の散歩があるから・・・と帰りやがった。

しかも、夕方俺ん家まで取りに来るからやっとけってよ・・・・。。

俺も帰りたかったが、明日また居残りさせられるのもめんどくせぇ・・・。

俺は出された課題をさっさと終わらせて、机の上で寝ようとしてた。

ふいに、ちょっと離れた位置でせっせと課題に取り組んでるの横顔が見えた。

「・・・なぁ。」

「・・・ちょっと待って・・・・今・・・これ・・・解けそうだから・・・。」

「・・・・・・。」

そんなに難しい問題なんかあったかぁ?

1回、自分の課題を見直し、興味での隣に移動する。

「・・・・もう少し・・・なんだけど・・・。」

「・・・・・・。」

・・・・マジかよ・・・。

が戸惑ってる問題は正直3秒で解けるぜ?

「・・・ほらよ。」

の前に俺のプリントを置いた。

「・・・え?」

「そんなモン、バカ正直にやってんなよ。キバみたく写せ。」

「でもそれじゃあ自分の力にならないよ。」

「じゃあ、寝てんなよ。」

「ぐっ・・・・。」

痛いところを突かれたらしく、が黙った。

「・・・・でも、いい。」

そっとプリントを俺に押し返す。

・・・めんどくせぇヤツ。

ため息を付きながら、の前に移動した。

「で、どこが分からねぇんだよ。」

「え?」

「答え、見たくないんだろ?教えてやっから。」

頬杖をつきながらのプリントに視線を落とした。

「・・・ありがと。」

は小さく呟き、こことここ・・・と指を指した。









きれいな指してんな・・・。







なんとなく、の指に見惚れちまった。

「どーしたの?」

「んや・・・別に。ここはだなぁ・・・・。」

無意識に見てたとはいえ、微妙に恥ずかしい。

話題を課題に戻し、俺はできるだけが分かるように教えてやった。










































「シカマルって、教え方上手だよね。」

「そぉか?」

「うん。イルカ先生の授業より分かりやすかった。」

課題を提出したとき、もう外は暗かった。

さすがにこんな時間に女一人で帰すわけにもいかず・・・。

めんどくせぇが、送ってやることにした俺。

「あれぐれぇの問題、簡単だぜ。」

「そぉなの?私には・・・。」

は苦笑してる。

気付けば、とこんなに話したのは初めてだ。

休み時間となれば、俺は決まって寝てる。

は教室の端でいつも本を読んでいた。

「お前が居眠りなんてめずらしいじゃん。」

「だって、気持ちよかったんだもん。」

がニコッと笑って暗くなった空を見上げる。

「風が気持ちよくて、空は晴れてて。

 この上ないお昼寝日和だったでしょ?」

「俺に同意を求めるな。」

「シカマルだって寝てたんでしょ?」

「俺はいつもだ。」

「あ、そっか。」

くすくす笑う

ふいに・・・さっき見たの指が頭をよぎった。

「お前・・さ。」

「ん?」

「なんで忍びになろうと思ったんだ?」

「唐突な質問だね。んー・・・・シカマルは?」

「俺は親が忍びだからって感じか?って、俺に聞き返すんじゃねぇよ。」

俺の返事にが今度は豪快に笑ってる。

「里の南にある丘って行ったこと、ある?」

は?

