私は泣きそうだった。



ショックなのか。



嫉妬なのか。



不安なのか。



全てがごちゃ混ぜになって・・・・。



私を襲った。














梅雨




































カカシが任務に出てから3日がすぎた。

私にはまだ任務はまわってこない。

だから、この3日、ただ当てもなくフラフラしてた。























暗部は影の存在。

任務と言えば暗殺がもっぱらで・・・。

常に死と隣合わせ。

自分が生きているのか。

それか、感情のない人形のような・・・。

そんな感覚に狂いそうな日々。















こんなにゆっくりできる時間は私を『人間』なんだと思い出させてくれる。



































「あれ??」

ぼー・・・と歩いていたら、後ろから呼ばれた。

「あ・・・・?」

私を呼んだのは昔近所だった幼馴染のだった。

「ひっさしぶりぃ!!」

うれしそうに歩いてくる幼馴染を前に、私も自然と顔が笑顔になる。

「元気だった?」

「うん。元気だよぉ。、髪短くて最初わからなかったよ。」

「ちょっと色々あってね。」

の長いきれいな髪を見て、私は自分の頭を触った。

「かわいいよぉ。あ、今ヒマ?」

「あ、うん。やることなくてフラフラしてたから。」

「じゃさ、ちょっとお茶でもしよぉよ!」

「いいよ。」

懐かしさとうれしさで快く返事をした。






















































は今、何してるの?」

「私?今ちゃんと社会人してるよぉ。雑貨屋の店員。」

自分の前にあるコーヒー(しかもブラック)を一口飲んでからが微笑む。

「昔っからってかわいい小物、好きだったもんね。」

「そういうは?」

「んー・・・忍び。」

「アカデミー卒業まで近所だったんだからそれは知ってるってば。中忍?上忍?」

「んー・・・・特別上忍?」

とても暗部だとは言えず、咄嗟にウソが出る。

「そっかぁ。も頑張ってるんだね。」

「まぁね。」

時間の流れを感じて、自然と昔を思い出す。

昔はひたすら忍びになりたくて修行してた。

なんで忍びになりたかったのか、今となっては疑問だけど。

小さい頃の夢なんて・・・・そんなもんでしょ。















今の夢は・・・・。









1日でも長くカカシの隣にいれること。



























「で、今、彼氏とかは?」

が体を前のめりにして聞いてきた。

「突然、何さ。」

私は体を引く。

「んー・・・、きれいになったからさ。」

「は?」

「誰か好きな人でもいるのかなぁ・・・って。

 好きな人ができると、自然ときれいになるモンよ、女って。」

「そっかなぁ・・・・。」

だとしたら、カカシに感謝・・・かな♪

「彼氏、でしょ?」

「いやぁ・・・・彼氏ではないんだなぁ・・・。」

私は苦笑するしかなかった。

「彼氏・・・ではないんだけど・・・・ね。」

「もしかして・・・・ヤッちゃった?」

「たはは・・・。」

「うっそ・・・・。」

私の笑いにが驚いている。

「その人も忍びだから・・・・。

 お互いの気持ちを・・・っつーか、

 私の気持ちを伝えればきっと・・・・重荷になる。

 それでも一緒にいれればって・・・・。」

「それって・・・・都合のいい女・・・・じゃない?」

の言葉が胸に刺さる。

決して間違ってはいない言葉。

だから・・・・痛い。

「うん・・・多分、そう。

 それでも・・・・いいんだ。

 私だって忍びの端くれだし・・・・。

 何を言われて重荷になるとか・・・分かると思う。

 だからこそ、都合のいいときに来てくれる「都合のいい女」でいたいんだ。」

目を閉じる。

浮かぶのは・・・・カカシ。

普段は顔の大半を隠しているのに・・・。

私を抱くときは・・・・素顔を晒してくれる。

それだけでも、カカシの秘密を知っているみたいでうれしい。

それ以上、求めては・・・・いけない。

「そ、そういうは?」

これ以上追求されないようにに話を振る。

「んー・・・・。」

の顔が少し・・・・曇った。

「彼氏・・・は、いない。」

「へぇ・・・。めずらしい・・・・。」

素直に驚いた。

だって、だよ?

女の私から見てもは魅力的なんだよ?

