カカシは暗部。


私も暗部。


火影様の命により、影より任務を遂行させる特殊部隊。


そんな二人がこんな関係だなんて・・・誰も知らない。


私とカカシと・・・・・森だけの秘密。

















梅雨

















雨の音が聞こえる。

シトシト、シトシト、シトシト・・・。

あー・・・そういえば、テレビで梅雨入りだって言ってたっけ・・・。

朝から気分が滅入ってくる・・・。

ベッドから体を起こした私は・・・。

静かに街を濡らす雨を・・・。

じっと睨んだ。















忘れかけてた思い出。



この時期になると思い出す。



・・・・ううん。



忘れようとしていた自分。



この時期になるとそれを自覚する。













だから











嫌い。



























「雨が降ってる・・・。」

「あー・・・梅雨入りしたってテレビで言ってたねぇ・・・。」

「そっか・・・。」

「雨、嫌い?」

窓際で裸のまま窓の外を見ている私にカカシが自分のシャツをかけてくれた。

「ううん。大好き。」

「なんで?」

笑顔で応えた私に連れられて微笑むカカシは下の服だけを着て、テーブルの上にあるタバコにくわえた。

「森が歌うの。」

「森が?」

「そう、森が。」

「どうやって?」

椅子に座ったカカシが手招きしてる。

私はそのままカカシの膝の上に座って抱っこしてもらう。

「葉に雨が当たって・・・ザァァ・・・って。

 森の中でそれを聞くと、歌ってるみたいに聞こえるの。」

「へぇ。」

「今から行ってみる?」

「うん、聞いてみたい。」

カカシが私を解放して、出かける準備をした。













私とカカシは正式には付き合っていない。

なのに、抱き合っていて・・・。

それで十分だった。

いつ離れていくか分からないカカシに想いを伝えたら二人の関係は重くなる。

このままでいい。

もし、カカシが私から離れたとしても付き合っていたわけじゃないから。

体の関係はないとしても、友達として一緒にいれる。

だから、私は自分の気持ちは絶対に口にしない。














森が歌う。

私たちのはるか頭上で。

枝に座るカカシに抱きしめられ、私は目を閉じる。

「すごいね。」

「うん・・・・。」

「俺、何度も雨の日の任務とかってあったけど・・・。

 こうしてじっくり聞いたのは初めてかもしれない。」

「だって・・・・そのときは任務でいっぱいでしょ?」

「そっか・・・。」

「私も任務のときは気にしてられないよ。」

「そっか。」

カカシが私の短い髪にキスをした。




















カカシは暗部。

私も暗部。

火影様の命により、影より任務を遂行させる特殊部隊。

そんな二人がこんな関係だなんて・・・誰も知らない。

私とカカシと・・・・・森だけの秘密。













「体が冷たい。寒い?」

「んー・・・ちょっと。だけど、カカシがいるから大丈夫。」

「そういうわけにはいかないでしょ。帰ろう。風邪引く。」

カカシが立ち上がって私を立たす。

「全身びしょ濡れ。」

お互いの格好を見て私が噴出す。

「帰ったらお風呂に入ろう。」

「洗ってくれるの?」

「君が望めば。」

カカシの笑顔。









胸が痛い。









カカシは私の名前を1度も呼んだことはない。

いつも『君』と呼ぶ。

私の名前を知らないだけかもしれない。

暗部として任務をこなすときはお互いの仮面にちなんだ源氏名で呼ばれる。

カカシは『狐』。

カカシの仮面は狐をモチーフにしてるから。

私は『猫』。

私の仮面は猫をモチーフにしてるから。

決して本名で呼んだりはしない。













いつからこういう関係になったのか覚えていない。

暗部に入ったことで、心機一転。

私は今まで伸ばして腰まであった髪をばっさり切った。

これで仮面を被れば誰も女だとは気付かない。

幸いにも、とても女らしい体つきはしてなかったし。

それに、私の声はハスキーボイスで。

仮面をしてなくてもよく思春期の男の子と間違われてた。

でも、唯一。

カカシだけにはバレてた。

「少しは女の子らしくしてみれば?」

同じ任務をこなしたとき、そう言われた。

最初は何をいってるのか分からなかった。

みんな、私のこと男だと思ってると思ってたから。















「髪・・・・。」

「え?」

頭を洗っていた私は浴槽につかってるカカシを見る。

「髪、伸びたね。」

「あぁ・・・・そろそろ切らなきゃ。」

「なんで切るの?伸ばせばいいのに。」

「だって、邪魔じゃん。」

「そぉ?暗部でも髪の長い女はいくらでもいるのに。」

「彼女達は彼女達。私は私。」

「伸ばせば少しは女の子らしく見えるのに・・・。」

「いいの!私は短いほうがいいの!」

「はいはい・・・・。」

怒鳴った私にカカシが諦めたように言った。


















髪を切った理由。

邪魔だから。

それも、ある。

他には・・・・。

『所詮、女だから』とか、

『女には無理』とか・・・・。

そういう差別を受けるのがイヤだった。

正直、私は優秀な忍びじゃない。

ミスはいつもしてた。

だから、人一倍努力した。

それで晴れて暗部となった日。

『所詮、女には無理だよ。』

と、遠くで男が呟いたのが聞こえた。

そいつは暗部になるための試験に落ちたけど。







なぜか、悔しかった。







受かったのは自分なのに・・・・。









だから、髪を切った。

私が暗部であり続ける限り、伸ばすことはない。

















「明後日、出発だから。」

「・・・・あ、そっか。」

カカシの突然の発言に私は間を開けて頷いた。

「気をつけてね。」

「分かってる。」

「・・・・・気をつけて・・・ね。」

「・・・・うん。」

カカシに招かれるまま、私はカカシに体を預けた。

「だから・・・・明日はたっぷり朝寝坊しよう。」

「・・・・・うん。」

ベッドに横になる私とカカシ。











沢山のキスをして。

思いの限り、相手を求めて。

言葉にできない思いを、体で表す。




          


久々(?)のカカシの長編です。
また支離滅裂にならなきゃいいことを祈って・・・。

今回はまだまだ触りの部分。
次回からお名前変換していきまぁす。




BGMはDissonance様よりお借りしました。