なんでいきなり里の丘の話になんだよ。

つーか、この俺がそんなめんどくせぇ場所まで行くはずがねぇ。

「その丘に、大きな古い樹があるの。」

俺の考えが分かったのか、またくすくす笑いながらが話し始めた。

「その樹は里が設立されてからずっと・・・里を見守ってきたんだって。

 私、嫌なことがあったりすると、よくその樹に登るんだよね。」

「へぇ・・・お前が木登り・・・ねぇ。」

「その樹の天辺から見渡す里の景色・・・すごくきれいなんだよ。」

「んで、その里を守りたいってわけか?」

在り来たりな理由・・・だな。

でも、は首を横に振った。

「私が守りたいのはその樹なんだなぁ♪」

「樹?」

「私の大切な場所だから。

 里はイヤでも他の忍びが守るけど、そんなただの樹1本は誰も守ってくれない。

 だから、私が守ってあげたいの。」

へぇ・・・。

俺はこんな性格だから、何かに固執することなんかなかったが・・・。

はその樹のために忍びになりてぇのか・・・。

でも・・・。

「忍びになって、上忍とかになっちまったら・・・。」

そのきれいな指が・・・手が・・・・血にまみれる。

それがすっげぇもったいない気がした。

「うん。でも、それはみんな同じだから。

 自分が守りたいモノのために手が汚れるのは仕方ないよ。」

「・・・すげぇな、お前。」

ただなんとなく忍びの道を選んだ俺。

ちゃんと守りたいモノ、自分の進むべきビジョンを持っている

なんか・・・すっげぇ距離を感じた。

「あ、シカマルも行ってみる?」

「へ?」

「私のお気に入りの樹!」

「お、おい!」

俺の返事を聞く前に、は俺の手を掴んで走り始めた。





























「ここよ。」

は誇らしげに大きな樹を見上げた。

「でっけぇな・・・。」

つられて俺も見上げる。

「よし。行くぞ!」

「行くぞって・・・おい!」

「シカマルもついてきて。」

いきなり枝に手をかけて登り始める

その後から仕方なく上る俺。

まだチャクラをちゃんと練ることのできない俺たちはひたすら自分の力だけで上る。

なんでこんなめんどくせぇことを・・・。

後悔し始めたときには、時遅し。

けっこうな高さまできていた。

「もうちょっとだからぁ。」

上から元気な掛け声をしてくるは、さっきの課題を前に悪戦苦闘していたと違っていた。

「こっち。」

「っこらせっと・・・。」

枝に座っていたは自分の隣にスペースを空けて、俺に座らせた。

「・・・すっげぇ・・・・。」

俺が頂上で見たのは。

満点の夜空と同化している里の灯。

上にも、下にも小さな星があった。

こんなこと言う性質じゃねぇが・・・。

まるで、俺たちは星空の真ん中に投げ出された感じがした。

「ね?きれいでしょ?」

「あぁ・・・すげぇよ・・・・。」

への返事も疎かに、俺は景色に見入っちまった。









































「・・・だから・・・この樹を守りたいの。」

「・・・・・。」

「私の一番のお気に入りの場所。私だけが知ってる最高の場所。」

「・・・・・。」

「これを守りたいから、忍びになりたいの。」



















隣を見れば・・・。

景色に見惚れているの顔がすぐ近くにあった。

いつも教室で俯いて本を読んでいるとは別人のようだ。















トクン・・・・。













「・・・・・?」

自分の胸が不自然な鼓動を始めて、ついつい手で胸を触る。

・・・・なんか・・・・ドキドキしてるぞ・・・・?

「どうしたの?」

俺の行動がおかしかったのか、がきょとん・・・としてる。

「いや・・・べつに。」

「おかしなシカマルね。」

くすくす笑う

余計に鼓動が激しくなる。

「・・つーか、俺に教えちまっていいのか?」

「なんで?」

「だって、お気に入りの場所だったんだろ?」

「あ、そーか。」

「もうお前だけが知ってる・・・って言えなくなったぞ。」

「んー・・・・じゃあ。」

ちょっと考えて、はパッと顔を上げる。

「私とシカマルだけが知ってる場所。

 だから、シカマルもこの場所を守ってね♪」

「はぁ?!」

「いいじゃない。なんとなくなっちゃう忍びより、

 なんかしらの理由があってなる忍びのほうがいいでしょ?はい、決定。」

「・・・・お前ってそーゆー性格だったんだな。すっかり騙されたぜ。」

「うるさいよー。」

「バッ・・・!やめろって!落ちるだろ!」

が俺の肩を押して、俺は落ちそうになる。

「約束してくれるなら、やめてあげるよぉ?」

「するから!マジやめてくれ!!」

体が傾いたとき、が手を差し伸べてくれて俺は落ちずに済んだ。

「んじゃ、今日からここはシカマルの指定席ね。約束よ?」

ちょこん・・・と小指を出す

「しかたねぇな・・・。」

小さな小指に、自分の小指をそっと絡ませた。



































「ただいまぁー。」

「遅かったじゃない。シカマ・・・・。」

玄関まで出迎えてくれたかぁちゃんが、俺の顔を見て止まった。

「・・・・どーしたの?」

「んぁ?」

「顔・・・・・真っ赤よ・・・。」

「・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!」

俺は急いで自分の部屋に走り、鏡を覗き込んだ。

「マジかよ・・・俺・・・・。」

かぁちゃんが言うとおり、顔が真っ赤だ。

・・・・なんで・・・だ?

夜風にあたり、顔の火照りを取ろうと窓を開けた。

見上げれば、満天の星空。

さっき見てきた光景が蘇る。















「約束ね?」













いきなり、の顔が浮かんだ。

「・・・・!!!!!!!!!!!!!」

同時に、顔が余計に赤くなり、熱をもつ。

ど、どうしちまったんだよ・・・・俺!!






















































































昨日の赤面事件でバダハタしてた俺は、当然の如く寝不足だ。

アカデミーについた途端、寝始める。



「おはよう。」



ふいに頭上から降ってきた声にガバッと顔を上げれば・・・。

がニコッと笑っていた。

「・・・・っっっっ!!」

突然の挨拶に、俺は返事ができなかった。

でも、俺が返事をしないのをそれほど気にしていない様子で自分の席に向かって歩き始める。

「・・・っっっっおすっ・・・!!」

自分でも思うが、なんつータイミングで返事してんだか・・・。

は振り返り、きょとん・・・・としてる。

でも・・・。

「おはよ。」

また微笑んで挨拶をしてくれた。

「シカマルー。昨日なんで帰り遅かったんだぁ?」

キバが俺の隣にきて頬杖をつく。

「んあ?」

「昨日の課題、取りに行ったらお前、帰ってきてねぇし。今日提出なのに。」

「あ?昨日?昨日・・・は・・・・。」

をチラッと見たら、は人差し指を口の前で立ててた。











内緒ね?









そう言われている気がした。

「あー・・・昨日は帰りに寄り道した川原で寝ちまってよ・・・。」

「えぇー・・・。俺にどうしろってんだよぉぉぉぉ!!!」

「・・・自分でやらないと、自分の力にならないぞ。」

「・・・・シカマル?」

「・・・・なんだよ。」

「・・・・・お前、変だぞ?」

「・・・うっせーよ・・・・。」

キバと俺のやり取りを、遠くで見ていたはおかしそうにくすくす笑っていた。





































あの日 交わした約束。



俺の指定席。



10年立った今も それは変わってねぇんだろぉな?



でもよ。



俺としては。



あの樹の上じゃなくて。



お前の隣にいたいんだけどよ。



お前の隣 俺の指定席にしていいか?



今から確認しに行くからよ。



ちゃんと 待ってろよ。



あの樹の上で。





















7777Hitのマユ様のリクエスト。
内容は「シカマルのアカデミー時代の片思い」です。
んー・・・なんか、シカマルの片思いの始まりっぽくなってしまいました。
マユ様・・・ごめんなさい。
駄文ですいません。
こんな私ですが・・・許してください・・・・。







BGMは遠来未来様よりお借りしました。