そりゃ好みの問題はあるだろうけど・・・さ。

男がをほっとくはずがない。

「忘れられない人・・・・がいるんだ。」

「あぁ・・・だから次の恋愛に行けないんだ・・・?」

「うん・・・・。」

頷いたがきれいで・・・。

どれくらいその男のことが好きなのか・・・忘れられないのか・・・分かった。

「今・・・その人がどこで何をしているのか・・・分からないけど・・・。

 元気で・・・・幸せで・・・・いてほしいんだ・・・・。」

「・・・・・うん・・・・なんとなく・・・分かる。」









会話が途切れた。









私もカカシには・・・・幸せになってほしい。

例え、私のモノにならなくても・・・。

カカシが幸せなら・・・・それでいい。

















きっともそうなんだろうな・・・。

















































喫茶店に入って随分時間が立ち、さすがに居づらくなって来た私たち。

夕暮れの街中をフラフラ歩く。

「あのときのこと、覚えてる?」

「えー?忘れちゃったよぉ。」

「んもぉ、って忘れっぽいなぁ。」

「いや、何年たってると思うのよ。」

昔の話に華が咲いていた。

懐かしくて、懐かしくて。

懐かしさのあまり。



















気付かなかった。




















私のすぐそばに来ていたアイツの気配に・・・。









































「あれ・・・・?」

私の耳に突然聞こえた声に振り返った。

「カカ・・・・。」

「めっずらしいね、街中で会うの。」

飄々としているカカシの姿を見て心臓が止まりそうだった。

いつもは私の部屋で会うことが多いのに。

「任務は?」

「さっき終わってこれから報告。」

「お疲れサン。」

「おう。」

つい、隣にいるの存在を忘れて私はカカシの肩を叩いた。

カカシも笑って私の頭を叩く。

いつもの挨拶。



























「・・・・・カカシ・・・・?」





























の震える声に、ようやくの存在を思い出して・・・。

振り返ったときに・・・・私は気付いてしまった。









「え・・・・・・・・・?」

「・・・・久しぶり・・・。」

「・・・・・・あぁ・・・。」

「元気にしてた?」

「まぁね。・・・・は?」

「うん・・・・まぁまぁ・・・・かな。」

「そっか・・・・。」
























いつものカカシじゃない。











さっきまでのじゃない。


















取り残される。























「同じ里に住んでるのに・・・初めてだね。」

「・・・うん・・・。」

「私、避けられてたのかな・・・。」

「ちがっ・・・・!!」

「いいよ、うん。そんなに慌てなくても。」























ねぇ・・・・私に分かる話・・・してよ。

















ねぇ・・・・・私に気付かせないでよ・・・・。



































「じゃ・・・そろそろ・・・・行くね。」

「あ、うん・・・・。」

カカシはに微笑んで・・・・。

「じゃ、またね。」

私には・・・・手を上げた。
































カカシの姿が見えなくなって・・・・。

「気付いた?」

が微笑んだ。

「・・・・・・。」

「私の忘れられない人。」

カカシのいなくなった方向を見つめる

「・・・・いつ・・・・?」

「・・・・2年ぐらい・・・前に・・・・別れた。」

「どれくらい?」

「・・・3年・・・かな。」

「原因・・・は?」

「・・・・・・・・・・。」

がふっ・・・・と微笑む。

「あ、ごめん。それは聞くことじゃなかったね・・・・。」

私は慌てて謝った。

だって・・・・。

微笑んでたくせに・・・・泣きそうだったんだもん。

「あの・・・さ・・・・・。」

「ん?」

「今でも・・・・・?」

「・・・・・今でも・・・・。」






























































雑踏の中に消えていくの背を見送りながら・・・。

私の頭は計算を始める。

カカシが女にだらしなくなったのは・・・2年前。

と別れたのも・・・・2年前。

あのカカシが3年も付き合った女が・・・・

私は・・・・都合のいい女。























二人の間に何があったのかは知らないけど・・・。

















なぜか・・・・。
































私は泣きそうだった。










ショックなのか。








嫉妬なのか。











不安なのか。








全てがごちゃ混ぜになって・・・・。










私を襲った。













               

「梅雨」の第2話です。
カカシの元カノ、登場です。
カカシの元カノってどれくらいいるのかなぁ・・・。







BGMはDissonance様よりお借りしました。